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case.1 目合い◆2
しおりを挟む女は今しがた繰り出した左足を震わせ、そのまま男に掴まれた。
ブーツの爪先にはナイフの刃が光っている。
「仕込みナイフか。誰だよ身体検査した奴。」
女が徐々に全身を震わせ始めた。
「な···なにを打ったの···」
「···さあな。
ほら、身体がどんな感じになってきてるか言ってみろよ。したら分かるんじゃねぇの?」
「っ····」
男は女の穿く長いブーツを左太腿からジッパーを下げ脱がせ始めた。
ジーーー····
ジッパーを親指と人差し指でつまみながら、わざと中指で太腿からつたい下ろした。
「っふぅ····」
女が甘い息を漏らす。
思わず漏れた自分の声に、女はカアッと顔を赤らめた。
「はっ、すごい即効性。
まあお前用に強めに作ってあるしな。
良かったなあ特別扱いしてもらえて。」
今度は男が反対側の女の足の付け根から太腿へと掌でさすると、女は全身を震わせ背中を反らせた。
「んふぅっ····ぁ····」
手首に掛かる鎖がカシャリと音を立て女の羞恥をさらに掻き立てた。
男の喉元が上下に動くと、大きく息を吸いその香りを嗅ぎとる。
「はぁ···やっぱお前の血の匂いはそそる···」
「っ···」
女の両足のブーツを脱がせると、男はそれを女の後ろの壁際に置いた。
注射器を打たれるまで余裕の振る舞いだった女は、今後ろにいる見えない男の姿に震えが止まらなかった。
そんな不安を余所に、男が後ろから女の両脇から腰までを手で撫で下ろす。
「っんあぁ····」
男は女の反応を愉しむように上下に撫で上げ、少しずつ下へ下へとその手を這わせていく。
「ふぅ···んっ··んんっ···あっ」
そして後ろから女の耳に吐息をかけ囁いた。
「やべ···あの強敵が俺の前で感じてやがる···」
「···っっ···」
その男の手つきがスーツに隠れた女の白い肌を徐々に染め上げていく。
女は悟られまいと必死に身体を縮こませるが、両手首の鎖がそれを許さない。
今度はその手を女の身体の前に持ってくると、胸の周りを円を描くように指で弄ぶ。
女は先程言われた男の言葉に抵抗するように声を押し殺した。
すると今までたどたどしかった手つきが突然荒く女の柔らかい胸を揉みしだいた。
「んんんっあああっっ」
狭い空間に女の声が響くと、男は女の耳に吐息を漏らしながらささめいた。
「これぐらい強い刺激が欲しかったんだろ?」
その手に治まりきらない胸を男が強く掴むと、女が唇を噛み足をきつく閉じる。
「クソッ···スーツが邪魔だな。」
「···っ」
金髪の男が女の前にくると、先程少し下ろしたジッパーを再び下ろし始めた。
ジーーー····
「···なにをっ」
「あ?抵抗したいなら俺を蹴ってみろよ、ほら。」
また蹴りを出せば、先程の二の舞になると女は悔しくも抵抗できない。
ジッパーを下腹部まで下げると中からほんのりピンク色に染まった肌が露になった。
その肌はしっとりと汗ばんでいる。
男が開かれたスーツの両端を掴むと、思い切り左右に大きく開かれた。
「くっ」
女の紅い唇から羞恥と無念の声がこぼれた。
左右に開かれたスーツの中からほんのり色付いた双丘が現れた。
「····ずいぶんと大事にされてるな。傷一つねぇ身体じゃねえか。」
男がまじまじと女の素肌を見ながら呟いた。
「こんないい肌見せつけられちゃ、傷つけてみたくなるよなぁ?」
男が女の喉元に人差し指と中指の二本を置くと、そのままゆっくり下へと這わせていく。
「っっん」
「まず喉に薄皮一枚でナイフを入れて、
固い鎖骨に刃先を突き付け、
白い胸にナイフで円を描き、」
二本の指が更に下へとなぞられていく。
「胃から腹にかけて十字の傷をつけて、」
男の指が下腹部のまだ裂かれていないスーツの中へ進入しようとした。
「ああぁッッ」
女が進入を許すまいと強く足を閉じた。
男が反対の手で腰につけていた短い方のサーベルを取る。
鞘に入れられたそのサーベルをスーツ越しにきつく閉じる女の股の間に無理矢理押し入れた。
「ふはあぁッぁっ···」
「おら、ちゃんと開いとけよ。」
男がわざとらしくサーベルを少し上に持ち上げた。
「んふぅ"っ」
女の足が爪先立ちになるのを確認すると、男は堪らないと言った表情で吐息を漏らす。
はあ
先程流したニ本の指先を女の身体から外すと、唇を噛む女の口に無理矢理ねじ込んだ。
「ん"む"っ」
口腔内をニ本の指でかき回し、舌を捕らえると男が言った。
「お前今、舌噛もうとしたろ?」
「え"あ"っ」
「あ?よく聞こえねーよ。」
男がその舌を指で挟み、股の間のサーベルを前後に動かす。
「おらおら!しっかりしゃべらねぇと分かんねぇだろ?」
「ん"ん"ふ"ん"」
女が声にならない声を漏らす。
男がもう限界という笑みを浮かべると指で挟んだ舌に一気に吸い付いた。
ぢゅぅ
「んぶッ」
男が舌に牙を立てるとその真ん中あたりに小さく噛みついた。
ガリッ
「ッッ"」
甘美な血の香りが一気に放たれる。
男がその舌から流れる血を優しく舐め取っていくと女から甘い声が漏れた。
「ふぁッ」
サーベルは足元に落とされ、男は女の頬に両手を添えると舌を絡ませながら目隠しをゆっくり外していった。
先程までの男の態度から一変した様子に女はその瞳を潤ませていた。
血を舐め取られた舌をようやく解放され、女は息をつく。
「はあ、はあ、」
「····お前、俺に会うためにわざと捕まったろ?」
「っ····」
女は顔を赤らめながらも頭を横に振る。
「····俺はあの時、わざとお前の攻撃を受けたんだよ。」
「····え··」
男は自身の頬に触れその傷を確認する。
「····お前の証が欲しかったから。」
「·····」
お互い敵として闘ううちに、
男は女の気高さに、
女は男の優しさに惹かれていった。
監獄に入れられてから飲まず食わずだった女に男は注射器で栄養剤を打っただけだった。
女は男の手に、指に、舌に、自ら感じていたにすぎなかった。
「この先お前は一生
俺に囚われるんだよ。」
男はこの機を逃しはしなかった。
~case1. Fin~
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