不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
1,679 / 2,090
真・最終章 七魔将編

脱出目前

しおりを挟む
「な、何だ!?どうなってるんだ!?」
「マリア様の魔法が……吸収されている!?」
「違う!!吸収されているのではない、マリア様が送り込んでいるだけだ!!」


マリアが発動した最上級魔法の七光は全属性の砲撃魔法を同時に発動させる魔法であり、黄金の扉のそれぞれの聖剣の窪みに適した魔力を送り込む。カラドボルグの窪みには雷属性、レーヴァティンの窪みにには火属性の魔力を放ち、やがて魔法陣が消えると黄金の扉が光り輝く。

聖剣を嵌め込まずとも黄金の扉はどうやら七つの属性の魔力を吸収する事で開く仕組みらしく、黄金の扉が光り輝くとマリアは他の者に指示を出す。


「さあ、これで開くはずよ。早く開けなさい」
「よ、よし!!今だ!!」
「おりゃああああっ!!」
「せぇのっ!!」


全員がかりで黄金の扉に集まると一斉に扉を左右に開き、眩い光が通路内を照らす。やがて扉の奥から紅色に染まった大剣を手にしたレナが姿を現わした。


「うわっ!?皆、どうしたの!?」
「レナ!!無事だったか!!」
「レナたん、心配したよ~」
「ぷるるんっ(心配かけるな)」


レナが姿を現わすと全員が彼の元に集まり、無事である事を確かめると安堵した。その一方でマリアの方は流石に魔力を使いすぎたのか、彼女は頭を抑えて顔色を青くしていた。


「ふうっ……この魔法は流石にきついわね」
「マリア様!!大丈夫ですか?」
「すぐに魔力回復薬を……」
「必要ないわ、少し立ち眩みしただけよ」


薬を用意しようとするカゲマルとハンゾウを下がらせ、マリアはレナの元へ向かう。最上級魔法の中でも七光は最も魔力消費が激しいのでいくらマリアでも負担は大きいと思われたが、甥の前では弱い自分を見せたくはない彼女は平然と振舞う。


「レナ、どうやら何か収穫があったようね」
「叔母様が開いてくれたの?ありがとう、ちょっと出るのに苦労しそうだったから……」
「そんな事よりもその剣をみせてくれるかしら?」


マリアはレナの持つ大剣に視線を向け、彼女は一目見ただけで彼の持つ武器の性能の高さを見抜く。鑑定眼を持つマリアだからこそレナが作り出した八番目の聖剣の凄さを知る。

他の者達もレナが持って来た大剣に興味を抱き、聖剣を作り出した当の本人も他の皆に生まれ変わった退魔刀を見てもらいたくて異空間に預けずにわざわざ手に持って運んできた程である。


「これ退魔刀なのか?でも色が違うよな……」
「す、凄い力を感じる気がするよ!!」
「見ているだけで肌が震えます」
「な、何だかよく分からないけど……ドキドキする」
「むうっ……あんまり近寄りたくはない」
「「ぷるぷるっ(同感)」」
「ほほう、これはこれは……また、大層な物を持ってきましたね」


変化した退魔刀を見て各々が普通の武器ではない事を察し、武人組は見ただけで身体を震わせ、人魚族とスライムのコトミンは距離を取る。レーヴァティンと同じく火属性の聖剣へと進化を果たした退魔刀に驚愕や恐れを抱く皆にレナは堂々と告げた。


「実はまだ、こいつは完成していないんだ」
「完成していない?どういう意味だ?」
「それは見てのお楽しみという事で……さあ、他の皆を探し出して脱出しよう」
「そ、そうか……」


レナは退魔刀を背中に戻すと、まだ合流していないゴウライ達を捜索する事を提案した。他の者達はレナの言葉が気になったが、もう既に訓練場に入ってからかなりの時間が経過しており、合流していない者達を心配だった。


「ここにいないのはゴウライさんとシズネさんと……ホムラさんですね」
「あいつらなら別に平気だろ。もしかしたらここに辿り着いているんじゃないのか?」
「仮にこの空間に存在したとしてもここまで辿り着けるかどうかは分からないでござるよ」
「大丈夫だ。そのために道標は残してきた」
「私達も道標を発見してここまで辿り着けましたし、ここで待っていれば大丈夫なのでは?」


空間を転移し続ければいずれは帝都に辿り着ける事は実証されているため、他の者達も魔物を倒して別の空間に転移しているのであれば既にこの帝都に到着している可能性もある。帝都を捜索の際にレナ達は道標を残しており、もしもゴウライ達が帝都に居るとしたらこの場所まで赴くはずである。


「レナさんの魔力感知で三人の行方は分からないんですか?」
「ホネミンも魔力感知はできるだろ」
「それがこの空間に入った途端にどうも魔力が感じられないんですよね。マリアさんが近付いているのも気付けませんでしたし……もしかしたらこの通路自体が魔力を遮断する仕組みなのかもしれません」
「その可能性は十分にあるわ。私もこの通路に辿り着くまでは貴方達の魔力を感じられなかったもの」


現在のレナ達が存在する地下通路は魔力を遮断する素材で構成されている可能性があり、この通路内にいる間は外部の魔力を全くと言っていいほど感じられなかった。但し、先ほどレナはマリアの魔力を僅かにだが感じ取ったため、完全に遮断されているというわけでもなく、マリア程に強大な魔力を持つ存在ならば通路内に居ても感知できると思われた。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。