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第一章:アルテイルの扉
【4】最強の力
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勝負を申し出た俺を、カイルは戸惑った顔で見つめ返した。
「正気か? まさか決闘形式とか言うんじゃないだろうか? いくらなんでも、お前と命の取り合いをするつもりはないぞ?」
「そこまでは言わないさ。必要もないのに危ない橋を渡るのが冒険者にあるまじき行動なのは俺だってわかってるつもりだ」
俺は自分がいつの間にか敬語を使っていないことに気がついた。
でも、もう後戻りはできない。
「お前との戦いを試金石にしたい。ここで負けるようなら、俺は結局その程度だったってことだ」
「おいおい……。お前がウチをやめてからまだ一週間しか経ってないんだぞ? そんなすぐに強くなれたら誰も苦労してねぇよ。……まあいい。お前にでかすぎる夢見せちまった俺にも責任はある。引導渡してやるよ」
「ああ」
俺達はギルドの外に出た。
二人で少し距離を空けて、正面から視線を交わす。
ガイルが先に剣を抜いた。
「峰で行くが……。それでも痛てぇぞ?」
「これから天上の塔に登ろうっていうんだ、それぐらいは覚悟の上さ」
俺も自分の杖を抜いた。
双方の準備ができたと判断したのか、『ソウルフレイム』の一人が銀貨を一枚取り出して間に立った。
「俺がコインを投げよう。こいつが地面に落ちたら開始だ。……いいな?」
無言で頷く二人。
見物したい奴らも全員出揃った後、銀貨は宙へと投げられた。
チャリン、という音と同時にガイルが飛び出す。
そこに躊躇いはない。
残像が見えるほど、というのは流石に言い過ぎだが、輪郭を捉えるのは困難な速度だ。
この展開は予想していた。
そして俺がどう対応するかも、もう決めてある。
古代魔法。
それが現代の魔法と大きく違うのは、詠唱を必要としない点だ。
俺は自分の身体能力を強化し、ガイルの攻撃を待った。
「くらえ!」
ガイルの剣が俺を狙う。
記憶を取り戻す前の俺だったら、間違いなくここで終わりだ。
だが俺は即座にバックステップで後ろに下がった。
……よし、冷静だ。
誰もいない空間をガイルの剣が斬り、ブン、と風音だけを立てた。
「なにっ?!」
まさか外れるとは思っていなかったのか、ガイルが驚愕の表情を浮かべた。
当然だ。
古代魔法で強化された俺の移動速度は、超一流の戦士よりは速くなっている。
俺はガイルが剣を振り終わったのを確認してから、今度は前進した。
俺を一発で倒すつもりだったガイルは今の攻撃に体重を乗せていたので、次の攻撃までは時間がかかる。
勝つなら今しかない。
一気に懐に潜り込み、掌底を叩き込む。
「がっ?!」
手に懐かしい感触が伝わってきた。
間違いない、直撃だ。
しかしここで一つ誤算が起こった。
ガイルが後方に吹き飛ばなかった。
つまり彼は俺の掌底による衝撃を、全部自分の体で受け止めてしまったことになる。
派手に吹き飛ばされるのに比べると見た目は地味だが、こちらの方が遥かに深刻な現象だ。
俺が懸念した通り、ガイルは一言も発することなくその場に崩れ落ちた。
「え……?」
「嘘だろ……」
「ジェイドの奴、こんなに強かったのか?!」
「凄いよジェイド!」
俺が勝ったことを理解して沸き立つ観客達。
だが俺はそれを無視してしゃがみ込み、ガイルの様子を確認した。
さっきの感触なら間違いなく骨が折れているし、もしかすると内蔵を損傷しているかもしれない。
「すまんガイル、やり過ぎた。お前は剣の腹で戦ってくれたっていうのに」
俺はもう、ガイルを格上の存在として見なくなっていた。
SAランククランのリーダーすらも、今の俺にとっては格下の冒険者に過ぎない。
傷を治すために運ばれていくガイル。
俺はそれを見送りながら、自分の実力を確信した。
この力なら、天上の塔も登っていけるはずだ。
そうだ。
俺はこの力で、天上まで駆け上がってやる――!
