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第四章 試練
25. 愛の力
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幻獣界は真夏のように明るかった。
俺はユニコーンの長の背に乗りながら、流れていく景色を眺めた。宝石でできた花が咲き乱れ、まばゆい光を放っている。木々の枝葉は金色だった。
「どうだ、この宝の山は。人間界に持ち帰れば、汝は一生遊んで暮らせるぞ」
「俺が欲しいのは水晶草だけです」
「無欲だな」
ユニコーンの長が蹄の音を高らかに鳴らした。
乗馬は好きだけれども、このハイスピードについて行くのはなかなか大変である。
金銀財宝に彩られたエリアを過ぎると、見晴らしのいい野原に出た。白亜の城が草地を見守るように建っている。
ユニコーンの長が白亜の城に近づいていくと、どこからともなく薄布をまとった男女が現れた。見目麗しい男女はあろうことか、草の上で交わり始めた。
「人の子よ。混ざりたいか?」
「まさか!」
美女の乳房にむしゃぶりついている骸骨を見つけて、俺はなんとも言えない気持ちになった。
「あの骸骨、元は人間なんでしょう?」
「そうだ。汝と同様に水晶草を求めに来たが、当初の目的を忘れて色に耽ってしまったのだ」
「……一生あのままなんですか」
「本人の欲望が満たされるまではな」
ユニコーンの長が地面を蹴って、跳躍した。
俺はその後も、さまざまな景色を見た。血の池に浸かりながら殺し合いを続ける人々。誰かを罵りながら炎の柱へと変化した人々。まるで人間の業の博覧会のようだった。
「どうだ、幻獣界の眺めは」
「……身が引き締まりますね。あそこに堕ちてはいけない」
「なーに、いい子ぶってるんだ! テメェだって欲があってここに来たんだろう?」
「そうよ。私たちと何が違うというの」
もはや人間の姿をとどめていない、手足の塊が近づいて来た。にゅっと腕が伸びてきて、俺をユニコーンの長の背中から引きずり落とそうとする。俺はさすがに恐怖を覚えた。
落馬したら、この亡者たちと同じように幻獣界に囚われることになる。アレス様と会えなくなる? そんなのは嫌だ!
俺は声を張り上げて、聖歌を歌った。
亡者たちが一斉にうめき出す。
いいぞ。効いている。俺はまるで舞台に立ったかのように、朗々と歌声を響かせた。
「人の子よ。その勇気の源は何なのだ?」
「愛です」
「……迷いなき答えだな。汝の志、しかと受け取った」
ユニコーンの長は亡者を蹴散らすと、草原を駆け抜けた。
前方に蛇行する川が見えてきた。
俺は喜びを爆発させた。
「もうすぐ水晶草が手に入るんですね!」
「そうだな。汝が最後の試練に打ち勝つことができたならば……」
水辺で、ユニコーンの長が立ち止まった。
俺は彼の背中から降りた。幻獣界の地面はふわふわしていて、まるで雲の上にいるかのようだった。
「あの、水晶草はどこですか?」
ユニコーンの長は俺の質問には答えなかった。光の粒が四方から集まってきて、ユニコーンの長の大きな体を包み込む。まぶしさのあまり、俺は目を閉じた。
「フィーラン殿……」
呼びかけられて、俺は目を見開いた。
アレス様がいる。どうして幻獣界に!? 俺の頭の中は疑問符でいっぱいになった。
「あなたに触れたい。あなたと溶け合いたい」
甘いささやきが俺の耳元に注がれた。いつの間にかアレス様は距離を詰めていて、俺の腰を抱いている。
いたずらな指先が俺の臀部を撫でた。
「さあ、服を脱いで。秘密のつぼみを見せてくれませんか? 私たちは夫夫なのだからいいでしょう?」
アレス様が艶かしい微笑みを浮かべる。熱っぽい視線が俺の体に注がれる。
俺は棒立ちになった。
アレス様が俺を求めている? まさか。あれほどまでにセックスを忌避していたのに? ありえない。
これは幻想だ。
俺の欲望がこしらえた、偽物のアレス様だ。だってアレス様はいま、ラット誘発剤の毒にあてられて、意識を失っている。
「ユニコーンの長よ。なかなかお芝居が上手ですね。でも俺は騙されませんよ。あなたは本物のアレス様じゃない。俺のアレス様はね、処女へのこだわりがとんでもなく強いんですよ! 軽々しく誘うような真似は、絶対にしない!」
目の前で光の粒が弾けた。
アレス様の幻影は消えて、代わりにユニコーンの長の大きな体が現れた。ユニコーンの長は金色の角を誇るように、顔を上げた。
「人の子よ、よくぞ欲望に耐えた」
天頂から光が降り注いで、水辺を照らした。俺は目を凝らして、水晶草を探した。
あった!
