不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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弱肉強食の島編

別れの時……

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「おおっ、本当に戻ったぞ!?」
「ううっ……も、もう目を開けてもいいのか?」
「姉者、もう大丈夫」
「くっ……ちょっと頭がくらっときました」
「こ、これはいったい!?」


レナは空間魔法を利用して荒野の砦に存在するハルナ達を移動させる事に成功し、全員が移動したのを確認すると空間魔法を一旦閉じる。レナの空間魔法はどれだけ離れた場所であろうと繋げる事が出来るため、仮にこの世界の裏側まで移動したとしても一瞬で戻る事が出来る。

但し、空間魔法のデメリットはレナが常に片方の黒渦を維持しなければならず、常に魔力を消耗し続けるため、長時間発動しているとレナに大きな負担が掛かった。一瞬でも意識を失うと空間魔法が解除されるため、眠る事も許されない。しかし、昔と比べてレナも魔力容量が増えているため、半日程度ならば維持する事は出来た。


「よし、これで皆もここへ避難できたね」
「レナよ、いったい何が起きたのだ?」
「どうして竜人族をこの島へ?」
「うむ、そこから先は儂が説明しよう」


竜気性はレナの代わりに二人に説明を行い、もう既に黒龍を打ち倒した事、そして竜人族は荒野から住処を変える事を告げた。まさか島の脅威である黒龍が既に討たれたと知って族長も長も驚くが、すぐに安堵の表情を浮かべる。


「そうか、黒龍は死んだか……それは良かった」
「少なくとも奴の脅威に怯えながら暮らす事は二度となくなったのか……」
「うむ、ここにいる者達のお陰だ。本当にありがとう、助かったぞ。お主等こそ島の英雄だ」
「どうも……」
「へへっ……」
「恐縮です」


黒龍の討伐に活躍したレナ達に竜騎将は頭を下げ、牛人族の長もダークエルフの族長も頭を下げた。これで島は平和を取り戻したといっても過言ではないが、問題なのはここから先の話だった。


「それで、俺達はそろそろ島から脱出したいんだけど……」
「脱出!?旦那様、島の外へ出るつもりか!?」
「それは駄目、まだ結婚式も子作りも終わってないのに」
「こ、こづっ……何を言い出すのですか、貴女達は!?」


アンジュとサーシャはレナの言葉を聞いて反対するが、慌ててレミアがレナを庇うように前に出る。その様子を見て二人は不機嫌そうにレミアに問い質す。


「レミア、邪魔をするな!!私達は旦那様の子供を産む、そして最強の戦士に育てるんだ!!」
「私も旦那様との子供が欲しい」
「だ、駄目です!!レナ王子はもう結婚されているんです!!既に二人と結婚されていますが、これ以上は駄目です!!」
「別にいいじゃん。一緒に島の外へ連れて行こうぜ、アンジュもサーシャもそれでいいだろ?」


ハルナの言葉を聞いてアンジュとサーシャはお互いの顔を見つめ合い、難しい表情を浮かべる。レナにあれほど好意を向けていた彼女達だが、島から離れるという言葉には流石に悩むらしい。


「いや、それは……無理だ。旦那様と離れたくはないけど、私達はダークエルフの戦士長だ」
「戦士長がいなくなれば他の者が困る。だから私達は一緒にはいけない」
「い、意外と責任感が強いんですね」
「そっか、それじゃあ二人とはお別れか……」
「むうっ……旦那様、どうしても島の外に出て行きたいの?」
「ここに残れば一生不自由なく暮らせるように私達が尽くすぞ?」


どうしてもレナを島の外へ行かせたくはないアンジュとサーシャは彼の両腕に抱きつき、アンジュは胸で腕を挟み込み、サーシャは頬ずりを行う。そんな二人に対してレナは頬を赤く染めながら困った表情を浮かべる。

しかし、大陸に戻らなければ七魔将が何をしでかすか分からず、どうしてもレナには戻らなければならなかった。他の仲間の事も心配のため、はっきりとレナは島を出ていく事を告げた。


「駄目だ、俺達は行くよ。仲間や家族が待ってるし、それに倒さないといけない奴等もいる」
「倒さないといけない奴等?」
「そいつらを放置すればきっと俺の大切な人たちが危険に晒される。だから戻るんだよ」
「大切な人たち……」
「アンジュ、サーシャ、どうやら婿殿の決意は固いようじゃ。ここは諦めるしかあるまい」


ここで族長が二人を諭す様に語り掛けると、彼女達はため息を吐き出し、渋々とレナから離れる。そんな二人を見てレナは族長に感謝しようとしたが、ここで彼女はレナの腕を掴む。


「じゃが、その前に……ほれ」
「えっ」
「あっ」
「な、何をっ!?」


族長は自然な動作でレナの腕を掴み、腕輪を嵌め込む。それは少し前までレナが装着していた「魔封じの腕輪」とは紋様が異なり、こちらの方は腕輪にハートの形のような紋様が刻まれていた。


「ちょ、何するんですか!?」
「ひょひょひょっ……儂等が黙って有能な婿候補を返すと思ったか?その腕輪は結婚を誓い合った者同士が身に着ける特製の腕輪じゃ」
「結婚!?」
「その腕輪は定期的に同じ腕輪を擦り合わせなければ徐々に腕輪が締め付け、最終的には一か月も放置すれば腕の骨を砕き、切断に至る代物じゃ。じゃから、定期的にここに帰らねばならんぞ」
「ええっ!?」
「おおっ!!流石は族長!!」
「これで旦那様もここへ戻る理由が出来た」


とんでもない腕輪を最後の最後に持ち込んできた族長にレナ達は驚愕し、一方でアンジュとサーシャは嬉しそうな声を上げた――
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