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12章:王都への旅路、新たな出会い
142.飛行場はとっても未来的でした……古代遺跡ですけど。
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明けて翌朝。
昨日、チケット購入の帰りがてら、市場で必要なものを買い揃え……まあ大体、食料とか、細々した消耗品の類だけど……支度を済ませた私達は、飛行船の乗り場へとやって来た。
飛行場の中は、意外とシンプルな作りだ。
未来的で清潔なデザインのお客が滞在する為のラウンジと、それに繋がるレストルーム、後から増設されたっぽい木の板で作られた軽食屋のブース、搭乗口までを繋ぐ通路に動く床、と、必要最低限のものは揃えられている。
床から直接生えたような金属製の丸テーブルにそれを取り囲むようにしてこれまた床から直接伸びた金属が椅子を形作ったものが十組ほど設えてあり、私達はそれに座っていた。
金属製だけど柔らか曲線で作られた座面は下手な木工細工の椅子より座り心地がよく、そんなところにも古代文明の奥深さを感じる。
驚いたことに、これ全部先史文明の遺産なんだって。
魔法文明の廃れた今では、こんな感じの建物はもう作れないのだそうだ。
まあ、そうだろうね……。こういう細かいところにも手が届いたデザインが登場したのって、前世でも割と近代の事だったし。
私達が今いるラウンジは、無料らしいドリンクサーバーが壁に据付られていて、搭乗のアナウンスを待つ人々が自由に寛いでいる。
壁には大きなスクリーンが掛かっていて、王都のライブ映像か、人々で賑わう噴水のある公園の様子が映ったり、整然として美しい大通りの専門店を映したかと思えば、尖塔を持つ優美な白亜の城……おそらく王城の様子が映されたりしていた。
詩人さんによれば、昔はこの地上は上で問題を起こした人たちの流刑地だったらしいし、もしかしたらこの美しい景色を見せて、犯罪者達の反省を促していたとか?
なんて思うと、ちょっと恐ろしい風景にも見えたりして……。
とはいえ、ドリンクサーバーからお茶を貰ってきてのんびり飲みながら、旅先の風景を眺めていると、何だか以前に行った、飛行場近くのアウトレットモールのフードコートの様子を思い出す。
フードコートの中央のスクリーンにフライトの予定が映し出されてて、買い物の終わった海外からのお客さんとかが、それを見ながらご飯食べたりして時間調整してたんだよね。
そういえばここって、ちょっとフードコートっぽい雰囲気だ。
しかし、軽食屋で売ってるそれは……。
共同の水車小屋で小麦を石臼で挽いて、パン屋さんが朝から必死に焼いたものを皿代わりに、精肉店さんが売ってるモンスター肉を削ぎ切りにして焼いたものに岩塩で味付けし、売っているもので、なんて言うか全力で手作り! な辺り、やっぱり世界が違うなって思う。
日本なら、セントラルキッチンで半調理したものを載せたり温めたりが当たり前だもんね。
朝食代わりにシンプルな味のそれにかぶりつき、時間を潰していると、ふいにアナウンスが響いてきた。
「三番搭乗口に、朝の二番便の出発準備が出来ました。ご利用の方は搭乗口までお進み下さい。繰り返します……」
「どれどれ、わしらの番のようだね」
オババがそう言って重い腰を上げる。ちらりとこちらを見られたので、慌てて残りのパンを口に詰め込み、大急ぎでお茶で流すと私も立ち上がった。
男性二人は、そんな私達をのんびり待っていてくれるので有難い。
周りの人達も、雑談などしながら大荷物を抱えて、ゆっくり連絡通路へと進んでいく。
円筒形の壁は金属製の無機質なものだけど、所々に古代の浮かぶ城の風景だろう綺麗な絵、というよりも写真が飾られていて、それが奇妙な圧迫感を薄れさせてくれている。
壁の上の方に付けられている拡声器からは、美しい女性の声で「朝の二番目の便は、あと一刻後に出発致します。手荷物検査などもございますので、お乗りのお客様は、三番搭乗口までお急ぎ下さい。繰り返します……」 と、どこかで聞いたようなアナウンスが響いていた。まあ、変に凝っててもあれだし、この辺りは万国共通よね。
驚いたのは謎の鉄製の壁や、飛行船を繋ぐ建物の扉が自動で開いたことと、動く床で重い荷物と共に飛行船のお客達が搭乗口までゆっくりと運ばれていくこと。
うん、まあ、昨日から引き続き、古代文明の先進技術ぶりに驚いています。
で。
実は見送りの人とか、観光客は搭乗口の手前まではフリーで入れるらしいんだけど、そこで一悶着があったんだ。
「おいっ! どういう事だ! 何時もなら出発ギリギリでも乗せていたであろうが!」
突然の怒鳴り声に並んだ列の前の方を見れば、
「ホンジツ、ヒルノ、ビン、ザセキ、スベテ、ウマリマシタ。サイシュウ、ビン、ヲ、ゴリヨウ、クダサイ」
「おいっ! 私を誰だと思っている! クソッ、このポンコツがっ」
若い身なりのよい貴族っぽい青年が、腹いせにガンってロボ……じゃない、ゴーレムを蹴るけど、推定貴族の方が足を抱えて片足でピョンピョンしてる。
まあ、鉄製の機械を蹴ったら普通そうなるよね……。
そしてチッと舌打ちした彼は、きっちりと撫で付けた髪を掻き乱しながら飛行船に乗るお客の列の方に寄ってきて……。
