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あまみや。

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鳳未来斗

ずっと親友だと思ってる

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親友が壊れてしまったのは、いつからだろう。



あんなに愛おしく感じた笑顔が、怖いと感じるようになったのは……



ーーー




今日も、変わらない日常。



広い綺麗な部屋、大きな窓が1つだけあって、その窓の前で外を眺めていた。




扉からノックがして、反射的に振り向く。




「…………」
「おはよ、未来斗」





親友が………、海斗が、いつもと変わらない笑顔で入ってきた。





「…………おは…よう」
「また外、見てたんだな」





振り向いた時に腹の刺し傷が傷んで、一瞬顔が歪んだ。




「……傷、まだ治らないか」
「う…うん、まだ痛い………」





この傷が何なのか、すぐにわかると思う。




腹以外には特に傷も痕もなくて、何日もこの部屋から出してもらえないという以外は、身体的な拘束も特にはない。



ただ……、ずっと、何ヶ月も俺は、この部屋に閉じ込められている。



ーーー




暴力を振られたわけじゃない、性行為を強いられたわけじゃない。



けど……逆に、何もされずにこうやって甘やかされていることが、一番の恐怖だった。




「好きなものはなんでも買ってやるし、美味しいご飯やお菓子だってあるから。学校なんて行かないで、ずっとこの部屋にいて欲しいんだ。」




自分より小さくて非力な海斗を突き放すなんて、難しい事じゃない。



いざとなればこんなところ、すぐに逃げ出せる。




初めはそんなことを思っていた。






…………けど、段々。






「お願いだから……俺から離れないで」

「俺を1人にしないで……、もう耐えられないんだ………」







俺だけじゃない、弱っていく海斗の苦しそうな笑顔を見る度に、こっちも苦しくなった。




でも……何日もこんなところにいるせいで、段々その笑顔すら恐怖を感じるようになっていた。





「未来斗が俺の初めての親友なんだ。お願いだから、親友じゃないなんて言わないで」





毎日毎日、同じ言葉を聞かされた。







ーーー





こんなに大事にされたのは、正直初めてだった。


割れやすい卵でも扱うように、慎重に丁寧に、壊れないように。



こんなに愛されたのは………初めてだった。







これでいいんじゃないかって、思う時もあった。





でも…………昨日、窓から見えた。






妹と海斗が、海斗の家の門の傍で話している姿。



声は聞こえなかったけど、妹は切羽詰まったような感じで海斗の肩を掴んで、後ろ姿だけの海斗の顔は見えなかった。




きっと……探してくれているんだ。





俺は、本当にずっとここにいてもいいのか、分からなくなった。





ーーー





「っ……く、ひっ…うぅ"…………」





頭の中がぐちゃぐちゃして、泣いてしまうこともよくあった。



その度に海斗が、





「大丈夫、未来斗は何も考えなくていいから。全部俺が、何とかするから。」




そう、余裕がある素振りで言われて、背中をさすってもらって、その度に感情が溢れてまた涙が流れた。




泣き終わったあとは蒸しタオルと冷たいミルクティーを持ってきてくれて、なんとなく、幸せだって思えた。





………………もう、何も考えなくていいんだ。






ーーー





甘やかされて壊されて、元々の自分が分からなくなった。



たまに夢で見るのは、海斗や友達に囲まれて……にこにこと笑っている自分の姿。




どこか懐かしい気がして、けど…………






(今の俺は、笑うどころが……感情が、分からない)







笑えない、怒れない。




涙は勝手に流れても、眉は下がらないし鼻がツンとする感覚すらない。






笑うなんて、もう無理だった。








ーーーーー






「海斗なんか…………もう親友じゃない!!」




そう言ってしまったあの日。





小さな喧嘩で、親友を傷付けた。






「………………………………え………………、なんで、なんで…そんなこと言うんだよ………………」





唖然とした顔で海斗はそう言って、その後に………台所から包丁を、持ってきた。






「え……」
「未来斗は……俺の一番の親友だって、信じてたのに!!!」





押し倒されて、腹を……同じ箇所を何回も刺された。





泣きながら、血まみれになりながら海斗は、







「俺が一番未来斗のこと分かってる……、未来斗の事を一番愛してるのは俺だし、未来斗のこと知ってるのも俺、俺なんだよ……!お願いだから、突き放さないで!!!」






最後らへんになっていくにつれどんどん力がなくなっていき、けどそれと比例して……、俺も、意識がなくなってきた。








目が覚めて、この部屋のベッドにいた。





「未来斗の為なら何でもするから………、だからお願い、お願いだから……俺の事捨てないで……?


俺が一番好きなのは未来斗なんだよ、俺には未来斗がいなきゃ駄目なんだ、未来斗がいないと……何も出来ないし、何も楽しくない。


好き、好きなんだよ、一番の親友だから、初めて、初めて親友だって言って貰えたんだ、こんなに楽しかったの初めてで、全部未来斗のおかげ、


だからもう親友じゃないなんて言わないで……?何でもする、満足するまで尽くすから、俺が、俺だけが、未来斗の傍にいるから、



絶対離れたりしない……今までの未来斗のどんな友達より、親友より、一番に未来斗のことを考えてる、愛してるんだよ、休む暇なんてないくらいずっと、ずっとずっとずっと未来斗の事考えて、愛してる。





ずっと、ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと、






俺だけが好きなんだよ、他の奴らになんて渡さない、お願いだから俺だけを見て」






何時間もそんな事を言われ続けて、だんだん…………







恐怖、哀れ。




そんな感情になって、






(海斗には……俺がいないと駄目だ、駄目なんだ。)









俺自身も、壊れていた。









ーーー





「好きだよ……、愛してる、未来斗」





今日もまた、健気な笑顔で海斗が言った。






「俺も……。ずっと親友だから、俺から離れないで……?」







そして俺も…………小さく、笑った。










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