上 下
31 / 125
風邪を引いて寝込んでました

5

しおりを挟む
 クラリスは膝の上に置いた箱を開ける。中には、片手で持てるくらいの大きさのガラスのコップが3つ。

「アルベルト様。食欲はございますか? 私、食欲がなくても食べられるかと、ゼリーを作ってきましたの」
「ゼリー?」
「お嫌いでしたか?」
「いや……えっ? クラリスが作ったのか?」
「はい。調理の者が今日は里帰りしていたもので。本当なら、牛乳寒天とかの方が栄養があっていいのですけど……」
「ギュウニュウカンテン?」
「あ、いえ、なんでもございません。ゼリー食べますか?」

 クラリスの手作り!? 
 公爵令嬢が調理場に立ってゼリーを作るなんて聞いたことないけど……嬉しい。

 クラリスは箱からグラスを1つ取り出した。

「りんごで作りましたの。アルベルト様どうぞ。ナクサスも良かったら……」
「クラリス様、この私めにもいただけるなんて、ありがたい事です」
「大袈裟だわ、ナクサス」

 クラリスは楽しそうにクスクス笑った。
 俺はクラリスから手渡されたゼリーをジッと見つめる。
 
 りんごのコンポートまで入ってる……令嬢がゼリーを作ることだって、本当はあり得ないのに……手間隙かけてくれたんだな……今、忙しいのにさ。

 胸の奥から、キュンと音が聞こえた気がした。
 ホント、もう……そういうとこな……
 
 すぐに食べるのがもったいなくて、手のひらに乗った小さな重みに幸せを噛みしめていると、それに気づいたクラリスがとんでもない事を言い出した。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

背広の話

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:20

蜂蜜色の初恋

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:360

宇宙人の冗談

O.K
エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

きょうのご飯はなぁ〜に?

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

二番煎じな俺を殴りたいんだが、手を貸してくれ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:631pt お気に入り:0

はかい荘のボロたち

青春 / 連載中 24h.ポイント:200pt お気に入り:2

僕は運命から逃れたい

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:56

雪降る季節が似合う人

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

不撓不屈

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:2,385pt お気に入り:1

そう それはあなたとの記憶

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

処理中です...