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雌雄を決せよ
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137: 俊也:16/12/05(月)00:26:35 ID:lkw主
東軍の悪夢は続いていた。
麓に降りた西軍毛利秀元ら2万余の兵力は東軍浅野幸長、池田輝政らの1万余の軍勢と激突した。
桃配山
「後背の毛利勢寄せてきます!!」
「お味方劣勢の模様!!」
「ご、後詰を送られますか!?このままでは後ろからわが陣が・・・・・」
正純の問いに、家康は黙したまま答えない。
何かを覚悟し切った、静かな表情であった。
138: ↓俊也:16/12/05(月)00:28:21 ID:lkw主
「殿!」
大柄な武将が進み出た。
百戦錬磨の忠勇の士、本多平八郎忠勝である。
「今こそ陣を前に進ませ候え!治部少の息の根を止めん!!」
名槍蜻蛉切を握りしめつつ、そう主君に進言する忠勝。
「平八郎の言やよし!」
家康は大きくうなずいた。
この手つかずの旗本3万を後背の抑えに分派したり、丸ごと反転させたりするのは悪手。自軍のパニック状態を助長するだけだ。
今考えるべきは、後背に迫りくる毛利勢を鉄の意思で無視し、ひたすらに本隊を前進させ、黒田福島らの有力部隊と合力し、戦線そのものを修復しつつ一息に笹尾山の三成本陣の撃砕を目指すことである。
それしか、現状で戦の潮目を東軍に引き戻す方策はない。
家康は乗馬し、周囲を旗本が固める。
139: 名無し:16/12/05(月)00:31:45 ID:2e0
家康も腹括ったか
140: ↓俊也:16/12/05(月)00:32:05 ID:lkw主
笹尾山
「内府の本陣に動きあり!わが方へ前進・・・・寄せてきます」
三成の拳に力が入る。
「これは好機ぞ!内府め自ら首を差し出しに来るとは!!者ども励め!!老賊の首を刎ねん!!」
だが・・・・・・・
141: ↓俊也:16/12/05(月)00:33:48 ID:lkw主
「内府御自ら馬を進められておるぞ!うぬら死力を尽くせ!」
「海道一の弓取りに我らの手並みを見せん!!」
黒田、福島ら東軍の猛将たちにとって、徳川家康の存在は格別の軍事的カリスマであった。
その御仁が勇敢にも自らを死地に晒しつつある。
奮い立たぬわけにはいかなかった。
東軍将兵たちは津波のような西軍の攻勢を必死の形相でしのぎ、場所によっては押し返しさえしていた。
彡(゚)(゚)(くっ・・・・さすがは家康。しかし時間の問題や、
毛利隊が浅野池田隊を突破して、徳川本隊に追い付けば・・・・・・・)
142: ↓俊也:16/12/05(月)00:37:48 ID:lkw主
南宮山 吉川広家陣
老獪な政治手腕で毛利本家を支えてきた広家。
しかしこの時ばかりは頭を抱えていた。
なんたることを・・・・・秀元の若造が、暴走しおって・・・・・・・
かれの若い正義感、使命感を甘く見ていたか・・・
・・やはり直接、内府に内応する旨をよくよく当人にも伝えおくべきであったか・・・・・・・・・。
(たれかが何かを吹き込んだのやもしれぬ。一体・・・・・いや、それよりも目の前の状況じゃ)
143: ↓俊也:16/12/05(月)00:39:14 ID:lkw主
これにより西軍が大戦に勝ったところで、わが当主輝元に天下の仕置きをするだけの器量はない。
結局戦乱は収まらず、最悪毛利が滅びる可能性すらある。
そして東軍が勝った場合、我らは取り潰しの危機に見舞われる・・・・・・・。
だからこそ、内府家康公という当代の英傑に天下と毛利家の命運を託すつもりでいたのだが・・・・・・・。
それを回避するためには・・・・・やむをえん!
広家はすさまじい決断を下した。
「山を下るぞ!!」
「はっ・・・・内府の本陣を衝くのでありますか?」
側近の問いに広家は声高らかに応じた。
・・・・・・・・・・!!!!???
144: ↓俊也:16/12/05(月)00:42:47 ID:lkw主
「後方よりお味方・・・・・吉川勢です」
報告を受けた秀元は安堵した。
広家伯父も、参戦してくれたか。これで内府の後背を衝けば戦は決まる。
「安国寺様の手勢と合流の模様。」
「後詰としていてくだされば心強い!!」
145: 名無し:16/12/05(月)00:47:19 ID:NYd
嫌な予感がするで。
146: ↓俊也:16/12/05(月)00:48:31 ID:lkw主
安国寺恵瓊の2千弱の軍勢に、吉川勢3千が100メートル程にまで接近したとき。
鉄砲の一斉射撃が行われた。
吉川勢が、安国寺勢に、である。
!!!!