「おい、お前のチケットを寄越せ」
私に、絡んで来たのだった。
昨日、チケット購入の帰りがてら、市場で必要なものを買い揃え……まあ大体、食料とか、細々した消耗品の類だけど……支度を済ませた私達は、飛行船の乗り場へとやって来た。
飛行場の中は、意外とシンプルな作りだ。
未来的で清潔なデザインのお客が滞在する為のラウンジと、それに繋がるレストルーム、後から増設されたっぽい木の板で作られた軽食屋のブース、搭乗口までを繋ぐ通路に動く床、と、必要最低限のものは揃えられている。
床から直接生えたような金属製の丸テーブルにそれを取り囲むようにしてこれまた床から直接伸びた金属が椅子を形作ったものが十組ほど設えてあり、私達はそれに座っていた。
金属製だけど柔らか曲線で作られた座面は下手な木工細工の椅子より座り心地がよく、そんなところにも古代文明の奥深さを感じる。
驚いたことに、これ全部先史文明の遺産なんだって。
魔法文明の廃れた今では、こんな感じの建物はもう作れないのだそうだ。
まあ、そうだろうね……。こういう細かいところにも手が届いたデザインが登場したのって、前世でも割と近代の事だったし。
私達が今いるラウンジは、無料らしいドリンクサーバーが壁に据付られていて、搭乗のアナウンスを待つ人々が自由に寛いでいる。
壁には大きなスクリーンが掛かっていて、王都のライブ映像か、人々で賑わう噴水のある公園の様子が映ったり、整然として美しい大通りの専門店を映したかと思えば、尖塔を持つ優美な白亜の城……おそらく王城の様子が映されたりしていた。
詩人さんによれば、昔はこの地上は上で問題を起こした人たちの流刑地だったらしいし、もしかしたらこの美しい景色を見せて、犯罪者達の反省を促していたとか?
なんて思うと、ちょっと恐ろしい風景にも見えたりして……。
とはいえ、ドリンクサーバーからお茶を貰ってきてのんびり飲みながら、旅先の風景を眺めていると、何だか以前に行った、飛行場近くのアウトレットモールのフードコートの様子を思い出す。
フードコートの中央のスクリーンにフライトの予定が映し出されてて、買い物の終わった海外からのお客さんとかが、それを見ながらご飯食べたりして時間調整してたんだよね。
そういえばここって、ちょっとフードコートっぽい雰囲気だ。
しかし、軽食屋で売ってるそれは……。
共同の水車小屋で小麦を石臼で挽いて、パン屋さんが朝から必死に焼いたものを皿代わりに、精肉店さんが売ってるモンスター肉を削ぎ切りにして焼いたものに岩塩で味付けし、売っているもので、なんて言うか全力で手作り! な辺り、やっぱり世界が違うなって思う。
日本なら、セントラルキッチンで半調理したものを載せたり温めたりが当たり前だもんね。
朝食代わりにシンプルな味のそれにかぶりつき、時間を潰していると、ふいにアナウンスが響いてきた。
「三番搭乗口に、朝の二番便の出発準備が出来ました。ご利用の方は搭乗口までお進み下さい。繰り返します……」
「どれどれ、わしらの番のようだね」
オババがそう言って重い腰を上げる。ちらりとこちらを見られたので、慌てて残りのパンを口に詰め込み、大急ぎでお茶で流すと私も立ち上がった。
男性二人は、そんな私達をのんびり待っていてくれるので有難い。
周りの人達も、雑談などしながら大荷物を抱えて、ゆっくり連絡通路へと進んでいく。
円筒形の壁は金属製の無機質なものだけど、所々に古代の浮かぶ城の風景だろう綺麗な絵、というよりも写真が飾られていて、それが奇妙な圧迫感を薄れさせてくれている。
壁の上の方に付けられている拡声器からは、美しい女性の声で「朝の二番目の便は、あと一刻後に出発致します。手荷物検査などもございますので、お乗りのお客様は、三番搭乗口までお急ぎ下さい。繰り返します……」 と、どこかで聞いたようなアナウンスが響いていた。まあ、変に凝っててもあれだし、この辺りは万国共通よね。
驚いたのは謎の鉄製の壁や、飛行船を繋ぐ建物の扉が自動で開いたことと、動く床で重い荷物と共に飛行船のお客達が搭乗口までゆっくりと運ばれていくこと。
うん、まあ、昨日から引き続き、古代文明の先進技術ぶりに驚いています。
で。
実は見送りの人とか、観光客は搭乗口の手前まではフリーで入れるらしいんだけど、そこで一悶着があったんだ。
「おいっ! どういう事だ! 何時もなら出発ギリギリでも乗せていたであろうが!」
突然の怒鳴り声に並んだ列の前の方を見れば、
「ホンジツ、ヒルノ、ビン、ザセキ、スベテ、ウマリマシタ。サイシュウ、ビン、ヲ、ゴリヨウ、クダサイ」
「おいっ! 私を誰だと思っている! クソッ、このポンコツがっ」
若い身なりのよい貴族っぽい青年が、腹いせにガンってロボ……じゃない、ゴーレムを蹴るけど、推定貴族の方が足を抱えて片足でピョンピョンしてる。
まあ、鉄製の機械を蹴ったら普通そうなるよね……。
そしてチッと舌打ちした彼は、きっちりと撫で付けた髪を掻き乱しながら飛行船に乗るお客の列の方に寄ってきて……。
「おい、お前のチケットを寄越せ」
私に、絡んで来たのだった。
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