不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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真・最終章 七魔将編

最後の悪あがき

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『ふははっ!!軽い軽い!!』
「調子に乗るな!!まだ残っているぞ!!」


ゴウライによって黒塊の一つは打ち返されたが、最後の1つは城壁に衝突する寸前だった。黒塊が物体に触れた瞬間に内部に蓄積されている魔力は一気に拡散し、そうなった場合は闇魔導士のダイン以外の人間は助からない。

城壁に衝突寸前の黒塊に対して全員が動こうとした瞬間、電流が迸るような音が鳴り響く。その音の正体はレナの退魔刀であり、彼は物質変換の能力を発動させて退魔刀を「聖剣カラドボルグ」へと変化させる。


(間に合えっ!!)


エクスカリバーで切り付けただけでは完全には黒塊は消滅させる事はできず、エクスカリバーよりも攻撃力が高いカラドボルグを作り出したレナは黒塊に向けて聖剣を繰り出す。刃から金色に光り輝く雷が放たれ、最後の黒塊を吹き飛ばす。


「消えろっ!!」
『うおおおっ!?』
「危ない!?」
「これは……まさか、聖剣カラドボルグ!?」


レナの繰り出した雷撃に他の者は巻き込まれないように退くと、ツバサ達はレナがカラドボルグを繰り出すのを初めて見て驚く。彼等は錬金術師の能力で聖剣まで再現できる事は知らず、改めて彼の凄さを思い知る。


「はあっ、はあっ……さ、流石にきついな」
「レナ、大丈夫か!?」
「しっかりしなさい!!まだ戦闘は終わっていないわ!!」


ダインは慌ててレナの元に駆けつけて肩を貸すと、シズネが注意しながら黒雲に視線を向ける。先ほどの攻撃で黒雲の規模が僅かに縮小化したかに思えるが、それでも冒険都市全域を覆い込むほどの大きさは存在した。それどころか自分の攻撃を悉く無効化するレナ達に対して黒雲を操るブラクは我慢の限界を迎えていた。


『オノレエエエエッ……!!』
「おい……あの野郎、どんどんおかしくなってないか?」
「当然だよ、こいつはもうただの怨念だ……本当だったらもうこの世から消えてもおかしくないのに」
『ゴキブリ並の生命力か……いや、死んではいるのか』


もう人語を話す事も限界らしく、黒雲から響くブラクの声もおかしくなりはじめていた。既にブラクの本体は死亡し、残された魂の破片も消えかけていた。だが、黒雲が消えない限りはブラクを完全に倒す事はできない。

最後の悪あがきのつもりか、ブラクは闇属性の魔力を放出する攻撃だけではレナ達を倒せないと判断する。そんな彼が最後に取った行動は黒雲を凝縮させ、まるでダインのの如く人型の姿へと変わり果てた。


『オアアアアアッ!!』
「な、何だありゃっ!?」
「雲が集まって……巨人になった!?」
『おおっ!!こいつはでかいな、50メートルはあるぞ!?』


黒雲を凝縮させたブラクはゴーレムキングをも上回る体躯の巨人へと変わり果て、その姿を目撃したレナ達は唖然とした。これまでの攻撃も防ぐので精いっぱいだったが、最後の最後で巨人と化して冒険都市に近付くブラクにレナ達は衝撃を受ける。


『こいつ、本当にしつこいな!!そこら辺の悪霊の方がまだマシだ!!』
『頑張ってください、後もう少しですからね』
『本当に時間を稼ぐだけでいいの?』
『ええ、あと数分です』


アイリスと交信を行ったレナは彼女の助言を聞いて頭を悩ませ、時間を稼げと言われても城壁の上に居る人間の中でまともに戦えるのはゴウライぐらいである。他の者たちは七魔将との戦闘で疲れ切っており、城壁を守護していたエリナ達も疲労のせいで碌に動けない。

唯一に戦えるのはゴウライぐらいだが、流石に彼一人では漆黒の巨人とかしたブラクを止めるのは難しい。如何にゴウライが最強の剣士だとしても相手は膨大な闇属性の魔力を吸い上げた悪霊であり、そもそもゴウライの場合だと有効打を与えられない。


「レナ、どうするんだよ!?多分、あいつには僕の影魔法は通用しない!!」
「泣き言を言っている場合じゃないと言ってるでしょう!!やれるだけやるのよ!!」
『ふはははっ!!巨人狩りは久しぶりだな!!あ、巨人といっても吾輩が言っているのは巨人族の事ではなく、大型の魔人族の事で……』
『無駄話している場合か!!』


ゴウライだけは巨人とかしたブラクに大して緊張感を抱かず、今にも城壁を降りてブラクに斬りかかりそうな雰囲気だった。しかし、彼が動く前にブラクに近付く人影が存在し、それは先に黒塊を吹き飛ばして城壁から落ちたハルナだった。


「おりゃあああっ!!」
「ハルナ!?」
「貫けぇえええっ!!」
『ウオッ!?』


雄叫びを上げながらハルナは巨人ブラクの腹部に目掛けて飛び掛かり、彼女は飛び蹴りの体勢で雷属性の魔力を纏いながら突っ込む。そして彼女の蹴りがブラクの身体に触れる寸前、巨人の腹部にが開いて彼女はそのまま身体を通り抜けていく。


「はあっ!?」
『バカガッ……!!』
「ハルナ!?避けろっ!!」


自分の攻撃が空振りした事にハルナは唖然とするが、そのまま彼女が地上に着地する寸前、ブラクは足を振り上げてハルナに目掛けて振り下ろす。その光景を見たレナはハルナに声をかけるが、彼女はブラクに踏み潰されてしまう。
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