147: ↓俊也:16/12/05(月)00:49:33 ID:lkw主
「吉川勢が、火縄を・・・・・!」
「まさか!?寝返りか!!??」
秀元は狼狽した。
「広家伯父が・・・・・・裏切りを・・・・・・・・そこまで内府に・・・・・」
その混乱は毛利勢全体に波及した。
後方から徳川勢を脅かしていたはずの彼らが、露骨に動揺し、隊列が乱れ、進撃が鈍った。
149: ↓俊也:16/12/05(月)00:54:20 ID:lkw主
徳川本営
「吉川隊が安国寺隊に・・・・・・」
報告を受け、家康は口元を緩ませた。
(広家め、後日の申し開きの為に暴挙にも近い手を打ったか。苦し紛れではあるが間違ってはおらぬ)
そう、事前の約束を反故にして秀元らが暴走してしまった点に関しては、
自分たちが彼らに直接槍を入れることで落とし前をつける。
広家の毛利家保存のための苦肉の策であった。
彡(゚)(゚)(アカン・・・・・・まさか吉川がそこまでの挙に出るとは・・
・・毛利勢も身内には抗戦できずに萎縮してしまっている)
すでに池田、浅野勢に毛利らは押し返されつつあった。
150: 名無し:16/12/05(月)00:56:28 ID:NYd
アカン(アカン)
151: ↓俊也:16/12/05(月)00:58:27 ID:lkw主
秀元の戦意は急速に萎んだ。もともと戦に出るときはいつも広家の差配に従うだけだった青年である。
西軍優勢の熱気にあてられひとたびは自ら決断をしたように見えても、
最後まで自我を通して毛利家の命運を切り開く覚悟までは出来ていなかった。
この後毛利らの軍勢は、池田、浅野勢に追い立てられるように
(吉川とは互いに本格的な交戦はためらい、奇妙にもつれあうようにしながら)戦場を離脱していくこととなる
そして・・・・・・・
東軍の悪夢は続いていた。
麓に降りた西軍毛利秀元ら2万余の兵力は東軍浅野幸長、池田輝政らの1万余の軍勢と激突した。
桃配山
「後背の毛利勢寄せてきます!!」
「お味方劣勢の模様!!」
「ご、後詰を送られますか!?このままでは後ろからわが陣が・・・・・」
正純の問いに、家康は黙したまま答えない。
何かを覚悟し切った、静かな表情であった。
138: ↓俊也:16/12/05(月)00:28:21 ID:lkw主
「殿!」
大柄な武将が進み出た。
百戦錬磨の忠勇の士、本多平八郎忠勝である。
「今こそ陣を前に進ませ候え!治部少の息の根を止めん!!」
名槍蜻蛉切を握りしめつつ、そう主君に進言する忠勝。
「平八郎の言やよし!」
家康は大きくうなずいた。
この手つかずの旗本3万を後背の抑えに分派したり、丸ごと反転させたりするのは悪手。自軍のパニック状態を助長するだけだ。
今考えるべきは、後背に迫りくる毛利勢を鉄の意思で無視し、ひたすらに本隊を前進させ、黒田福島らの有力部隊と合力し、戦線そのものを修復しつつ一息に笹尾山の三成本陣の撃砕を目指すことである。
それしか、現状で戦の潮目を東軍に引き戻す方策はない。
家康は乗馬し、周囲を旗本が固める。
139: 名無し:16/12/05(月)00:31:45 ID:2e0
家康も腹括ったか
140: ↓俊也:16/12/05(月)00:32:05 ID:lkw主
笹尾山
「内府の本陣に動きあり!わが方へ前進・・・・寄せてきます」
三成の拳に力が入る。
「これは好機ぞ!内府め自ら首を差し出しに来るとは!!者ども励め!!老賊の首を刎ねん!!」
だが・・・・・・・
141: ↓俊也:16/12/05(月)00:33:48 ID:lkw主
「内府御自ら馬を進められておるぞ!うぬら死力を尽くせ!」
「海道一の弓取りに我らの手並みを見せん!!」
黒田、福島ら東軍の猛将たちにとって、徳川家康の存在は格別の軍事的カリスマであった。
その御仁が勇敢にも自らを死地に晒しつつある。
奮い立たぬわけにはいかなかった。
東軍将兵たちは津波のような西軍の攻勢を必死の形相でしのぎ、場所によっては押し返しさえしていた。
彡(゚)(゚)(くっ・・・・さすがは家康。しかし時間の問題や、
