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王命 ―オウメイ―
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しおりを挟む「あ……いや、別に……」
「現国王様は情に深いお方と伺っております」
「あ、ああ……」
「国王様はアルベルト様のお気持ちをわかってくださる方」
「う、うん、だからさ……」
「今や、恋愛結婚されてる方も多いです! 王子様だからといって、仕方なく婚約する必要はありませんわ!」
「えっ……仕方なく……」
「そんな、仕方ないなんて諦めないでください。なんでしたら、私が今から婚約内定取消を懇願……」
「ま、待てぇぇ!」
今すぐにでも、国王に謁見を求めに行こうとするクラリスをアルベルトは慌てて止める。
「ま、待ってくれ。とりあえず……とりあえず、クラリス、落ち着こうか」
「あら? 私は落ち着いておりますけど?」
クラリスのにっこりとした笑顔にゔっ……と口ごもるアルベルト。
「アルベルト様! 善は急げ。ですわっ!」
じっとしていられないのか、クラリスはガッツポーズをし、王宮に行く準備を始める。アルベルトは、この状況を打開すべく必死で考えを巡らせていたようだったが、悠長に考える時間も与えてもらえず、大声でクラリスを止めた。
「まて! 今日は父上は忙しい」
「……まぁ、そうですね。さすがに今日の謁見は難しいですよね。私が早急すぎました」
「そ、そうだぞ。急ぎすぎだ」
クラリスの前にどうどうと両手を広げ、とにかく必死に落ち着かせようとアルベルトにしては頑張っている。
「大変、失礼いたしました。では、明日……」
「……へっ!? いや、明日も、明後日も、明々後日も、そのまた次の日も……とにかく、しばらく忙しい!」
「そうですか……そうだわっ! では、本日、国王様にお会いできずとも、側近の方にお伝えすれば……」
ナイスアイデアが浮かびました! と喜び勇んでアルベルトの手をギュッと握り、ブルーの瞳をキラキラさせるクラリス。
静観していた僕は、どうしても笑いがこみ上げてくる。
クラリスがアルベルトの手を握っているのは気に入らないが、今、横から口出ししてしまうと、話がそれて、結果アルベルトに助け船を出しかねないので、とりあえず黙っているが……
ついククッと口からこぼれてしまった。
お前はクラリスの鈍感を舐めすぎだ。
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