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「俺はお前みたいに、自分の意思がない女は嫌いだ。黒い髪も深紫の瞳も好みではない。髪色と瞳の色はどうしようもないが、性格は変えられるだろう。例えば、学園の妖精姫のリリア・ノックスみたいになれないのか?」
目の前に座るこの美麗な男…ジークハルト・ゼノシス公爵令息はそう言った。
情熱的な赤い髪に、神秘的な濃紺の瞳、すっと通った鼻筋、鍛えられた身体…全体的に見てもかなり整っている。騎士科に通っていて、剣術の腕も高いし明るい性格で、友人も多い。女性からの人気も絶大で、未来の公爵様とあって色んな人に想いを告げられている。先ほど出たリリア・ノックスさんも彼にご執心らしい。
そんな人気者が、私、ヴィオレット・キャンベルの婚約者なのだ。公爵家からの縁談だった故に侯爵家の私には断る事は許されなかった。
泣く泣く受けた縁談だったのに、この言われよう。
まったく損しかしていない。
挙げ句の果てにリリア・ノックスになれとは。
蜂蜜みたいな金髪に、深緑の瞳は見る人を魅了し、妖精姫と呼ばれているほど可憐で、性格も明るく快活だが男性と女性の前では様子がかなり異なる。特にジークハルト様の前ではより可愛く、庇護欲をそそる仕上がりになっているのだ。
…それを理解した上でこの男は、私にあのようになれと言うのだろうか。
いっそリリア・ノックスを婚約者にすればいいのに。
「リリア・ノックスさんみたいに…なれと」
「そうだ。そうしたら俺もお前を好きになれるかもしれない」
結構です。なんなら、今すぐ婚約破棄してリリア・ノックスさんと結びなおしたらいかがですかね?
私の頭の中では、この男を褒める言葉が精製されない。だって、ずっと文句つけてくるし、釣り合わないみたいな感じの言葉を言われたら誰だって嫌になるでしょ。
父に迷惑を掛けないように大人しくしてるけど。
そうだ、私は虎…いや、仔猫を複数匹被っている。
本来の性格はもっと、熊と闘える、喧嘩っ早い、口悪い…など、淑女とは到底言えないレベルだ。ある意味ノックスさんと似ているかもしれない……あ!そうだ!!
ぴんこんぴんこん!!
思いついた!!!いい事閃いちゃった!!
「ジークハルト様、私…ノックスさんみたいに頑張ってみます」
にこり、と微笑みを貼り付けてお淑やかにそう告げた。
ジークハルト様は満面の笑顔で、「そうか!俺は暗い感じが苦手だからな!」と言っていた。
馬鹿め。ノックスさんみたいに頑張るって言ったけど、ノックスさんの媚び媚びな性格になるわけじゃないからね?
ノックスさんみたいに、特定の人の前でだけ性格改変してあげるわ。
そして、この私を未来の公爵夫人にする事に不安を覚えればいい。
その先には婚約破棄!!からの自由!!
「私、あなたに嫌われるようになりますわ」
にーっこり。
「その顔は…ちょっと可愛いな。その調子だ、頑張れよ!」
ジークハルト様はニカッと人好きのする笑顔を私に向けた。
可愛いとかやめろ気持ち悪い。
私はお前に好かれるために頑張るわけじゃない、勘違いするな。
私は将来、領地の端っこでゆったりのんびり過ごすんだ!!近くの森で熊を狩ったり、鹿を狩ったりしながらさ。
いいね!のんびりライフ!!
領地はお兄様に任せてさ!!
「じゃあ、俺はリリア達と約束があるからもう行くわ」
「はい、ジークハルト様ご機嫌よう」
颯爽と去っていくジークハルト様の背中を笑顔で見送りながら、私はこう思う。
婚約者に他の女性と約束があるからって言うのはいかがなものかと。かろうじて、達、が付いてるけどさ。
他の女の子なら喧嘩になるか不貞で慰謝料……そうだ!!
