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生贄姫は、魔王を愛している
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それからと言うもの、リーレンは至れりつくせりの生活を味わった。魔族とほとんど同じ食事をするとわかってからは、毎日毎日、城で食べたものより美味しい食事が出た。服こそ黒いものだったが、布をたっぷり豪奢に使った素晴らしいドレスを毎日着せられた。
「本当に重くないんですか?」
「全く。魔族の体が強いのは、君を膝に乗せるためだったのだろうな」
リーレンの定位置は、王としての職務をこなす魔王の膝の上。魔王はリーレンを常に抱き抱えながら、書類の整理や陳情への対応をしていた。
その働きぶりは、人間の王とも全く遜色がなく。魔族の国も、人間のそれとあまり代わりがなかった。
何より、背後から抱きしめる魔王の温もりは、リーレンを心からほっとさせた。
魔族達との暮らしは、何も憂うものがなく、幸せだった。
ある日、優しい手つきでリーレンの髪をすいていた魔王が、はたと手を止めた。
「どうされましたか?」
リーレンが問うと、彼は髪を一束、リーレンにも見せる。
黄金の髪の中に一筋、黒い糸のような髪が含まれている。
黒い髪は、魔族の証。
「この森が黒いのは、瘴気が濃いからだ。私達魔族は元は人間だったが、瘴気の中で暮らすうちにこのような姿になったと言う。リーレン、君もだ。このままでは、私たちと同じ姿になってしまう」
──だから君は、やはり人間の町に戻った方が良いのではないか。
魔王からの提案はあまりにも衝撃的で、リーレンは我が耳を疑った。
戻りたいはずがなかった。魔族達と共に暮らすうち、リーレンには彼らへの情が生まれていた。魔族の方が、人間よりも遥かに情に厚い。生贄にするためにリーレンを育て、存在を粗雑に扱ってきた人間より、魔族達の方がよほど話が通じた。
何より魔王のことを、リーレンはもう心から慕っていた。無償の愛をリーレンに注ぎ、いつでも優しく守ってくれる。親に愛されなかったリーレンにとって、魔王の愛は心から欲していた、幸せな愛だった。
戻るわけがありません、と言いかけたそのとき。
王の居室の扉が、勢いよく開いた。
人間側から、武装した兵が攻め込んできている──というのだ。
訳もわからず、魔王と護衛の騎士は武装を固め、戦の支度を始めた。それは、王城に初めて流れるぴりついた空気だった。
「君も行くか」
と言った魔王の問いの意味は、わかっていた。人間達が攻め込んできたとすれば、リーレンは人間と接点が持てる。帰るなら今しかない、という訳だ。
「行きます」
リーレンが答えると、魔王は悲しげに顔を歪めた。
二人の会話はそれだけで、行軍は慌ただしく行われた。元々魔族は、人間よりも強靭な肉体を備えている。あっという間に、森の端まで辿り着くのだ。
リーレンは、人間達の元に戻る気などさらさらなかった。むしろ、身勝手に「和解のため」とリーレンを生贄にしたくせに、身勝手にその和解を破ってきた人間に腹を立てていた。
攻め行ってきているのは、父王の兵の筈だ。事情を知り、一言言ってやりたいという怒りの気持ちだった。
敵意のある人間の前に姿を現すことは、恐ろしくはなかった。何があっても、魔族の皆は自分を守ってくれると信じられたからだ。
「何用ですか」
魔の森の内と外で対面した人間の軍勢と、魔族の軍勢。その間に、魔族の女騎士と共に姿を現したリーレンを見て、人間の騎士は色めきたった。
「姫様!」
一歩踏み出てきたのは、顔に何となく見覚えのある騎士だった。
「姫様に、隣国オスダールから婚姻の申し込みが来ております。請けねば、私たちの国に攻め込んで来るというのです。奴らは、姫様が既に魔の森に入ったことをなぜか知っていて──国のために、来てくださらないか。醜い魔族よりも人間との婚姻を望むだろうと、国王からのお達しです」
「は?」
呆れてものも言えないリーレンに、今度は魔族の方から声が飛んできた。
「君の意思に任せると、話をつけてある。戻りたいのならいいんだよ、リーレン」
その甘く優しい声こそ、愛しい魔王のものだった。
「姫様、どうぞお戻りください。刑期が終わったと思って」
刑期、だと?
