3 / 18
第一章:アルテイルの扉
【3】冒険者ギルド
しおりを挟む
冒険者というのは基本的にフリーランスだ。
だが個人で仕事を直接受けてしまうと、後になって報酬などで揉める場合が多い。
そのため、特にクランに属さない冒険者はギルドの仲介で依頼を受けるのが普通だ。
俺達は誰かから依頼を受けるわけじゃないが、ギルドは素材の買い取りもやってくれるので、その面でも都合がいい。
仲介料や広告料を利益にしているギルドも人を集めたいらしく、パーティの共用保管庫とか会議室のレンタルとか、そういうサービスもある。
というわけで、俺達が冒険者ギルドに行くのは至極自然な流れだった。
「新しいパーティの申請ですね。ではまず参加される方全員のサインをお願いします」
受付嬢は慣れた様子で紙を差し出した。
二人にそれぞれの紙に自分の名前を書いて出すと、次にパーティの情報を記入する紙を差し出された。
俺はパーティの主目的の欄に天上の塔攻略と書いた。
「……え?」
それを見た受付嬢の表情が、初めて戸惑いに変わった。
「あの、お二人で天上の塔に登るんですか?」
「駄目なのか? 塔に登るのに許可は必要なかったと思ったんだが……」
俺は自分が何か失念しているのかを思って焦った。
もしかすると、今まではパーティの誰かとかクランの誰かが、俺の知らないところで手続きをしていてくれたのかもしれない。
「あ、いえ、特にそういうものは必要ないんですけど……。その、単純に戦力の問題というか……」
受付嬢の視線は、ミレイユが書いた紙のGランクという文字に注がれていた。
「それなら心配は無用だ。冒険者はあくまでも自己責任。それに二人で厳しそうなら後からメンバーを探すつもりでいる」
その時、ギルドの入り口が開いて冒険者の団体が中に入ってきた。
どよめきが起こったので見てみれば、天上の塔から返ってきた『ソウルフレイム』のメンバー達だった。
自他ともに認めるこの街の主役。
彼らは俺を見つけると、少し驚いた顔になった。
「なんだ、誰かと思えばジェイドか」
「ええ、しばらくぶりですね」
「まだ冒険者やってたんだな」
リーダーのガイルは下品に笑った。
ミレイユが少し苛ついたような表情になったが、俺はさり気なく手で彼女を制した。
「酒ばっかり飲んでると聞いて引退したのかと思ったぜ」
「そうなんですよ! 聞いてくださいよガイルさん。ジェイドさん達、この二人で天上の塔に行くって言うんです」
受付嬢は告げ口するような割り込んできた。
ちなみにだが、他人が受けた任務について口外するのは褒められた行為ではない。
……ギルドの信用問題だ。
「はあ? 二人ってお前、その女とか?」
「ああ。悪いか?」
「やめとけ。死にに行くようなもんだ。お前がウチをクビになったのは、そういうのも理由の一つなんだぞ?」
ガイルは呆れるように溜息を吐いた。
「ジェイド。天上の塔の攻略は遊びじゃないんだ。理にかなった判断ができない奴は遅かれ早かれ命を落とす。冷静な判断と行動ができないから、俺はお前のクビに同意したんだ」
無慈悲な言葉だった。
今までの俺なら、心を折られてしまったかもしれない。
しかし前世の知識と古代魔法を思い出した今は違う。
内心で野心の炎を燃やし始めた俺をよそに、ガイルは続けた。
「ジェイド。すぐに死ぬ奴には大きく三つある。わかるか?」
「いや……」
「一つは敵味方の戦力分析を怠る奴、二つ目は自分の感情を優先する奴、そして三つ目は慢心している奴だ。お前はその全て満たしていた上に、改善しようともしなかった。悪いことは言わない、やめておけ」
「……」
俺は慢心しているんだろうか?