毛利隊が浅野池田隊を突破して、徳川本隊に追い付けば・・・・・・・)
142: ↓俊也:16/12/05(月)00:37:48 ID:lkw主
南宮山 吉川広家陣
老獪な政治手腕で毛利本家を支えてきた広家。
しかしこの時ばかりは頭を抱えていた。
なんたることを・・・・・秀元の若造が、暴走しおって・・・・・・・
かれの若い正義感、使命感を甘く見ていたか・・・
・・やはり直接、内府に内応する旨をよくよく当人にも伝えおくべきであったか・・・・・・・・・。
(たれかが何かを吹き込んだのやもしれぬ。一体・・・・・いや、それよりも目の前の状況じゃ)
143: ↓俊也:16/12/05(月)00:39:14 ID:lkw主
これにより西軍が大戦に勝ったところで、わが当主輝元に天下の仕置きをするだけの器量はない。
結局戦乱は収まらず、最悪毛利が滅びる可能性すらある。
そして東軍が勝った場合、我らは取り潰しの危機に見舞われる・・・・・・・。
だからこそ、内府家康公という当代の英傑に天下と毛利家の命運を託すつもりでいたのだが・・・・・・・。
それを回避するためには・・・・・やむをえん!
広家はすさまじい決断を下した。
「山を下るぞ!!」
「はっ・・・・内府の本陣を衝くのでありますか?」
側近の問いに広家は声高らかに応じた。
・・・・・・・・・・!!!!???
144: ↓俊也:16/12/05(月)00:42:47 ID:lkw主
「後方よりお味方・・・・・吉川勢です」
報告を受けた秀元は安堵した。
広家伯父も、参戦してくれたか。これで内府の後背を衝けば戦は決まる。
「安国寺様の手勢と合流の模様。」
「後詰としていてくだされば心強い!!」
145: 名無し:16/12/05(月)00:47:19 ID:NYd
嫌な予感がするで。
146: ↓俊也:16/12/05(月)00:48:31 ID:lkw主
安国寺恵瓊の2千弱の軍勢に、吉川勢3千が100メートル程にまで接近したとき。
鉄砲の一斉射撃が行われた。
吉川勢が、安国寺勢に、である。
!!!!
147: ↓俊也:16/12/05(月)00:49:33 ID:lkw主
「吉川勢が、火縄を・・・・・!」
「まさか!?寝返りか!!??」
秀元は狼狽した。
「広家伯父が・・・・・・裏切りを・・・・・・・・そこまで内府に・・・・・」
その混乱は毛利勢全体に波及した。
後方から徳川勢を脅かしていたはずの彼らが、露骨に動揺し、隊列が乱れ、進撃が鈍った。
149: ↓俊也:16/12/05(月)00:54:20 ID:lkw主
徳川本営
「吉川隊が安国寺隊に・・・・・・」
報告を受け、家康は口元を緩ませた。
(広家め、後日の申し開きの為に暴挙にも近い手を打ったか。苦し紛れではあるが間違ってはおらぬ)
そう、事前の約束を反故にして秀元らが暴走してしまった点に関しては、
自分たちが彼らに直接槍を入れることで落とし前をつける。
広家の毛利家保存のための苦肉の策であった。
彡(゚)(゚)(アカン・・・・・・まさか吉川がそこまでの挙に出るとは・・
・・毛利勢も身内には抗戦できずに萎縮してしまっている)
すでに池田、浅野勢に毛利らは押し返されつつあった。
150: 名無し:16/12/05(月)00:56:28 ID:NYd
アカン(アカン)
151: ↓俊也:16/12/05(月)00:58:27 ID:lkw主
秀元の戦意は急速に萎んだ。もともと戦に出るときはいつも広家の差配に従うだけだった青年である。
西軍優勢の熱気にあてられひとたびは自ら決断をしたように見えても、
最後まで自我を通して毛利家の命運を切り開く覚悟までは出来ていなかった。
この後毛利らの軍勢は、池田、浅野勢に追い立てられるように
(吉川とは互いに本格的な交戦はためらい、奇妙にもつれあうようにしながら)戦場を離脱していくこととなる
そして・・・・・・・
応援ありがとうございます!
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