リーレンは頭がびりびりとした苛立ちでいっぱいになった。
きっと、刑期という言葉は彼らが内々に使っていた言葉なのだろう。昔からの約束で魔族に嫁ぐ、可哀想で忌まわしい娘、リーレン。
人間達と暮らすより、魔族達と暮らす方がずっと良かった。大体、人間のあの顔は何だ。真っ白くて、ぼんやりしていて。魔族を見慣れたリーレンには、異様に見える。醜いのは人間の方じゃないか。
魔王と幸せに暮らしていたリーレンを、またも脅かすのか。苛立ちの次は、怒りだった。オスダールは、武に秀でた強国。娘を魔族に嫁がせたなど恥でしかないからと、どうせ父王は内密にしていたのだ。そこを突かれ、無理な婚姻を要求されたのだろう。
リーレンを嫁として差し出せなければ、国は攻め込まれる。だから帰ってこいという訳だ。
──結局私は、便利な生贄のままなのね。
人間は、自分達のことしか考えていない。リーレンの答えは、決まっていた。
「リーレン。悩む必要はない。私は、お前が幸せならばそれで良いのだ」
リーレンの怒りによる沈黙を、別の意味として受け取ったらしい魔王の、優しい言葉。愛するからこそ自由を与える、魔王の情の深さ。人間よりもよほど、魔族の方が思いやりがある。
リーレンは顔を上げ、今度こそはっきりと宣言した。
「お断りします」
「なっ……さては魔族め、姫様を洗脳したな? やれ! 姫様を奪還するのだ!」
合図によって兵士達は剣を掲げ、攻め込んでくる。さすがのリーレンも、押し寄せる兵の圧に怯んだ。その体が、ひゅっと持ち上がり──抱きすくめられた。
「リーレン。私を選んでくれるのか」
「当たり前です。私はずっと、あなたの腕の中にいたいのです」
ぎゅう、と。息が詰まるほどに抱きすくめられるリーレンの背後で、ガシャッという金属音がした。
「?」
「リーレンは見なくて良い。そうとわかれば、このような者達、さっさと追い返そう。──皆の者! 殺してはならぬぞ、気を失わせ、戦力を削ぐのだ!」
魔族の有する肉体は、人間のそれより強靭だ。本気を出した魔族の前には人間の騎士も太刀打ちできず、気を失った兵達の体があちこちに倒れ伏した。
彼らが戦意を喪失したのを確認してから、魔族達は魔の森に帰る。リーレンは、魔王の腕の中にいた。
「本当に良いのか?」
魔王の赤い瞳が、不安げにリーレンの目を覗き込んでくる。
「良いのです」
答えると、抱きしめる腕の圧が強まる。
このやりとりは、もう十度目にもなる。自分の存在を喜んでくれる魔王の反応が、リーレンには幸せだった。
はらり、と乱れた自分の髪を、リーレンは整える。黄金の髪には二筋、黒い糸のような筋が入っていた。
濃い瘴気に晒されると、体が魔を帯びていく。それは、リーレンも例外ではなく。
「私が魔族の体になっても、魔王様は愛してくださるのでしょうか」
ぽつり、とリーレンが呟くと、魔王の歩みが止まった。違和感を覚えて彼の顔を見る。その顔は、悲痛に歪んでいた。
「当たり前じゃないか。私は君を愛しているんだよ、リーレン」
はらり、と舞い落ちる薄黒の花弁がリーレンの髪に落ちる。
ふわっと吹く風の中に、花の甘い香りが漂う。
黒い唇と、薄桃色の唇が合わさり。リーレンは、花開くように笑った。
「私もです、魔王様」
黒く深い魔の森にも、花開く季節が訪れていた。
*拙作「『命知らず』の騎士様は、鼻の利く『魔女』を放さない」の遥か未来のお話です。宜しければ、そちらもどうぞ。
「本当に重くないんですか?」
「全く。魔族の体が強いのは、君を膝に乗せるためだったのだろうな」
リーレンの定位置は、王としての職務をこなす魔王の膝の上。魔王はリーレンを常に抱き抱えながら、書類の整理や陳情への対応をしていた。
