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魔法学園編

第256話 炎VS氷

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(あんな事を言ってるけどリオンだって相当に辛いはずだ。それにあの炎を生み出した時、確かにリオンは苦しそうな表情を浮かべていた……きっと、炎を生み出す時が一番魔力を扱うんだ)


リオンが最初に魔剣の刀身に炎を纏った瞬間、マオは彼が苦し気な表情を浮かべていたのを見逃さなかった。リオンにとっても魔剣の能力を解放するのは相当な負担が掛かり、それがリオンを打ち破る好機だとマオは判断した。


「お望み通り、下に降りるよ!!」
「ふんっ……覚悟を決めたか?」
「なっ!?馬鹿!!挑発に乗るな!!」
「危険過ぎる!!」
「「…………」」


マオはリオンの言う通りに地上へ降り立つとそれを見ていたバルトとミイナが騒ぐ。下に降りたところでマオがリオンの炎の魔剣を打ち破れるとは思えず、二人はマオに逃げるように促す。しかし、マリアとバルルはマオの行動を黙って見守る。

仮に空を飛び続けた所でいずれリオンのスラッシュによって墜落していた可能性が高い。それならばマオは一か八かの賭けに出るしかなかった。


「リオン、僕の最高の魔法を喰らえっ!!」
「何だと……!?」
「この一撃、受けられる自信がないなら逃げろ!!」


距離を置いた状態でマオは敢えて挑発を行い、三又の杖を繰り出して三つの氷塊を生成、それらを結合させる事で「氷柱」へと変えた。それを見た他の者たちはマオが氷柱弾《キャノン》を繰り出すつもりだと気付いた。


(氷柱弾でリオン王子の魔剣を打ち破ろうとしているのかい!?そいつは危険過ぎるよ!!)
(でも、あの子の扱う魔法で炎の魔剣を打ち破れる魔法は他にはない……本当に賭けにでたのかしら?)


氷柱弾の攻撃力は中級魔法の領域を超え、上級魔法にも届きそうな威力を誇る事はバルルもマリアも承知している。それでも尚、リオンが所有する炎の魔剣に通じる可能性は低い。


「うおおおっ!!」
「これは……!?」


杖の先端に作り上げた氷柱に風の魔力を纏わせる事で限界まで回転力を高め、それを見たリオンは緊張感を抱く。彼は魔剣を握りしめて刀身に炎を纏い、正面から迎え撃つ準備を行う。


「いいだろう、来い!!お前の全力を見せて見ろ!!」
「やあああっ!!」


互いに準備を整えるとマオは三又の杖を突き出した瞬間、氷柱弾が発射された。これまでマオが造り上げた氷柱弾の中でも最高の大きさを誇り、それに対してリオンは炎の魔剣を振りかざす。


「爆火斬!!」
「うわぁっ!?」
「にゃっ!?」


先ほどよりも凄まじい火力の一撃をリオンは繰り出し、正面から突っ込んできた氷柱弾に叩き込む。あまりの威力に氷柱弾は一瞬にして爆炎に飲み込まれ、完全に蒸発してしまう。

バルトのスライサーすらも打ち破った氷柱弾をリオンは一撃で打ち破り、彼は勝利を確信した。しかし、すぐにリオンは違和感を抱く。それは氷柱弾を放ったはずのマオの姿が消えており、代わりに上空から彼の声が聞こえた。



「――終わりだ!!」
「何だと!?」



何時の間にかマオは氷板に乗り込んでリオンの上空に移動し、彼は三又の杖を構えていた。それを見たリオンは咄嗟に魔剣を構えるが、先の攻撃で魔剣に纏っていた炎が消えている事に気付く。


(しまった!?魔力を使いすぎた……くそっ!!)


氷柱弾を打ち消すためにリオンは想定外の魔力を使用してしまい、その影響で魔剣から炎が消えていた。その間にマオは三又の杖を構えて攻撃の準備を行い、彼に魔法を放つ。


「氷弾《バレット》!!」
「ぐっ……舐めるなぁっ!!」


先ほどの氷柱弾と比べると小ぶりな氷塊を発射させたマオにリオンは怒りを抱き、彼は無理やりに魔剣に炎を纏わせて振り払う。頭部に目掛けて発射された氷弾を蒸発させると、それを見たマオは上空を移動しながら攻撃を続けた。


「氷弾!!氷弾!!」
「ちぃっ!!しつこいぞ!!」


執拗にマオは氷弾を連射してリオンに攻撃を行い、この時に彼は無意識に三又の杖を回転させながら魔法を放つ。まるでガトリングのように連続で氷弾を形成して撃ち続ける。


「まだまだぁっ!!」
「うぐぅっ……い、いい加減にしろ!?」
「これは……」
「……決着が近いわね」


何十発も撃ち込まれる氷弾に対してリオンは炎の魔剣を振り払って防ぐ事しかできず、マオは一定の距離を保ちながら氷弾を打ち続けた。氷弾はマオの扱う魔法の中でも魔力消費量が少なく、即座に発動して撃ち込める魔法だった。

純粋な魔力量ならばリオンはマオの10倍以上を誇るが、マオは魔法学園に通う間に魔力操作の技術を身に付け、その技術力は最早リオンさえも超えていた。彼は少ない魔力で効率的に魔法を扱う術を身に付け、それを生かしてリオンを追い詰めていく。

リオンの魔剣は確かに凄まじい威力を誇るが、その反面に能力を使用する度に確実にリオンの負荷は蓄積していた。マオはそれを見越して敢えて彼に魔剣の能力を使用させ、徐々に追い込んでいく。
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