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魔法学園編

第93話 連結

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――現時点でマオが一度に作り出せる氷塊の大きさは1メートルにも満たず、数の方も10個ほど作っても維持するのがやっとだった。しかし、複数の氷塊を組み合わせる事でマオは今まで以上に巨大な氷塊を生み出して操れる事に気付く。

二つの氷塊を凹凸の形へと変形させて合体させる事により、今までよりも大きな一つの氷塊を作り上げる。そして作り上げた氷塊の上にマオは乗り込んでも二つ重なった氷塊は完全に一体化して分離する事はない。


「うん、乗っても大丈夫だな……なら、次は」


マオは雲を見上げて昔読んだ絵本を思い出し、雲に乗った主人公が空を飛ぶ光景を思い出す。マオは自分が造り上げた氷塊を操作して自分自身を乗せた状態で氷塊を動かせるのかを確かめる。


「まずはゆっくりと……うわっ!?」


しかし、少し先に移動させようとマオが念じた瞬間、足場にしていた氷塊が動き出して彼は体勢を崩して地面に落ちてしまう。背中から落ちたマオは痛みを覚えるが、どうにか立ち上がって先に移動した氷塊を引き寄せる。


「いててっ……ちょ、ちょっと勢いが強すぎたかな?今度こそゆっくりと……」


再び氷塊に乗り込んだマオは今度は吹っ飛ばないようにしっかりと氷塊を掴み、この時に素手で氷に触れるせいで冷たさを覚えるが、今度は吹き飛ばされないように気をつけながら氷塊を移動させようとした。


「よし、今度こそゆっくり……うわわっ!?」


移動速度を落とす事には成功したが、思っていた以上に空中を移動する氷塊の上に立つ事は難しく、今度はバランスを保てずにマオは地面に転んでしまう。

何度も転んだせいで身体中が擦り傷だらけになってしまうが、マオは自分が乗った状態でも氷塊を動かせる事が証明された。だが、思っていた以上に氷塊をゆっくりと移動させるのは精神力を削り、これならば高速で射出させる方が楽に想えた。


「ふうっ……結構きついな、それに落ちないようにもうちょっと工夫しないと」


バルルからは「質と量」のどちらかを鍛えるようにマオは言い付けられたが、彼は量を増やして質を向上させる手段を思いついた。一つの氷塊ではできない事を複数の氷塊を組み合わせる事で利用方法を増やす。正にマオならではの魔法の応用だった。

この方法ならば魔力量が少ないマオでも氷塊同士を繋ぎ合わせる事でより大きな氷塊を作り出せる。慣れていけばもっと早く氷塊を合体させ、より強力な攻撃が行えるかもしれない。しかし、今は攻撃魔法よりも移動手段を手に入れるためにマオは集中する。


「ふうっ……よし、やるか」


マオは定期的に休憩を挟み、何度も地面に転ぼうと練習は諦めず、その日は夜まで練習を続けた――





――翌朝、マオは身体中に絆創膏を張りつけながらも学生寮の裏庭に移動すると、小杖を取り出す。この時にマオは両手で小杖を握りしめ、そして二つの杖を重ね合わせた状態で魔法を発動させる。


「よし……できた」


マオは無詠唱で二つの氷塊を作り出し、即座に合体させて一つの氷塊に変化する事に成功した。昨日から練習を続けているうちに何時の間にか無詠唱でも二つの氷塊を作り出せるようになっていた。

色々と試した結果、やはり一つの杖で一度に生み出せる魔法は一つが限界であり、二つの杖を持っていなければマオは同時に二つの氷塊を生み出す事はできない。もしかしたら杖の数が増えればもっと氷塊を出せるかもしれないが、現状では生み出せる氷塊の数は一度に二つまでである。


「おっとと……」


氷塊の上に乗り込んだマオは落ちないように気をつけながら事前に用意していた手袋を取り出す。利き手である右手に二つの杖を握りしめ、手袋を装着した左手で氷塊の端を掴む。


(……行け)


マオが心の中で氷塊に動くように念じた瞬間、ゆっくりとだが氷塊が動き出す。昨日の猛特訓でマオは氷塊の移動速度を術を身に着ける。

今までのマオは氷塊を速く動かす練習を続けてきたが、逆に速度を遅くする練習など行ってこなかった。しかし、昨日の訓練で氷塊を遅く動かす事ができるようになるまで練習を繰り返し、そして遂に自分が歩くのと同じ程度の移動速度は出せるようになった。


「よし、これぐらいなら大丈夫だ。けど……遅すぎるな」


氷塊に乗り込んだ状態でも徒歩と同じ程度に動かす事はできるようになったが、落ちないようになったのは進歩だが、あまりにも移動速度が遅すぎた。もっと練習を行って氷塊を乗りこなせるようになったら移動速度も上げる事ができるかもしれないが、今は時間がないのでこの新しい魔法でミイナの援護を行うしかない。


(本当はもっと練習して使い物にしないといけないんだろうけど、これ以上に時間はないし、やるしかない!!)


もたもたしていると他の人間が賞金首を見つけてしまうかもしれず、まだ多少の不安は残るがマオは新しい魔法を覚えた事をミイナに伝えるために彼女の元に向かう事にした――
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