濃い緑色の草に隠れるようにして、透明な葉っぱが生えている。
「採取してもよろしいですか?」
「ああ。汝が勝ち得たものだ」
俺はその場にしゃがみ込んで、水晶草を摘んだ。
俺はユニコーンの長の背に乗りながら、流れていく景色を眺めた。宝石でできた花が咲き乱れ、まばゆい光を放っている。木々の枝葉は金色だった。
「どうだ、この宝の山は。人間界に持ち帰れば、汝は一生遊んで暮らせるぞ」
「俺が欲しいのは水晶草だけです」
「無欲だな」
ユニコーンの長が蹄の音を高らかに鳴らした。
乗馬は好きだけれども、このハイスピードについて行くのはなかなか大変である。
金銀財宝に彩られたエリアを過ぎると、見晴らしのいい野原に出た。白亜の城が草地を見守るように建っている。
ユニコーンの長が白亜の城に近づいていくと、どこからともなく薄布をまとった男女が現れた。見目麗しい男女はあろうことか、草の上で交わり始めた。
「人の子よ。混ざりたいか?」
「まさか!」
美女の乳房にむしゃぶりついている骸骨を見つけて、俺はなんとも言えない気持ちになった。
「あの骸骨、元は人間なんでしょう?」
「そうだ。汝と同様に水晶草を求めに来たが、当初の目的を忘れて色に耽ってしまったのだ」
「……一生あのままなんですか」
「本人の欲望が満たされるまではな」
ユニコーンの長が地面を蹴って、跳躍した。
俺はその後も、さまざまな景色を見た。血の池に浸かりながら殺し合いを続ける人々。誰かを罵りながら炎の柱へと変化した人々。まるで人間の業の博覧会のようだった。
「どうだ、幻獣界の眺めは」
「……身が引き締まりますね。あそこに堕ちてはいけない」
「なーに、いい子ぶってるんだ! テメェだって欲があってここに来たんだろう?」
「そうよ。私たちと何が違うというの」
もはや人間の姿をとどめていない、手足の塊が近づいて来た。にゅっと腕が伸びてきて、俺をユニコーンの長の背中から引きずり落とそうとする。俺はさすがに恐怖を覚えた。
落馬したら、この亡者たちと同じように幻獣界に囚われることになる。アレス様と会えなくなる? そんなのは嫌だ!
俺は声を張り上げて、聖歌を歌った。
亡者たちが一斉にうめき出す。
いいぞ。効いている。俺はまるで舞台に立ったかのように、朗々と歌声を響かせた。
「人の子よ。その勇気の源は何なのだ?」
「愛です」
「……迷いなき答えだな。汝の志、しかと受け取った」
ユニコーンの長は亡者を蹴散らすと、草原を駆け抜けた。
前方に蛇行する川が見えてきた。
俺は喜びを爆発させた。
「もうすぐ水晶草が手に入るんですね!」
「そうだな。汝が最後の試練に打ち勝つことができたならば……」
水辺で、ユニコーンの長が立ち止まった。
俺は彼の背中から降りた。幻獣界の地面はふわふわしていて、まるで雲の上にいるかのようだった。
「あの、水晶草はどこですか?」
ユニコーンの長は俺の質問には答えなかった。光の粒が四方から集まってきて、ユニコーンの長の大きな体を包み込む。まぶしさのあまり、俺は目を閉じた。
「フィーラン殿……」
呼びかけられて、俺は目を見開いた。
アレス様がいる。どうして幻獣界に!? 俺の頭の中は疑問符でいっぱいになった。
「あなたに触れたい。あなたと溶け合いたい」
甘いささやきが俺の耳元に注がれた。いつの間にかアレス様は距離を詰めていて、俺の腰を抱いている。
いたずらな指先が俺の臀部を撫でた。
「さあ、服を脱いで。秘密のつぼみを見せてくれませんか? 私たちは夫夫なのだからいいでしょう?」
アレス様が艶かしい微笑みを浮かべる。熱っぽい視線が俺の体に注がれる。
俺は棒立ちになった。
アレス様が俺を求めている? まさか。あれほどまでにセックスを忌避していたのに? ありえない。
これは幻想だ。
俺の欲望がこしらえた、偽物のアレス様だ。だってアレス様はいま、ラット誘発剤の毒にあてられて、意識を失っている。
「ユニコーンの長よ。なかなかお芝居が上手ですね。でも俺は騙されませんよ。あなたは本物のアレス様じゃない。俺のアレス様はね、処女へのこだわりがとんでもなく強いんですよ! 軽々しく誘うような真似は、絶対にしない!」
目の前で光の粒が弾けた。
アレス様の幻影は消えて、代わりにユニコーンの長の大きな体が現れた。ユニコーンの長は金色の角を誇るように、顔を上げた。
「人の子よ、よくぞ欲望に耐えた」
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あった!
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