不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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蛇足編

白竜宅急便

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「――さあ、行きますよ皆さん!!振り落とされないようにしっかりとしがみついててください!!」
「ぎゃあああっ!?」
「ぬおおっ!?」
「わあああっ!?」


ホネミンがリーリスに連絡を取ってからしばらく経つと、塔の大迷宮から白竜が派遣された。白竜はダイン達が乗っていた馬車を前脚で掴むと、彼等を乗せたまま王都へ向けて直行した。


「シャアアアッ!!」
「さあ、見えてきましたよ!!あれが王都です!!」
「は、早く降ろしてぇええっ!?」


馬車を掴んだ白竜は王都の上空まで辿り着くと、白竜は地上へ向けて降下した。流石に街中に下りるわけにはいかないので王都の城壁近くに白竜は馬車を下ろすと、ダイン達は外に飛び出した。


「うええっ……気持ち悪い」
「うぷっ……」
「は、ははっ……中々楽しかったですね」
「皆さんに楽しんで貰えて何よりです。ハクもよく来てくれましたね」
「シャアッ!!」


白竜はホネミンに頭を近づけて擦り寄り、彼女は白竜の頭を撫でながらダイン達を見下ろす。ミイネはわりと平気そうだがダインとゴンゾウは酔ったらしく、回復するまで時間が掛かりそうだった。


「大丈夫ですか?私が造った特製の酔い止め薬を飲みますか?」
「い、いや……平気だ。それよりも早くミヤの元に行かないと!!」
「本当に大丈夫ですか?」
「平気だって言ってるだろ……それよりもミヤの方がなんかやばいことになってる!!」


闇の聖痕の力でダインはミヤの魔力が急激に膨れ上がっていることに気が付き、既に彼女はシャドウ家の屋敷に到着していることも把握していた。ダインは一刻も早くミヤの元へ向かう必要があるが、まずは王都の城壁を潜り抜けねばならない。

白竜に乗せてもらって王都を乗り越えるのが一番手っ取り早いが、先ほどのように運んでもらうのは御免であり、ダインは影魔法を発動させた。ダインが伸ばした影が王都の城壁の頂上部にまで到達し、それを縄代わりに利用して登り始めた。


「二人とも行くぞ!!ほら、早くしろって!!」
「うわっ!?」
「ぬあっ!?」
「行ってらっしゃ~い」
「シャアアッ」


ダインは自分の影を鞭状に変化させてゴンゾウとミイネの身体に巻き付け、三人一緒に城壁をよじ登り始めた。その様子をホネミンは手を振って見送り、白竜は地面に寝そべりながら様子を見守る。


「あれ!?あのお姉さんと白竜は一緒に来てくれないんですか!?」
「すいません、白竜はここまでくるのに大分無理したのでもう動けないみたいです。私は面倒を見ないといけないのでここに残りますね。もしも皆さんが手の負えない状態に陥ったら助けに行きますのでお気をつけて~」
「どっちにしろそんなデカい竜が城下町に入ったら大騒ぎだからいいよ!!」
「その通りだな。俺達の手で解決しなければ……だが、何か様子がおかしくないか?」


城壁をよじ登る途中でゴンゾウは城壁にいるはずの見張りの兵士の姿がないことに気が付く。王都の警護は国内で一番厳しいはずだが肝心の兵士がいないことに彼は疑問を抱く。しかし、その理由はダイン達が城壁をよじ登ると判明した。


「な、何だよこれ!?」
「これは……大変なことになってるようですね」
「ミヤの仕業か!?」


城壁をよじ登ると城下町の至る箇所から煙が上がっていた。しかもただの煙ではなく、闇属性の魔力で構成された黒霧だと判明した。その黒霧を見てダイン達は嫌な予感を抱きながら街に下りた。


「う、うう……」
「た、助けてくれ……」
「力が……」
「むっ!?あそこに倒れている人たちがいるぞ!!助けなければ……」
「駄目だゴンゾウ!!近付いたらお前まで倒れるぞ!?」
「どういうことですか!?」


街道で倒れている城下町の住民を発見したゴンゾウは助けに向かおうとしたが、慌ててダインが引き留めた。ダインは街道に漂っている黒霧を見て彼等が闇属性の魔力を吸い込んだせいで体調を崩して倒れたのだと気が付く。


「この黒霧のせいだ!!これを吸うと普通の人間は倒れるんだ!!二人とも気を付けろ!!」
「ダインさんは大丈夫なんですか!?」
「僕は闇魔導士だ!!闇属性の魔力は……僕の好物だよ!!」


ダインは笑みを浮かべて影魔法を発動させると、巨人の姿を模した影人形を作り出す。そして街中に漂っている黒霧を吸い寄せるように巨人の口元に黒霧は集まっていく。

闇の聖痕を利用してダインは街中に漂っている黒霧を吸収して倒れている人々を助けた。黒霧さえ消えればこれ以上の被害は抑えられ、倒れている人間は明るい場所に移すように二人に指示を出す。


「ゴンゾウは倒れている人たちを明るい場所に連れて行け!!今日は満月だから月の光を浴びやすい高い場所がいい!!」
「分かった!!」
「ミイネは兵士に黒霧が危険なことを伝えてくれ!!兵士にはレナの名前を出せば聞いてくれるはずだ!!」
「分かりました!!ダインさんはどうするんですか!?」
「僕は街の中の黒霧を掻き消すことに集中する!!ミヤを探し出すのはその後だ!!」


ミヤを捕縛するよりも人命救助を優先したダインは急いで黒霧の対処を行い、他の二人も指示通りに動く。
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