「正気か? まさか決闘形式とか言うんじゃないだろうか? いくらなんでも、お前と命の取り合いをするつもりはないぞ?」
「そこまでは言わないさ。必要もないのに危ない橋を渡るのが冒険者にあるまじき行動なのは俺だってわかってるつもりだ」
俺は自分がいつの間にか敬語を使っていないことに気がついた。
でも、もう後戻りはできない。
「お前との戦いを試金石にしたい。ここで負けるようなら、俺は結局その程度だったってことだ」
「おいおい……。お前がウチをやめてからまだ一週間しか経ってないんだぞ? そんなすぐに強くなれたら誰も苦労してねぇよ。……まあいい。お前にでかすぎる夢見せちまった俺にも責任はある。引導渡してやるよ」
「ああ」
俺達はギルドの外に出た。
二人で少し距離を空けて、正面から視線を交わす。
ガイルが先に剣を抜いた。
「峰で行くが……。それでも痛てぇぞ?」
「これから天上の塔に登ろうっていうんだ、それぐらいは覚悟の上さ」
俺も自分の杖を抜いた。
双方の準備ができたと判断したのか、『ソウルフレイム』の一人が銀貨を一枚取り出して間に立った。
「俺がコインを投げよう。こいつが地面に落ちたら開始だ。……いいな?」
無言で頷く二人。
見物したい奴らも全員出揃った後、銀貨は宙へと投げられた。
チャリン、という音と同時にガイルが飛び出す。
そこに躊躇いはない。
残像が見えるほど、というのは流石に言い過ぎだが、輪郭を捉えるのは困難な速度だ。
この展開は予想していた。
そして俺がどう対応するかも、もう決めてある。
古代魔法。
それが現代の魔法と大きく違うのは、詠唱を必要としない点だ。
俺は自分の身体能力を強化し、ガイルの攻撃を待った。
「くらえ!」
ガイルの剣が俺を狙う。
記憶を取り戻す前の俺だったら、間違いなくここで終わりだ。
だが俺は即座にバックステップで後ろに下がった。
……よし、冷静だ。
誰もいない空間をガイルの剣が斬り、ブン、と風音だけを立てた。
「なにっ?!」
まさか外れるとは思っていなかったのか、ガイルが驚愕の表情を浮かべた。
当然だ。
古代魔法で強化された俺の移動速度は、超一流の戦士よりは速くなっている。
俺はガイルが剣を振り終わったのを確認してから、今度は前進した。
俺を一発で倒すつもりだったガイルは今の攻撃に体重を乗せていたので、次の攻撃までは時間がかかる。
勝つなら今しかない。
一気に懐に潜り込み、掌底を叩き込む。
「がっ?!」
手に懐かしい感触が伝わってきた。
間違いない、直撃だ。
しかしここで一つ誤算が起こった。
ガイルが後方に吹き飛ばなかった。
つまり彼は俺の掌底による衝撃を、全部自分の体で受け止めてしまったことになる。
派手に吹き飛ばされるのに比べると見た目は地味だが、こちらの方が遥かに深刻な現象だ。
俺が懸念した通り、ガイルは一言も発することなくその場に崩れ落ちた。
「え……?」
「嘘だろ……」
「ジェイドの奴、こんなに強かったのか?!」
「凄いよジェイド!」
俺が勝ったことを理解して沸き立つ観客達。
だが俺はそれを無視してしゃがみ込み、ガイルの様子を確認した。
さっきの感触なら間違いなく骨が折れているし、もしかすると内蔵を損傷しているかもしれない。
「すまんガイル、やり過ぎた。お前は剣の腹で戦ってくれたっていうのに」
俺はもう、ガイルを格上の存在として見なくなっていた。
SAランククランのリーダーすらも、今の俺にとっては格下の冒険者に過ぎない。
傷を治すために運ばれていくガイル。
俺はそれを見送りながら、自分の実力を確信した。
この力なら、天上の塔も登っていけるはずだ。
そうだ。
俺はこの力で、天上まで駆け上がってやる――!
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