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魔法学園編

第95話 賞金首の発見

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「見つけた……」
「えっ!?」
「しっ、静かにして……」


ミイナは地上の様子を確認しながらマオの口元を抑え、彼女の行動にマオは戸惑いながらも地上を見下ろす。地上には大勢の人間が行きかい、その中に怪しそうな人物は見当たらないが、ミイナは目つきを鋭くさせてある人物を指差す。


「あそこにいる男……カツラを被ってるけど、間違いない。手配書に描かれている男とそっくり」
「あそこ?」


手配書に記されていた似顔絵はマオも覚えており、彼女の指差す方向を見つめるとそこには長髪に帽子を被った男性の姿があった。手配書に描かれている男性は短髪でしかも角が生えている。一方でミイナの見つけた男性は長髪で帽子を被っているせいで顔が良く見えない。しかし、ミイナの視力はしっかりと男性の顔を捉えていた。

髪の毛の長さと帽子のせいで顔が良く見えないため、マオは本当に彼が手配書に描かれている人物と同一人物なのかは分からない。しかし、ミイナは自信をもって自分が見つけた男性が賞金首だと確信する。


「あの男、間違いなくこの手配書に描かれている男」
「ほ、本当に?」
「……マオは私の事を信じられない?」


ミイナはマオに振り返って彼の瞳を真っ直ぐに見つめると、そんな彼女に対してマオは馬鹿な事を聞いてしまったと思い、素直に謝罪する。


「ごめん、信じるよ」
「そう」


マオの返事を聞いてミイナはすぐに顔を反らすが、彼女の尻尾と猫耳は嬉しいのかぴくぴくと震え、こんな状況だというのにマオは少しほっこりとしてしまう。

二人は地上を歩く賞金首らしき男性の様子を伺い、その人物が裏路地に入るのを確認すると、二人は後を追う事にした。ミイナは屋根の上を移動し、一方でマオは彼女に続いて氷塊に乗り込んで後を追いかける。


「……どんどん人気のない所に移動してる。もしかしたら隠れ家があるのかもしれない」
「隠れ家か……本当にあるのかな?」
「指名手配されている犯罪者なら宿屋に泊まる事はできない。なら、何処かで身を隠せる場所があるはず……多分」
「そうだね」


裏路地を移動する男性の様子を伺い、まだ気づかれていないのか特に男性は怪しい動きは取らない。マオとミイナは屋根の上を移動しながら観察を行うが、不意にマオは嫌な予感を抱く。


(何だ、この感覚……)


マオは深淵の森にてリオンと共に魔物から逃げ回っていた時の事を思い出し、まるで自分が魔物が巣食う森の中に迷い込んだ時のような感覚を味わう。その感覚は常に誰かが自分を監視しているように感じられ、とても落ち着かない。


(誰かに見られている?でも、こんな場所でいったい誰が……まさか!?)


危機感を抱いたマオは地上を歩いている賞金首から目を反らし、慌てた様子で周囲を見渡す。すると、いつの間にか自分達以外に屋根の上に立つ人影を発見し、遅れてミイナも異変に気付いたのかマオに声をかける。


「マオ、逃げて!!」
「くっ!?」


ミイナの言葉を聞いてマオは咄嗟に小杖を構えると、二人が立っている建物の屋根に目掛けて複数人の獣人族の男達が飛び込んできた。


「ひひひっ!!」
「気付いても遅いんだよ!!」
「へへへっ……もう逃げられないぞ」
「くっ!?」
「……油断してた」


マオ達を取り囲んだ男達は獣人族であり、全員が犬型の獣人族だった。恐らくは二人が追いかけていた賞金首の仲間だと思われ、その手には短剣と縄が握りしめられていた。

唐突に現れた盗賊達はマオ達を逃がさないように取り囲み、数は5人存在した。ミイナはマオを庇うように前に立つが、マオも緊張しながらも二つの小杖を握りしめて彼女と背中を合わせる。


「ち、近づくな!!これ以上に近付けば容赦しませんよ!!」
「マオ……こういうとこはもっとドスのきいた声を出した方がいい」
「え?えっと……近付くと痛い目に遭わせるどす!!」
「違う、そうじゃない。というよりそれ何弁?」
「何だこいつら……」
「ふざけたガキ共だな……だが、どっちも上玉だ。こいつは高く売れそうだぜ」


盗賊達はマオとミイナの顔立ちを確認し、子供の割には二人とも綺麗に整った顔立ちをしていた。盗賊達はどうやら二人を捕まえて売り飛ばすつもりらしく、縄を取り出して二人に近付こうとしてきた。


「さあ、大人しくしろ。暴れると痛い目に遭うぜ?」
「こ、この杖が見えないんですか!?」
「杖?こいつ、魔術師か?」
「まさか魔法学園の生徒か!?それなら増々高く売れそうだぜ!!」
「……下衆」


マオが小杖を構えて脅しつけても盗賊達は取り乱さず、逆に二人が魔法学園の生徒だと知って笑い声を上げる。魔法を扱える子供は普通の子供よりも何倍も高く買い取られるため、盗賊達はマオ達を捕まえようと不用意に近づく。
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