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内定 ―ナイテイ―
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僕は胸に手を当て、ざわめく気持ちを落ち着かせる。
「わかった。他には?」
「特に今のところ大きな動きはない様ですが」
「そう。ありがとう。何かあったら、すぐに報告して。下がっていいよ」
「では、失礼いたします」
ルークは礼儀正しく一礼して退室した。
1人になった僕は冷めてしまった紅茶に口をつけ、乾いた喉を少し潤す。溜息を小さくつきながら、背もたれに寄りかかった。
他家の今日の出来事を把握しているルークの情報網には頭が下がる。
落馬したクラリスは大丈夫なのだろか? 無傷との話だったが……明日、様子を見に行ってみよう。
両手を後頭部で組み、僕は思考を巡らせた。
僕の想い人、クラリス・アルフォント公爵令嬢。
ブラウンの長い髪に澄んだブルーの瞳のいたって普通の令嬢。華やかさも麗しさもなく、男達の噂話に美しい令嬢と名があがる事は、まず、ない。
僕はそれでいいと思っている。
彼女の可愛らしさや美しさは、僕だけがわかっていればいいのだから。
しかし、クラリスは魔道士になり、この国の王子であるアルベルトの婚約者になってしまった。
クラリスの魔法が発現したら、婚約者最有力候補にあがる事は予測していた。万が一の為、候補にあがった時の策は講じていたが、まさか候補をすっ飛ばして即内定するなんて。
しかも発現した当日に。
こんな強引なやり方、アルベルトらしくない。
……が。
僕はギリッと奥歯を噛み締めた。
それほど本気だということなのだろう。
アルベルトが王族権限を行使したわけなのだから。
そう、この婚約内定。王家に魔道士の濃い血を残す……は大義名分。本当はアルベルトがクラリスに惚れているから……という厄介極まりない理由なのだ。
「わかった。他には?」
「特に今のところ大きな動きはない様ですが」
「そう。ありがとう。何かあったら、すぐに報告して。下がっていいよ」
「では、失礼いたします」
ルークは礼儀正しく一礼して退室した。
1人になった僕は冷めてしまった紅茶に口をつけ、乾いた喉を少し潤す。溜息を小さくつきながら、背もたれに寄りかかった。
他家の今日の出来事を把握しているルークの情報網には頭が下がる。
落馬したクラリスは大丈夫なのだろか? 無傷との話だったが……明日、様子を見に行ってみよう。
両手を後頭部で組み、僕は思考を巡らせた。
僕の想い人、クラリス・アルフォント公爵令嬢。
ブラウンの長い髪に澄んだブルーの瞳のいたって普通の令嬢。華やかさも麗しさもなく、男達の噂話に美しい令嬢と名があがる事は、まず、ない。
僕はそれでいいと思っている。
彼女の可愛らしさや美しさは、僕だけがわかっていればいいのだから。
しかし、クラリスは魔道士になり、この国の王子であるアルベルトの婚約者になってしまった。
クラリスの魔法が発現したら、婚約者最有力候補にあがる事は予測していた。万が一の為、候補にあがった時の策は講じていたが、まさか候補をすっ飛ばして即内定するなんて。
しかも発現した当日に。
こんな強引なやり方、アルベルトらしくない。
……が。
僕はギリッと奥歯を噛み締めた。
それほど本気だということなのだろう。
アルベルトが王族権限を行使したわけなのだから。
そう、この婚約内定。王家に魔道士の濃い血を残す……は大義名分。本当はアルベルトがクラリスに惚れているから……という厄介極まりない理由なのだ。
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