その働きぶりは、人間の王とも全く遜色がなく。魔族の国も、人間のそれとあまり代わりがなかった。
何より、背後から抱きしめる魔王の温もりは、リーレンを心からほっとさせた。
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ある日、優しい手つきでリーレンの髪をすいていた魔王が、はたと手を止めた。
「どうされましたか?」
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黄金の髪の中に一筋、黒い糸のような髪が含まれている。
黒い髪は、魔族の証。
「この森が黒いのは、瘴気が濃いからだ。私達魔族は元は人間だったが、瘴気の中で暮らすうちにこのような姿になったと言う。リーレン、君もだ。このままでは、私たちと同じ姿になってしまう」
──だから君は、やはり人間の町に戻った方が良いのではないか。
魔王からの提案はあまりにも衝撃的で、リーレンは我が耳を疑った。
戻りたいはずがなかった。魔族達と共に暮らすうち、リーレンには彼らへの情が生まれていた。魔族の方が、人間よりも遥かに情に厚い。生贄にするためにリーレンを育て、存在を粗雑に扱ってきた人間より、魔族達の方がよほど話が通じた。
何より魔王のことを、リーレンはもう心から慕っていた。無償の愛をリーレンに注ぎ、いつでも優しく守ってくれる。親に愛されなかったリーレンにとって、魔王の愛は心から欲していた、幸せな愛だった。
戻るわけがありません、と言いかけたそのとき。
王の居室の扉が、勢いよく開いた。
人間側から、武装した兵が攻め込んできている──というのだ。
訳もわからず、魔王と護衛の騎士は武装を固め、戦の支度を始めた。それは、王城に初めて流れるぴりついた空気だった。
「君も行くか」
と言った魔王の問いの意味は、わかっていた。人間達が攻め込んできたとすれば、リーレンは人間と接点が持てる。帰るなら今しかない、という訳だ。
「行きます」
リーレンが答えると、魔王は悲しげに顔を歪めた。
二人の会話はそれだけで、行軍は慌ただしく行われた。元々魔族は、人間よりも強靭な肉体を備えている。あっという間に、森の端まで辿り着くのだ。
リーレンは、人間達の元に戻る気などさらさらなかった。むしろ、身勝手に「和解のため」とリーレンを生贄にしたくせに、身勝手にその和解を破ってきた人間に腹を立てていた。
攻め行ってきているのは、父王の兵の筈だ。事情を知り、一言言ってやりたいという怒りの気持ちだった。
敵意のある人間の前に姿を現すことは、恐ろしくはなかった。何があっても、魔族の皆は自分を守ってくれると信じられたからだ。
「何用ですか」
魔の森の内と外で対面した人間の軍勢と、魔族の軍勢。その間に、魔族の女騎士と共に姿を現したリーレンを見て、人間の騎士は色めきたった。
「姫様!」
一歩踏み出てきたのは、顔に何となく見覚えのある騎士だった。
「姫様に、隣国オスダールから婚姻の申し込みが来ております。請けねば、私たちの国に攻め込んで来るというのです。奴らは、姫様が既に魔の森に入ったことをなぜか知っていて──国のために、来てくださらないか。醜い魔族よりも人間との婚姻を望むだろうと、国王からのお達しです」
「は?」
呆れてものも言えないリーレンに、今度は魔族の方から声が飛んできた。
「君の意思に任せると、話をつけてある。戻りたいのならいいんだよ、リーレン」
その甘く優しい声こそ、愛しい魔王のものだった。
「姫様、どうぞお戻りください。刑期が終わったと思って」
刑期、だと?
