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魔法学園編

第152話 禁じられた教え

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「ミイナ、そいつが目を覚ますまであんたが見てやりな」
「……分かった」
「おい、待てよ!!どうしてあんな物を付けた状態で魔法を使わせたんだ!!あんた、自分の生徒を危険に晒したんだぞ!!」
「はっ……今どきの魔法学園の生徒はこの程度の事で騒ぎ立てるのかい?随分と甘い教育を受けてきたんだね」
「何だと!!」


バルルの発言にバルトは怒りを露わにするが、そんな彼に対してバルルは拳を突き出す。元格闘家のバルルの動作は素早く、彼女の拳はバルトの顔面の前で止まると、彼は驚いて尻餅を着く。


「うわっ!?」
「何度も言わせるんじゃないよ、こいつがどれほど魔術師にとって危険な代物はよく分かってる。だけど、どうしてもやらないといけないんだよ」
「な、何なんだよ!!どういう意味だ!?」
「……昔の話になるけどね、魔法学園では生徒に授業の一環として毎日のように魔力を絞り出す訓練が行われていた」
「えっ……?」
「その話、聞いた事がある。学園長が言ってた気がする」


思いもよらぬバルルの言葉にバルトは呆気に取られるが、ミイナの方は心当たりがあるらしく、そんな二人にバルルは自分の学生時代の話を行う――





――まだバルルが学生だった頃、三年生の時から彼女はマオが使用した吸魔腕輪《ドレインリング》と呼ばれる魔道具を装着して授業を行っていた。授業の内容はぎりぎりまで魔力を絞り出し、自然回復を待つという内容の授業だった。

当時の魔法学園の学園長は魔術師が魔力量を伸ばす方法を模索し、そして魔力を強制的に奪い取る吸魔腕輪を作り出す。この吸魔腕輪で生徒達の魔力を搾り取り、自然回復させる事で魔力量が伸びるかどうかの実験を行う。

結果から言えばこの実験は成功せず、何十人もの生徒達が命の危機に晒された。後にこの実験の本当の目的は魔術師の拷問用の魔道具の開発のために執り行われていた事が判明し、これによって当時の学園長は失脚してマリアが新しい学園長に選ばれた。

吸魔腕輪を扱う授業は廃止され、現在では罰則用の魔道具として学園で管理されている。しかし、その魔道具をバルルは敢えて持ち出した。彼女にとっては吸魔腕輪など嫌な思いでしかない忌まわしい魔道具だが、この魔道具のお陰で彼女はある能力が強化された。


「確かにこいつは拷問用に開発された魔道具さ。下手に扱えば命の危機もある……それでも今のこいつにはどうしても必要な物なんだよ」
「ふざけんなっ!!あんた、それでも教師か!?こんなやばいもんを身に着けさせるなんて何を考えてるんだ!!」
「私もそう思う。いくらなんでも危険過ぎる」
「……分かってるよ、そんな事は」


バルトとミイナの言葉にバルルは言い返さず、彼女としてもこんな方法は取りたくはなかった。しかし、マオがこれ以上に魔術師としての腕を磨くにはどうしても吸魔腕輪の力が必要だった。

この吸魔腕輪は改良が加えられて現在では無制限に装着した人間の魔力を奪うわけではなく、人体に悪影響を及ぼさない程度までしか魔力を吸収しない。しかし、それでも魔法を使う度に意識を失うぐらいまで魔力を吸われる事に変わりはなく、使用者にとってはきつい魔道具である事に変わりはない。


「あんたが何を考えているのか知らないが、こんな方法は間違ってる!!いったい何をしたいんだよ!?」
「それは……答えられないね」
「おい、ふざけんなよ!!それでもこいつの先生か!?」
「うるさい!!これ以外に方法なんてないんだよ!!」


バルトの言葉にバルルは怒鳴り返すと、そんな彼女の気迫に彼は押し黙る。ミイナも言葉は口にせず、自分の膝枕で眠るマオを見つめると、バルルの大声に反応したのかマオが目を覚ます。


「うっ……」
「マオ、大丈夫?」
「坊主!!目が覚めたのか!?」
「……どうだい、気分は?」


意識を取り戻したマオに3人は顔を覗き込むと、彼は何が起きたのか分からないといった様子で頭を抑えながらも起き上がる。


「い、いったい何が……」
「あんたは魔力を吸われて倒れたんだよ。その魔道具は吸魔石以上の効果があるのは分かっただろう?」
「おい!!まずは謝れよ!!説明する前にこんな物を付けさせて!!」
「……悪かったね」
「えっ……」


バルトの言葉にバルルは顔を反らしながらも謝罪し、彼女の反応に他の者は意外に思う。いつものバルルならば怒鳴り返してもおかしくはないが、彼女なりに罪悪感を抱いているらしく、訓練を続けるのかどうかを問う。


「マオ、あんたが決めな。この訓練を続けるかどうか……どうしてもいやだというなら別の訓練に切り替えるよ」
「師匠……」
「マオ、もう止めた方がいい」
「そうだな、先生だってこう言ってるんだ。無理にこんなの使う必要もないだろ」


バルルの言葉にミイナとバルトは止めるように促すが、マオは嵌め込まれた吸魔腕輪に触れて考え込む。そんな彼の態度にバルルは黙って見守る。
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