致死量の愛と泡沫に

藤香いつき

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Chap.4 剣戟の宴

Chap.4 Sec.12

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 セトの“すごいな”と思うところは、なんだかんだ睡眠が打ち勝つところではないだろうか。
 
「………………」
 
 ベッドに転がったな、とは思っていた。
 辛くて倒れたのではなく、自分の意思で枕に頭を預けたようだったので様子を見ていた。
 動かなくなって、しばらく。そろりとベッドに近づいてみれば……眠っている。そういえば昨夜から不眠不休なのでは。
 
 ハウスでもゲーム中は真っ先に眠くなるタイプの彼。
 こんなときに発揮されるなんて幸運というべきか、さすがというべきか……いや、私はあまりひとのことを言えない。

 安眠——とは程遠い険しい顔つきで眠っているセトからゆっくり離れて、大きな窓へと寄った。

 広がる海は暗い色をしている。季節のせいかと思っていたが、ひょっとすると、この緑がかった暗い色彩がの海なのだろうか。
 深い海の色——そう思っていたサクラの眼は、今や私の記憶のうちだけの海なのかも……。
 
——セトは今、独りだろうね?

 サクラの声が重なる。
 ハウスはどうなっているのか——そればかり気にしていたけれど、こちらの状況もよくない。簡単に抜け出せるわけではないらしい。
 私が戻ったところで何もできないなら、せめてセトを戻したいのに……。
 
と聞いたけど、それはいつまで……?)
 
 考える頭には、サクラの声が残っている。
 
——セトを、私の代わりに護ってやってくれないか?
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