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64魔王軍戦への新たなる旅立ち
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帝国の辺境への馬車に揺られながら、外を見る。とっくに海は見えなくなっており外を誰も見ない。退屈な木々と森の風景。既に1週間も同じ風景なんだ。無理もないよね。
アマルフィーでの出来事はあっという間に終わった。魔族2体を倒すにはあまりにも短い滞在だったが、実際には随分長くいた様に感じる。それだけめまぐるしい日々だったんだ。
時々、すれ違う馬車には負傷した騎士や冒険者が乗っている。負傷の具合はかなり酷いと言える。手や足を欠損している者が多い。…おそらくそれだけ魔王軍との戦いが熾烈なのだろう。
「いよいよ魔王軍との戦いだね。武者震いしそうだ」
「……仕方ないわね。下僕は今夜喜々としてリーゼを襲いに来るだろうという事は予想していたけど、こんなに堂々と告白するとは…。わかったわ、好きなようになさい」
いや、駄目だろ? 好きなようにさせる女の子がどこにいる! ここにいるのか…。
全く、リーゼは僕の武者震いをエッチな方向に変換してしまうから困る。いつもそうなのだ。
「それにしても負傷者が多いね、大きな戦いがあったのかな?」
「そう言えば、ミュラー団長から手紙が来ていたわ。近々に魔王と対峙するかもしれないって、書いてあったわ。魔王軍の雑魚は蹴散らしたようよ」
「それだと、僕らの出番が無くならない?」
みな不思議そうな顔をする。そうだった。この中で一人だけ違う気持ちで魔王を討伐しようとしている者がいる。それが僕だ、僕は魔王を倒した栄誉で糞勇者エルヴィンを糾弾したい。ヤツの行いはそれだけ卑劣だった。そう、僕の幼馴染のフィーネが殺害されてしまった。
「今更だけど、みな怖くない? その…魔王軍との戦いが?」
僕は話を誤魔化す為、別の話をふった。 ふと、みなが怖くないか心配だった点もある。
「ヒルデは十分レベルも上がったし、ユニークスキルも手に入れて、それになによりアルがいるから、大丈夫よ。そもそもヒルデはこれでも勇者なんだから安心して」
「リーゼは下僕のご主人様よ。ご主人様がいれば怖くないわ」
リーゼ、下僕とご主人様のポジションがごちゃごちゃになっているよ。
僕はみなの覚悟を聞いて、緊張はしているけど、怖くはないという考えに安心した。
そうすると、次なる戦地の情報が欲しくなる。そういう事にたけた人物はリーゼだ。僕は迷わずリーゼに戦地の情報を訪ねた。
「ねえリーゼ、戦地はどんな状態なの? 随分と負傷者が多いみたいだけど?」
僕の質問に、長くプラチナブロンドの髪を揺らしながらリーゼが答えてくれた。
「30年…戦い続けて決着がつかないの。勇者だって3年しか軍役につかないわ。死傷率が高くて勇者の才能を持っていても3年位の軍役しか務められないの。他の才能の持ち主は…言う必要はないわよね」
「そ、そんなに激戦なのか? 魔王軍戦って?」
僕は想像以上の戦いのし烈さに身震いした。
「半年前のフランク王国陥落も帝国軍の勇者パーティと騎士団が魔族に敗れた為に魔王軍がフランク王国になだれ込んだの。それ位戦いは熾烈よ。魔王軍戦役の半数は死ぬわ」
「は、半数…」
僕は驚いた。勇者パーティに元々いたから多少は普通の人より知識があるつもりだった。だが、僕が、いや僕達の投入される予定の戦役の帰還率が50%だったなんてショックだ。
……そんなに酷いのか?
