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見舞 ―ミマイ―

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 僕らは、新たに淹れてもらった紅茶を飲み、ひと息つく。

「焼き上がりましたので、温かいうちにどうぞ」

 クラリスの専属侍女のセリナが、ほんのり温かいスコーンをテーブルの中央へ置いた。

「わぁぁ、スコーン!」
「クラリス様がお好きですから」

 クラリスが喜びの声を上げ、セリナは穏やかに微笑みを浮かべる。

 なるほど……クラリスはスコーンも好きなんだな。

 僕はクラリスの好きなものをまた1つ知る事ができ、嬉しくなった。こんな些細な事でも僕の胸は弾んでしまう。君と出会うまでは知らなかった感情だ。

「セリナ、ありがとう! 美味しいのよ。セリナのスコーン」

 満面の笑みでスコーンを手に取り、クラリスが口を大きく開け、パクリと頬張ほおばる姿を見ては、クスリと笑ってしまう。

 公爵令嬢なのに……ぜんぜんらしくないんだから。

 僕もスコーンを手に取った。クロテッドクリームとベリージャムを塗り、一口食べる。ホロリと口の中で崩れるスコーン。なめらかなクロテッドクリームのコクと甘酸っぱいベリージャムが甘さ控えめなスコーンによく合っていた。

 ああ、たしかに美味うまいかも。うちの菓子職人にも研究させよう。

「ねぇねぇ! 今度、このスコーン作ってもらって、お散歩行きません? もう少ししたら木の葉も赤くなって、きれいだわ」

 クラリスは2個めのスコーンを手にし、クロテッドクリームをたっぷりのせながら、はしゃいだ声で遊びの提案をする。

「うん、楽しみだね」

 僕とミカエルが微笑みを向けると、クラリスは嬉しそうに頷き、満面の笑顔を見せた。

「アルベルト様にも声かけなきゃ」

 クラリスの口からアルベルトの名前が出た途端、僕は少し緊張し、ミカエルからは笑顔が消え、楽しかった空気が一瞬にして凍りついた。
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