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魔法学園編

第94話 ミイナとの空中散歩

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――本日も休日のため、マオはミイナと共に城下町に出向く。二人の目的は賞金首を見つけ出し、隠れ家を突き止めて警備兵に報告して賞金首を捕まえさせ、報酬金を受け取る。この時に注意するのがあくまでも賞金首を捕まえさせるのは兵士の仕事であり、マオとミイナは極力戦闘を避けなければならない。

実力に自信がある人間ならば直接に賞金首の犯罪者を捕まえて兵士に引き渡すだろうが、今回の場合は金貨10枚という高額賞金首が相手である。いくら魔法の力を身に着けて自分の腕に自信が付いたと言っても、マオは賞金首を実力で捕まえられる自信なかった。

ミイナも共に行動するとはいえ、相手がどれほどの実力を持つのか分からない以上は不用意に仕掛けるのは危険過ぎた。その事を踏まえてマオはあくまでも賞金首を見つけても捕まえる役目は兵士に任せる事に決めた。


「ミイナ、本当にこんな場所から下の人達が見えるの?」
「大丈夫、はっきりと見える」


マオはミイナに連れられて大きめの建物の屋上に移動し、そこからミイナは地上を見下ろす。獣人族である彼女は視力も人間よりも優れており、街道を歩く人々の顔を確認して賞金首らしき人物を探す。


「どう?怪しい人はいた?」
「……ここだと人通りが少ない。もっと人がいるところに移動した方が良い」
「となると……大通りの方かな」


ミイナの発言を聞いてマオは頷き、もっと人気の多い場所に向かう事にした。この時にマオは二つの杖を取り出して昨日から散々練習をしてきた魔法を発動させる。


「よしっ……移動しよう」
「……本当に大丈夫?私についてこれるの?」
「まあ、見ててよ」


二つの杖から作り出した氷塊同士を合体させ、マオは1メートル近くの大きさの氷塊を作り出す。手袋を嵌めたマオは氷塊の上に乗り込み、氷の端の部分を手袋越しにしっかりと掴む。

氷塊に乗り込んだマオを見てミイナは心配するが、彼女は人が多い場所に向けて移動を行う。獣人族の身体能力の高さを生かして彼女は建物の屋根の上を跳び移る。


「じゃあ、先に行く。マオも気をつけて」
「うん、頑張るよ」
「……無理しないでね」


ミイナは先に向かい側の建物に向けて飛び込み、彼女は無事に屋根の上に着地した。それを確認したマオは緊張した様子で建物の屋上から地上を見下ろし、もしも移動に失敗して落ちたら今度は大怪我だけでは済まない。


(大丈夫だ、あんなに練習したんだ。きっとできる、信じろ!!)


自分自身を鼓舞してマオは覚悟を決めると、できる限り下は見ないように気をつけながら氷塊を利用して移動を行う。地上を歩くのとほぼ同じ速度で氷塊が動き出し、先にミイナが飛び移った建物の屋根に向けて移動を開始する。

移動中の間はマオは決して下を見ないようにして目的地に向かう事だけに専念した。緊張のあまりに汗が滲み出るが、精神が乱れて魔法が解除しないように気をつけながらマオは先を進む。


「……おかえり」
「た、ただいま……はあっ、はあっ」
「大丈夫?」


先に屋根に移動していたミイナが心配そうに声をかけると、マオは額の汗を拭いながら氷塊から降りて屋根の上に降り立つ。無事に移動できた事にマオは安堵するが、ミイナは少し言いにくそうな表情を浮かべる。


「次はあっちの方に行きたいから私は行くけど……付いてこれる?」
「……だ、大丈夫だよ。コツは掴んだから」


ミイナは遥か前方に存在する大きな建物を指差すと、その距離を見てマオは冷や汗を流しながらも頷く。向かい側の建物へ移動するだけでマオはかなり精神力を削られてしまったが、それでも頑張ってミイナに続いて別の建物への移動を行う――





――捜索を開始してから1時間後、マオとミイナは人通りの多い建物の屋根の上に身を伏せて地上の様子を伺う。この時点でマオは疲れ切った表情を浮かべて屋根の上に寝そべり、ミイナの方は猫が日向ぼっこするかのように眠たそうに眼をこすりながらも地上の様子を伺う。


「はあっ、はあっ……」
「マオ、やっぱり無理しない方がいい。私だけで大丈夫だから……」
「へ、平気だよ。大分慣れてきたから……」


心配そうに語り掛けるミイナにマオは強がりのような台詞を告げるが、実際の所は本当にここまでの移動でマオは氷塊を乗りこなすコツを掴みかけてきた気がする。落ちれば即死を免れない高度での移動は精神力を削られたが、逆に何度も乗り越えてきた事で自信が持てるようになった。

何度も空を飛んで移動してきた事でマオは地上への落下の恐怖が薄まり、少しずつではあるが氷塊の移動速度も増してきた。今ならば小走り程度の速度で移動できるようになり、ミイナの後を追いかけられる。


「それよりも怪しい人は居た?」
「まだ……そろそろ人酔いしそう」
「ちょ、ミイナの方こそ無理しない方が……」


ずっと地上の人間の顔を確認していたミイナは体調を崩し始め、流石に休憩を挟むべきかとマオは提案しようとしたが、不意に彼女は何かに気付いたように声を上げる。
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