僕の顔色を見て、リーゼが更に続けた。
「街道を馬車で帰還していく負傷者…手や足を失くしただけの人達は幸運なのよ…」
リーゼの話によると、魔王軍との戦いは限りなく人間サイドに不利だ。大昔は大体10年で魔王を討伐できていた。だが、今世の魔王はより狡猾で、簡単に討伐できず、30年が経過した。しかも魔王は長く生きれば生きる程強くなる。人類は存亡の危機に瀕していた。
アマルフィーでの出来事はあっという間に終わった。魔族2体を倒すにはあまりにも短い滞在だったが、実際には随分長くいた様に感じる。それだけめまぐるしい日々だったんだ。
時々、すれ違う馬車には負傷した騎士や冒険者が乗っている。負傷の具合はかなり酷いと言える。手や足を欠損している者が多い。…おそらくそれだけ魔王軍との戦いが熾烈なのだろう。
「いよいよ魔王軍との戦いだね。武者震いしそうだ」
「……仕方ないわね。下僕は今夜喜々としてリーゼを襲いに来るだろうという事は予想していたけど、こんなに堂々と告白するとは…。わかったわ、好きなようになさい」
いや、駄目だろ? 好きなようにさせる女の子がどこにいる! ここにいるのか…。
全く、リーゼは僕の武者震いをエッチな方向に変換してしまうから困る。いつもそうなのだ。
「それにしても負傷者が多いね、大きな戦いがあったのかな?」
「そう言えば、ミュラー団長から手紙が来ていたわ。近々に魔王と対峙するかもしれないって、書いてあったわ。魔王軍の雑魚は蹴散らしたようよ」
「それだと、僕らの出番が無くならない?」
みな不思議そうな顔をする。そうだった。この中で一人だけ違う気持ちで魔王を討伐しようとしている者がいる。それが僕だ、僕は魔王を倒した栄誉で糞勇者エルヴィンを糾弾したい。ヤツの行いはそれだけ卑劣だった。そう、僕の幼馴染のフィーネが殺害されてしまった。
「今更だけど、みな怖くない? その…魔王軍との戦いが?」
僕は話を誤魔化す為、別の話をふった。 ふと、みなが怖くないか心配だった点もある。
「ヒルデは十分レベルも上がったし、ユニークスキルも手に入れて、それになによりアルがいるから、大丈夫よ。そもそもヒルデはこれでも勇者なんだから安心して」
「リーゼは下僕のご主人様よ。ご主人様がいれば怖くないわ」
リーゼ、下僕とご主人様のポジションがごちゃごちゃになっているよ。
僕はみなの覚悟を聞いて、緊張はしているけど、怖くはないという考えに安心した。
そうすると、次なる戦地の情報が欲しくなる。そういう事にたけた人物はリーゼだ。僕は迷わずリーゼに戦地の情報を訪ねた。
「ねえリーゼ、戦地はどんな状態なの? 随分と負傷者が多いみたいだけど?」
僕の質問に、長くプラチナブロンドの髪を揺らしながらリーゼが答えてくれた。
「30年…戦い続けて決着がつかないの。勇者だって3年しか軍役につかないわ。死傷率が高くて勇者の才能を持っていても3年位の軍役しか務められないの。他の才能の持ち主は…言う必要はないわよね」
「そ、そんなに激戦なのか? 魔王軍戦って?」
僕は想像以上の戦いのし烈さに身震いした。
「半年前のフランク王国陥落も帝国軍の勇者パーティと騎士団が魔族に敗れた為に魔王軍がフランク王国になだれ込んだの。それ位戦いは熾烈よ。魔王軍戦役の半数は死ぬわ」
「は、半数…」
僕は驚いた。勇者パーティに元々いたから多少は普通の人より知識があるつもりだった。だが、僕が、いや僕達の投入される予定の戦役の帰還率が50%だったなんてショックだ。
……そんなに酷いのか?
僕の顔色を見て、リーゼが更に続けた。
「街道を馬車で帰還していく負傷者…手や足を失くしただけの人達は幸運なのよ…」
リーゼの話によると、魔王軍との戦いは限りなく人間サイドに不利だ。大昔は大体10年で魔王を討伐できていた。だが、今世の魔王はより狡猾で、簡単に討伐できず、30年が経過した。しかも魔王は長く生きれば生きる程強くなる。人類は存亡の危機に瀕していた。
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