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魔法学園編

第102話 ドワーフの鍛冶師

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――バルルは駐屯所の兵士からマオとミイナを引き取ると、二人を連れて彼女は向かった先はとある古ぼけた鍛冶屋だった。てっきり学園に連れ戻されると思っていたがマオとミイナだったが、彼女が鍛冶屋に連れてきた事に戸惑う。


「師匠、この店は……?」
「あたしが昔世話になった爺さんの店だよ。ここへ訪れるのは冒険者を辞めた時以来だね……」
「鍛冶屋……?」


冒険者時代のバルルが世話になっていた鍛冶師が店を開いているらしく、彼女は扉を開いて中に入ると、そこには一心不乱に鉄槌を振り下ろす老人の姿があった。普通の人間よりも非常に背が小さく、マオとミイナともそれほど変わりはない。

小柄な老人の姿を見てマオは即座に「ドワーフ」と呼ばれる種族を思い出す。別名は「小髭族」とも呼ばれ、人間よりも小柄でありながら腕力は強く、男性の殆どは老齢に達すると顔半分が髭に覆われると言われている(剃ってもすぐに生え変わる)。


「よう、爺さん!!まだ生きてたようだね?」
「あん!?誰だか知らないが見ての通りに今は仕事中だ、用事があるなら明日にしてくれ!!」


バルルが話しかけても老人は振り返りもせずに鉄槌で金属を叩きつつけ、そんな彼にバルルは苦笑いを浮かべながらマオとミイナに紹介する。


「この爺さんはあたしが冒険者の時に装備を作ってくれてた爺さんだよ。名前はドルトン、こんな小さい店だけど腕前は王都一番だね」
「誰の店が小さいだ!!失礼な奴だな……ん!?その声はまさか!?」


ドルトンと呼ばれた老人はバルルの声に気付いて振り返ると、彼女の姿を見て心底驚いた表情を浮かべる。彼は立ち上がると嬉しそうな表情を浮かべてバルルの元へ向かう。


「お前、誰かと思えばバルルじゃないか!!久しぶりだな、何年ぶりだ!?たくっ、最近は碌に顔も見せないから心配してたんだぞ!!」
「悪いね、冒険者を辞めてからここへ来る用事がなかったからね」
「たく、冷たい奴だな……偶には仕事関係なく遊びに来い。ついでに酒も持ってきてな」
「そういうと思ってちゃんと用意してきたよ。ほら、酒だ」
「おおっ!!こいつは有難い!!」


バルルは事前に用意していた酒瓶をドルトンに放り投げると彼は嬉しそうに受け取り、すぐに机の上に置いて蓋を開こうとする。しかし、ここで彼はバルルの傍に子供が二人もいる事に気付き、驚いた表情でバルルに問い質す。


「おい、バルル……その二人は誰だ?まさか、お前の子供か!?」
「どいつもこいつも何であたしにこんなデカいガキがいると思うんだい!!こいつらはあたしの弟子だよ!!」
「弟子?どういう意味だ?そいつらを冒険者にするつもりか?」
「あ~……まあ、色々とあってね。そこら辺は今から説明するけど、その前に自己紹介しな」
「ど、どうも……マオと申します」
「ミイナ」


マオとミイナは自分の名前を告げるとドルトンは不思議そうに二人を見つめ、とりあえずはバルルが冒険者を辞めた後に何があったのかを話を聞く――





――色々と合ってバルルは現在は魔法学園の教師を勤めている事、そしてマオとミイナを自分の生徒として指導している事を伝える。話を聞き終えたドルトンは全員分のグラスを用意すると、自分とバルルには酒を注ぎ、マオとミイナにはジュースを注ぐ。


「お前さんがまさか魔法学園の教師になるとはな……あれだけ学園を嫌っていたくせにどういう風の吹き回しだ」
「まあ、こっちにも色々と事情があってね……」
「マオ、ジュースがぬるいから氷を頂戴」
「ええっ……仕方ないな」


会話の際中にミイナは自分のグラスに入っているジュースを冷やすためにマオに頼み、彼は仕方なく小杖を取り出す。そして無詠唱で小さな氷を作り出して彼女のグラスに入れると、それを見ていたドルトンは驚いた表情を浮かべた。


「おい、今の……まさか、魔法か?」
「え?あ、はい……下級魔法のアイスです」
「驚いたな、まさかその年齢で無詠唱で魔法を扱えるのか」
「こいつは優秀な弟子でね、あたしのガキの頃よりよっぽど腕が立つよ」
「ふん、それは言い過ぎじゃないのか?お前さんも若い頃から大したもんだったよ」


無詠唱で魔法を発現させたマオにドルトンは驚いたが、バルルの言葉を聞いて彼は昔の事を思い出す。魔法学園を退学になった後、バルルは冒険者になった。当時はまだ冒険者は15才から就く事ができたため、バルルは自分の魔法の腕を生かして冒険者になる。

彼女は冒険者になった後にドルトンの元に訪れ、彼に自分の装備を作るように依頼した。最初は子供の相手などしなかったドルトンだが、バルルの熱意に負けて装備を整えてやった事を思い出す。


「昔が懐かしいな……そういえばお前と同期の3人組はまだ冒険者をやっているぞ」
「知ってるよ。まさか弱虫3人組が銀級冒険者にまで昇格するなんてね」
「ふん、それは俺の装備のお陰だ。あいつらの武器は俺が仕立ててやったからな」
「え?トムさん達の武器を作ったのはお爺さんなんですか?」
「何だ、トム達の事も知っているのか?」


2人の会話を聞いていたマオは驚き、ドルトンはそんな彼に顔を向けた。このときにバルルは話題を変える良い機会だと思い、マオとミイナに小杖と魔法腕輪を差し出す様に告げる。
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