だが天上の塔を単独で踏破した前世の知識と古代魔法があれば、十分な気がするのも事実だ。
今の自分の実力があのダンジョンで通用するのかどうか。
俺はそれを確かめる名案を思いついた。
「そこまで言うならガイル、俺と一つ勝負してくれないか?」
だが個人で仕事を直接受けてしまうと、後になって報酬などで揉める場合が多い。
そのため、特にクランに属さない冒険者はギルドの仲介で依頼を受けるのが普通だ。
俺達は誰かから依頼を受けるわけじゃないが、ギルドは素材の買い取りもやってくれるので、その面でも都合がいい。
仲介料や広告料を利益にしているギルドも人を集めたいらしく、パーティの共用保管庫とか会議室のレンタルとか、そういうサービスもある。
というわけで、俺達が冒険者ギルドに行くのは至極自然な流れだった。
「新しいパーティの申請ですね。ではまず参加される方全員のサインをお願いします」
受付嬢は慣れた様子で紙を差し出した。
二人にそれぞれの紙に自分の名前を書いて出すと、次にパーティの情報を記入する紙を差し出された。
俺はパーティの主目的の欄に天上の塔攻略と書いた。
「……え?」
それを見た受付嬢の表情が、初めて戸惑いに変わった。
「あの、お二人で天上の塔に登るんですか?」
「駄目なのか? 塔に登るのに許可は必要なかったと思ったんだが……」
俺は自分が何か失念しているのかを思って焦った。
もしかすると、今まではパーティの誰かとかクランの誰かが、俺の知らないところで手続きをしていてくれたのかもしれない。
「あ、いえ、特にそういうものは必要ないんですけど……。その、単純に戦力の問題というか……」
受付嬢の視線は、ミレイユが書いた紙のGランクという文字に注がれていた。
「それなら心配は無用だ。冒険者はあくまでも自己責任。それに二人で厳しそうなら後からメンバーを探すつもりでいる」
その時、ギルドの入り口が開いて冒険者の団体が中に入ってきた。
どよめきが起こったので見てみれば、天上の塔から返ってきた『ソウルフレイム』のメンバー達だった。
自他ともに認めるこの街の主役。
彼らは俺を見つけると、少し驚いた顔になった。
「なんだ、誰かと思えばジェイドか」
「ええ、しばらくぶりですね」
「まだ冒険者やってたんだな」
リーダーのガイルは下品に笑った。
ミレイユが少し苛ついたような表情になったが、俺はさり気なく手で彼女を制した。
「酒ばっかり飲んでると聞いて引退したのかと思ったぜ」
「そうなんですよ! 聞いてくださいよガイルさん。ジェイドさん達、この二人で天上の塔に行くって言うんです」
受付嬢は告げ口するような割り込んできた。
ちなみにだが、他人が受けた任務について口外するのは褒められた行為ではない。
……ギルドの信用問題だ。
「はあ? 二人ってお前、その女とか?」
「ああ。悪いか?」
「やめとけ。死にに行くようなもんだ。お前がウチをクビになったのは、そういうのも理由の一つなんだぞ?」
ガイルは呆れるように溜息を吐いた。
「ジェイド。天上の塔の攻略は遊びじゃないんだ。理にかなった判断ができない奴は遅かれ早かれ命を落とす。冷静な判断と行動ができないから、俺はお前のクビに同意したんだ」
無慈悲な言葉だった。
今までの俺なら、心を折られてしまったかもしれない。
しかし前世の知識と古代魔法を思い出した今は違う。
内心で野心の炎を燃やし始めた俺をよそに、ガイルは続けた。
「ジェイド。すぐに死ぬ奴には大きく三つある。わかるか?」
「いや……」
「一つは敵味方の戦力分析を怠る奴、二つ目は自分の感情を優先する奴、そして三つ目は慢心している奴だ。お前はその全て満たしていた上に、改善しようともしなかった。悪いことは言わない、やめておけ」
「……」
俺は慢心しているんだろうか?
だが天上の塔を単独で踏破した前世の知識と古代魔法があれば、十分な気がするのも事実だ。
今の自分の実力があのダンジョンで通用するのかどうか。
俺はそれを確かめる名案を思いついた。
「そこまで言うならガイル、俺と一つ勝負してくれないか?」
0
あなたにおすすめの小説
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
義妹がピンク色の髪をしています
ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。
神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>
ラララキヲ
ファンタジー
フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。
それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。
彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。
そしてフライアルド聖国の歴史は動く。
『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……
神「プンスコ(`3´)」
!!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!!
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇ちょっと【恋愛】もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる