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決戦海域!

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…眠ってしまっていたようだ。
なんやかやで久保の乗った二式大艇は、もう間もなくウルシーに着く。
雲の切れ目から…。見えてきた。
我らが新生連合艦隊。
大和がいる。武蔵がいる。
愛宕、摩耶の巡洋艦群。
そして第一機動艦隊の新鋭空母大鳳、旭鳳。
赤城や翔鶴、瑞鶴といった見慣れた面子。
その真ん中に居るのが、一番の新顔、葛城であった。
後程、自分の新たな職場兼住居?となる艦である…。

総旗艦 大和

「司令長官閣下、連合艦隊航空参謀長、久保拓也少将であります!」
「ご苦労様。GF長官、小沢である。何分フネ自体が久々故、宜しく指南お願いする。」
「いえそんな…恐縮です。」
「到着早々済まんが、1600より幕僚達と私の初顔合わせだ、貴官にも臨席願う。」
「はっ!畏まりました!」

そして…一通りの情況説明を、新体制最初の幕僚会議席上で行うこととなる久保。
「新鋭哨戒機東海の投入、海上護衛総隊そのものの増強、それにより各方面の輸送船舶の損耗率は8.10%にまで良化しました。

とは言え、物資全般の補給事情がジリ貧であることには変わりありません。
一時的な資材状況の好転で、海軍の建艦計画も加速し、正規空母だけでも3隻を戦列に加えることができましたが…。
それでも増強された我々の全艦艇が全力で動けるのは来年初めくらいまででしょう。」
幕僚達はどよめく。

そこまで由々しき状態だったのか…。
無論、大型艦が増えればそれだけ油を喰うという単純な理屈は判るが…。
南方資源地帯を押さえればそれで長期戦も戦える、という陸軍の戦前の戦略が既に破綻しかけているという事が痛感された。
まあ、この時期の日本海軍の対潜哨戒能力の限界、という技術的問題もあるのだが。
「そして、この敵の潜水艦による通商破壊に、現在は大西洋で友邦ドイツのUボート対策に追われている小型護衛空母群が加わると、また状況は悪化致します。いくら低速、少数機搭載型でも、アメリカの事ですからその気になれば20~30隻は悠々と投入してくる。そんな状態になりますと…。いざ艦隊決戦を行うにしてもかなり厄介な存在になりますし。
幸運なことに今現在は、アメリカはまず量産した主力正規空母で戦えるパイロットの育成に全力を挙げている状態ですが、この4月を外すと今言った状況になり得るというのが、統合情報部の分析結果です。」
「とにかく決戦を急ぎたいというのは判った。」
第4艦隊司令西村中将(戦艦扶桑基幹)が発言する。
「問題はそれを何処でするかだ。マリアナ周辺で、との意見が大勢を占めているが、待っているだけでは今貴官が言ったように敵さんは態勢が整うのを待ってから十分な余裕を持って来寇してくることになる。
なにがしか、こちらに引き付ける策はあるのか。」
「引き付けません。というより、マリアナでは決戦は行いません。」

!??

久保は壁面の海図の一点を指さした。
「ここです。わが主力をここに向け、敵に決戦をするのです!」
どよめきが上がる。
「馬鹿な!?二匹目のドジョウが云々どころじゃないぞ!」
「敵陸軍航空隊も根こそぎ敵に回すことに!」
「いったい何を考えて…。」

「とにかく!」
新長官小沢治三郎が、よく通る声で皆を鎮める。
「この作戦はお上も含め、東條総理、山本参謀総長も裁可されたものだ。決定事項である以上、諸君におかれてはこの後の久保君の説明通り、粉骨砕身してもらいたい!」

そういわれると、提督や他の参謀陣も頷かざるを得なかった。




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