不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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真・最終章 七魔将編

罠であろうと

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『ともかく、あいつらの目的は俺達を海底王国まで招いて罠に嵌めるつもりか』
『この際だから付いて行きましょう。ホネミンさんにもそう伝えてください』
『分かった』


アイリスとの交信を打ち切るとレナはコトミンを連れ去った魚人達が、どうやってこんなにも早く海に移動できたのかを聞くのを忘れていた事を思い出す。しかし、今はホネミンに魚人の追跡を行わせるために質問は後回しにした。


「ホネミン、このまま奴等を追って」
「追うんですね?それでいいんですね?」
「大丈夫、いざという時は俺が皆を脱出させるから」
「分かりました。では行きますよ」


レナの指示を聞いてホネミンは彼がアイリスから指示を受けたと知り、二人を信じて魚人の追跡を再開する。魚人は一定の距離を保ちながら海へ向けて降下し、海底に移動するごとに周囲の光景が暗くなっていく。


「な、何だか暗くなってきたような……」
「海底までは光が届かないからですよ。ですが、大丈夫です。こういう時のためにレーダーがありますので」
「何なんだよそれ……」


潜水船に搭載されているレーダーを頼りに魚人の反応は見逃さず、姿が見えなくなっても追跡を行う。この時にレナは暗視の技能を発動させて周囲を警戒していると、やがて追跡していた魚人二体に動きがあった。

海底に向けて移動していた魚人達が唐突に立ち止まると、一体が先に移動して急速に離れていく。レーダーで魚人の動きを確認していたホネミンはレナに声をかける。


「一体が急速に離れていきます!!どうしますか!?」
「多分、先回りして罠でも作動しようとしているのかもしれない……よし、今が好機だ。もう一体を捕まえよう」
「えっ!?捕まえるって……ここは海の中だぞ!?」
「さっき、叔母様から貰った物を忘れたの?」
「それは……」


レナは潜水船に乗り込んだ時にマリアから受け取った水晶札を取り出す。こちらの水晶札にはマリアが聖痕の力を利用してを封じ込めており、これを使用すれば短時間だがレナ達も海の中で行動する事ができた。

どうしてマリアが水晶に魔法の力を込めるのかと言うと、この世界においては水晶は魔法の力を宿す性質を持ち合わせ、実際に魚人王が所持している宝玉も魔力を宿す前はただの水晶玉にしか過ぎない。水晶の性質を生かしてマリアは魔法を封じ込めてきたため、彼女程の魔術師ならば精霊を水晶札に封じるのは簡単な事だった。

規模は違うがマリアの水晶札は宝玉と同じく精霊を宿しており、彼女の場合は風の精霊を宿す事で使用者を守る術を用意していた。レナは水晶札を発動させた瞬間、彼の身体が緑色の魔力に覆われる。


「わっ……」
「うわっ!?レナが急に光った!?」
「これは……まさか、風の精霊がレナさんの身体に纏っているんですか!?でも我々はともかく、人間のダインさんまで精霊が見えるなんて……」


水晶札を使用した途端にレナは緑色の魔力に覆われ、それを見たリンダが驚きを隠せない。通常であれば風の精霊は目で捉える事はできず、森人族ならば風の精霊を感じ取る事はできるが普通の人間には可視化する事はできない。

しかし、人間であるはずのダインもジャンヌもハンゾウもレナの身体に纏った緑色の魔力を視認できた。これは通常ではあり得ない程の魔力が彼の身体に集まっている事を意味しており、現在のレナは風の精霊を纏っている状態である。


「これ、魔鎧術と似てるね」
「原理は同じよ。風の精霊が貴方を守っているの……その状態なら海の中でも自分の意思で動く事はできるはずよ」
「それは凄いですね!!流石はマリア様!!」
「でも、それほど長くは持たないわ。何もしなければ10分、戦闘を行う場合は5分が限界だと思いなさい」
「5分……それまでにあいつを捕まえればいいわけか」


レナはマリアの言葉に頷き、早速だが彼は外に出向くための方法を考える。潜水船は既に海中にいるため、まずは外に出る方法を考えるとホネミンが親指を立てた。


「外に出るのならいい方法がありますよ」
「えっ……?」


ホネミンの笑顔を見てレナは何故かうさん臭さを感じ、この1分後に彼は思いもよらぬ方法で潜水船を抜け出す事になった――






――囮役の魚人はタコ型の魚人であり、名前はタルコという。元々はバクの部下だったが、彼が捕まった事で現在は魚人王に命じられてバクの代わりを務めている。彼の目的は仲間と共に人間達が乗る船を海底王国に誘導するのが役目だった。


『全く、魚人王は何を考えておられるのか……』


人間が乗り込んだ船が海底王国に近付いているという話を聞いた時はタルコは驚いたが、人間の船が海底王国に乗り込めるはずがないと思っていた。しかし、人間達が乗ってきた船は海の中を移動する機能を搭載しており、それを知った魚人王はタルコに海底王国まで船を誘導する様に命じる。

陸地ならばともかく、海ならば魚人の方が圧倒的に有利なので最初はタルコは仲間を連れて潜水船へ攻撃を仕掛けるように意見した。しかし、魚人王は聞く耳持たずにあくまでも海底王国まで潜水船を誘導するように命令を与えた。タルコはそれに逆らえず、指示通りに動く。
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