リーレンは頭がびりびりとした苛立ちでいっぱいになった。
きっと、刑期という言葉は彼らが内々に使っていた言葉なのだろう。昔からの約束で魔族に嫁ぐ、可哀想で忌まわしい娘、リーレン。
人間達と暮らすより、魔族達と暮らす方がずっと良かった。大体、人間のあの顔は何だ。真っ白くて、ぼんやりしていて。魔族を見慣れたリーレンには、異様に見える。醜いのは人間の方じゃないか。
魔王と幸せに暮らしていたリーレンを、またも脅かすのか。苛立ちの次は、怒りだった。オスダールは、武に秀でた強国。娘を魔族に嫁がせたなど恥でしかないからと、どうせ父王は内密にしていたのだ。そこを突かれ、無理な婚姻を要求されたのだろう。
リーレンを嫁として差し出せなければ、国は攻め込まれる。だから帰ってこいという訳だ。
──結局私は、便利な生贄のままなのね。
人間は、自分達のことしか考えていない。リーレンの答えは、決まっていた。
「リーレン。悩む必要はない。私は、お前が幸せならばそれで良いのだ」
リーレンの怒りによる沈黙を、別の意味として受け取ったらしい魔王の、優しい言葉。愛するからこそ自由を与える、魔王の情の深さ。人間よりもよほど、魔族の方が思いやりがある。
リーレンは顔を上げ、今度こそはっきりと宣言した。
「お断りします」
「なっ……さては魔族め、姫様を洗脳したな? やれ! 姫様を奪還するのだ!」
合図によって兵士達は剣を掲げ、攻め込んでくる。さすがのリーレンも、押し寄せる兵の圧に怯んだ。その体が、ひゅっと持ち上がり──抱きすくめられた。
「リーレン。私を選んでくれるのか」
「当たり前です。私はずっと、あなたの腕の中にいたいのです」
ぎゅう、と。息が詰まるほどに抱きすくめられるリーレンの背後で、ガシャッという金属音がした。
「?」
「リーレンは見なくて良い。そうとわかれば、このような者達、さっさと追い返そう。──皆の者! 殺してはならぬぞ、気を失わせ、戦力を削ぐのだ!」
魔族の有する肉体は、人間のそれより強靭だ。本気を出した魔族の前には人間の騎士も太刀打ちできず、気を失った兵達の体があちこちに倒れ伏した。
彼らが戦意を喪失したのを確認してから、魔族達は魔の森に帰る。リーレンは、魔王の腕の中にいた。
「本当に良いのか?」
魔王の赤い瞳が、不安げにリーレンの目を覗き込んでくる。
「良いのです」
答えると、抱きしめる腕の圧が強まる。
このやりとりは、もう十度目にもなる。自分の存在を喜んでくれる魔王の反応が、リーレンには幸せだった。
はらり、と乱れた自分の髪を、リーレンは整える。黄金の髪には二筋、黒い糸のような筋が入っていた。
濃い瘴気に晒されると、体が魔を帯びていく。それは、リーレンも例外ではなく。
「私が魔族の体になっても、魔王様は愛してくださるのでしょうか」
ぽつり、とリーレンが呟くと、魔王の歩みが止まった。違和感を覚えて彼の顔を見る。その顔は、悲痛に歪んでいた。
「当たり前じゃないか。私は君を愛しているんだよ、リーレン」
はらり、と舞い落ちる薄黒の花弁がリーレンの髪に落ちる。
ふわっと吹く風の中に、花の甘い香りが漂う。
黒い唇と、薄桃色の唇が合わさり。リーレンは、花開くように笑った。
「私もです、魔王様」
黒く深い魔の森にも、花開く季節が訪れていた。
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