ノックスさんとくっついたらアイツの有責で慰謝料じゃない?お金はあった方がいいもんね!!
応援するわよ、ノックスさん!!是非とも頑張って!!
目の前に座るこの美麗な男…ジークハルト・ゼノシス公爵令息はそう言った。
情熱的な赤い髪に、神秘的な濃紺の瞳、すっと通った鼻筋、鍛えられた身体…全体的に見てもかなり整っている。騎士科に通っていて、剣術の腕も高いし明るい性格で、友人も多い。女性からの人気も絶大で、未来の公爵様とあって色んな人に想いを告げられている。先ほど出たリリア・ノックスさんも彼にご執心らしい。
そんな人気者が、私、ヴィオレット・キャンベルの婚約者なのだ。公爵家からの縁談だった故に侯爵家の私には断る事は許されなかった。
泣く泣く受けた縁談だったのに、この言われよう。
まったく損しかしていない。
挙げ句の果てにリリア・ノックスになれとは。
蜂蜜みたいな金髪に、深緑の瞳は見る人を魅了し、妖精姫と呼ばれているほど可憐で、性格も明るく快活だが男性と女性の前では様子がかなり異なる。特にジークハルト様の前ではより可愛く、庇護欲をそそる仕上がりになっているのだ。
…それを理解した上でこの男は、私にあのようになれと言うのだろうか。
いっそリリア・ノックスを婚約者にすればいいのに。
「リリア・ノックスさんみたいに…なれと」
「そうだ。そうしたら俺もお前を好きになれるかもしれない」
結構です。なんなら、今すぐ婚約破棄してリリア・ノックスさんと結びなおしたらいかがですかね?
私の頭の中では、この男を褒める言葉が精製されない。だって、ずっと文句つけてくるし、釣り合わないみたいな感じの言葉を言われたら誰だって嫌になるでしょ。
父に迷惑を掛けないように大人しくしてるけど。
そうだ、私は虎…いや、仔猫を複数匹被っている。
本来の性格はもっと、熊と闘える、喧嘩っ早い、口悪い…など、淑女とは到底言えないレベルだ。ある意味ノックスさんと似ているかもしれない……あ!そうだ!!
ぴんこんぴんこん!!
思いついた!!!いい事閃いちゃった!!
「ジークハルト様、私…ノックスさんみたいに頑張ってみます」
にこり、と微笑みを貼り付けてお淑やかにそう告げた。
ジークハルト様は満面の笑顔で、「そうか!俺は暗い感じが苦手だからな!」と言っていた。
馬鹿め。ノックスさんみたいに頑張るって言ったけど、ノックスさんの媚び媚びな性格になるわけじゃないからね?
ノックスさんみたいに、特定の人の前でだけ性格改変してあげるわ。
そして、この私を未来の公爵夫人にする事に不安を覚えればいい。
その先には婚約破棄!!からの自由!!
「私、あなたに嫌われるようになりますわ」
にーっこり。
「その顔は…ちょっと可愛いな。その調子だ、頑張れよ!」
ジークハルト様はニカッと人好きのする笑顔を私に向けた。
可愛いとかやめろ気持ち悪い。
私はお前に好かれるために頑張るわけじゃない、勘違いするな。
私は将来、領地の端っこでゆったりのんびり過ごすんだ!!近くの森で熊を狩ったり、鹿を狩ったりしながらさ。
いいね!のんびりライフ!!
領地はお兄様に任せてさ!!
「じゃあ、俺はリリア達と約束があるからもう行くわ」
「はい、ジークハルト様ご機嫌よう」
颯爽と去っていくジークハルト様の背中を笑顔で見送りながら、私はこう思う。
婚約者に他の女性と約束があるからって言うのはいかがなものかと。かろうじて、達、が付いてるけどさ。
他の女の子なら喧嘩になるか不貞で慰謝料……そうだ!!
ノックスさんとくっついたらアイツの有責で慰謝料じゃない?お金はあった方がいいもんね!!
応援するわよ、ノックスさん!!是非とも頑張って!!
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