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1❀入部
1*入部届け
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退屈な入学式が終わり、教室に入った。
「ッはーー!疲れたぁ!」
前の席には同中の友人がいて、駄弁りながら担任が教室に戻ってくるのを待つ。
「なぁ誠一、部活何入る?」
「んーとそうだな……」
部活………
中学では運動部だったけど、正直新しい事がしてみたい。
でも高校からスポーツは大変だろうし、やっぱり文化部………
「この学校部活動に力を入れてるしなんてったって部活の量が多いからなぁ」
………そう。俺の通っている高校…もとい学園は、部活動に力を入れる強豪校。
この辺りでは珍しい小中高一貫校で、周りとはほぼ小学校から関係がある。
(まぁ高校からも入れるようにはなってるし、同級生でも人数が多いから今回のクラス替えで知らない奴も結構いるな)
とりあえず、クラスに友達がいて良かったけど。
「パンフレット見てみようよ、………あ、…俺調理部とかいいかも」
「茶道部とか華道部もあるぞ、選び放題だな~!」
ーーー
放課後、部活見学も終わった頃。
「ごめん、誠一!俺ちょっとまだ見たい部活あってさ、先に帰っててくれ!」
「あ……おう、分かった」
友人と別々になって、ぼーっとしながら見慣れた正門までの道を歩いていると、
「……ん?」
正門前の桜並木の傍に人影が見えた。
「……!」
………それも、すごく綺麗な桜色の髪の毛。
春の暖かい風が吹いて、舞い散る桜の花弁にその髪色が重なっていた。
(綺麗だな……)
なんて思いながらゆっくり近付くと、
「………あの、すみません!」
……その綺麗な髪の人に声をかけられた。
「……ッひゃい!!?」
突然の事に驚いて声が上擦る。
近くで見るとより一層綺麗だった。
「……あの、僕…音坂遥音っていいます。」
そして、男にしては長い髪だから女の人かと思っていたけど、違った。
(ズボンだ………)
着ていたのは男子制服。
「実は、今署名活動をしてるんですけど………中々人が集まらなくて。人助けだと思って協力してくれませんか?」
……!
「署名活動……?」
「はい…!名前を書くだけでいいので、お願いしたいんですが………」
……えっと、
「その……それってどういう内容?」
いくら相手がめちゃくちゃ可愛い子だとしても、そういうのは怖い。
「あ……えっと、」
ごもった。怪しい。
すると、
「自分が好きでやりたいことが否定される世の中を変えていく、そんな感じです。」
また人が現れた。
「あ……ちょっと律歌、それは俺が」
先にいた男の肩に手を乗せて、可愛く微笑む。
(おぉ……女子だ)
女子制服にさらさらで長いツインテール。髪色は同じ桜色。
華奢だが身長は女子にしては高め。
「可愛い………」
「えっ?!……あ、僕ですか…?」
ボクっ娘かぁ……………
「ッ…ごめん、…えっと、署名活動だっけ……?うん、別にいいよ?」
この可愛い女の子とお近付きになりたいのが本音だった。
「……ほんと?ありがと…!」
男の子の方がほんの少しだけ笑ってくれた。
「…!」
その笑顔にこちらもほんの少しだけ、笑ってしまう。
「じゃあここに名前と学年と住所と電話番号お願い!」
「多いな」
そんな事まで書く必要ある……?
ーーー
翌日。
「先生、部活の届け持ってきました!」
悩んだけど、やっぱり調理部にした。
「……え、東川君?」
「はい?」
「貴方さっき届出出したじゃない」
………え?
「え…??何事??」
「前の時間の休み時間に出しに来たでしょ、『商業研究部』に。」
商業研究部……???
「なんですかそれ……?」
「パソコン部よ。…知らないで提出したの?」
いや、
「そこじゃなくて……その部活に入った事を知らないんです!!!」
恐ろしいことになってしまった………
「何かの間違いですよ、ほら名前が同じ奴2人いるとか………」
「1年1組23番東川誠一、って書いてあるわ」
「Why…??」
………ッ
「お……おかしいですよ!!俺前の休み時間は授業中からずっと寝てましたもん!!!」
「それは別の問題があるわね。……まぁ、何か誤解だとしてもおかしな事に巻き込まれる前に確認した方がいいんじゃないかしら。」
………
「わかりました………」
ーーー
「どうなってるんだ……一体」
ため息をついて席に座った。
「………とうか、浮かない顔だね。」
「…!みつ、……お前はほんとよく見てるな………」
顔を上げるとそこにはクラスメイトの宮名深月が立っていた。
「何か身の覚えのない部活動届けを出されてたんだ……」
「へぇ……それはそれは、」
「大変そうだね」と他人事のように笑う深月。
こいつとは中3からの付き合いだけど、とりあえず小さくて可愛い。
「大変だよ……、どうにかしてよみつえもん」
「時代劇に居そうなあだ名やめてー」
………
ーーー
ようやく放課後になった。
「……ここか」
最上階、空き教室。
パソコン室かと思ったけどそっちは正規パソコン部が使ってるしい、違いが分からない。
「……………よし」
かすかに中に人の気配がする。
意を決して、扉を開けた。
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