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魔法学園編

第248話 果たし状

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――試合を終えてからマオ達が教室に戻ってもリオンの姿はなく、その代わりに困った表情を浮かべたバルルが教卓の上に座って腕を組んでいた。彼女は学園長に呼び出されていたはずだが、戻ってきたマオ達を見て声をかける。


「ああ、あんた達も戻ってきたのかい」
「師匠!!もう用事は済んだんですか?」
「まあね、それよりもあんたら……リオンお……いや、リオン……君に何をしたんだい?」
「リオン君!?」


バルルはリオンの事を君付けで読んだ事にマオは驚き、基本的に彼女は生徒の事を呼び捨てにするのでリオンの事だけを君付けした事に違和感を抱く。しかし、彼女の口調から察するに既にバルルはリオンと顔を合わせていたらしい。


「先生、リオンの奴がここに戻ってくるってどうして教えてくれなかったんだよ!?」
「知らないよ、そんな事……こっちだってさっき学園長に戻ってきた事を知らされたんだよ」
「そのリオンは何処にいるの?」
「行っちまったよ。まあ、今日のところは戻ってこないかもね」


リオンは既に立ち去ってしまったらしく、まだ授業中にも関わらず勝手に抜け出したリオンを教師であるバルルが止めなかった事にマオは不思議に思う。


「師匠、どうしてリオンを行かせたんですか?」
「まあ、今は一人にさせた方がいいと思ってね。あんた、リオン……君に勝ったんだって?」
「まあ、一応……」
「一応じゃないだろ、完璧な勝利だったぜ」
「非の打ち所がないほどの勝利だった」


マオとリオンの試合を見ていたミイナとバルトは自信なさげに応えるマオを励まし、試合の内容から考えればマオの完全勝利といっても過言ではない。リオンの魔法を全てマオは対処し、相手の隙を突いて小杖を破壊した。

魔術師同士の試合では相手の杖を破壊させた時点で勝利が認められ、杖がなければ魔法は使えないのでリオンがあの状況からマオに勝利する可能性は極めて低い。だからこそ試合はマオの勝利で間違いないが、話を聞いていたバルトは頭を抱える。


「やっぱりあんたが勝ったのかい。なるほど、道理で……」
「あの……リオンの様子はどうでした?」
「へっ、今頃は負けて落ち込んでるのか?」
「それだけならまだ良かったんだけどね……」
「どういう意味?」


歯切れの悪いバルルにマオ達は不思議に思うと、彼女は手紙をマオに差し出す。差し出された手紙を受け取ったマオは不思議に思うと、書かれている文字を見て驚く。


「……果たし状?」
「おい、何だよこれ……」
「差出人の名前は?」


マオの横からバルトとミイナも覗き込み、恐る恐るマオは差出人を確認してみると、案の定というべきか名前は「リオン」と書かれていた。それを渡したバルルは頭を掻きながら言いにくそうにマオに告げた。


「リオン、君からあんたにそれを渡すように言われたんだよ。どうやらリオン君はあんたに負けた事がよっぽど悔しかったみたいだね」
「はあっ!?あいつ、何を考えてるんだよ!!いくら負けたからって果たし状なんて……ガキか!?」
「先輩、リオン君はまだ子供だからガキで合ってる」


試合に敗北した後に果たし状をマオに送り込んだリオンの行動にバルトは呆れるが、忘れていたがリオンはまだ12才の子供である。マオと同級生で年齢的にはまだ子供と言える。


「悪いけど中身は先に私が確認したよ。決闘の期日は今から一週間後、学校の屋上で行いたいらしい」
「一週間後?」
「ちょっと用事があるみたいで一週間は学校に来れないらしいんだよ。ちなみに次の決闘の時はあんたも装備を整えておくように書いてあったよ」
「つまり、三又の杖を使ってもいいって事ですか?」
「そういう事になるね。はあっ……それにしてもリオン君があんたにここまで固執するとはね。余程、負けた事が気に喰わないのか……それとも別の理由があるのかね」
「たく、あのガキ……決闘だったら俺の方が先だってのに」


リオンがマオに決闘を申し込んだ事にバルトは不満を漏らし、彼はリオンに敗北した事があるので先に自分の方が決闘を申し込みたい気分だった。だが、マオはリオンが自分に決闘を申し込んだ事に戸惑いを隠しきれない。


「どうしてリオンは決闘なんて急に……」
「まあ、ただの負けず嫌いであんたに勝負を申し込んだんじゃないのかもしれないね。もしかしたらだけど、リオン君はあんたに……いや、何でもない」
「……?」


バルルの言葉にマオは疑問を抱くが、決闘を申し込まれた以上はマオはリオンと本当に戦うのかと緊張する。果たし状を送り込んだリオンが学校に来ないのであれば話し合う余地もなく、恐らくだが今日の試合のように無理やりにでも決闘を執り行うつもりだろう。

これ以上にリオンと戦う必要などマオにはなく、そもそもマオとしては自分が成長した事をリオンに認めさせただけで満足だった。しかし、当のリオンはマオに敗れた事で誇りが傷つけられ、もう一度勝負をしなければ気が済まないのかもしれない。
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