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2 学園長先生の手紙
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マザーに急かされ、身を隠す大きめのマントに身を包み、孤児院でひっそり飼っている魔馬に乗り、抜け道を抜け、街を飛び出した。
逃げろという言葉のまま、人目を避け、道を選んで駆けていく。
ただ、信じられなかった。
無事に帰ると約束したバルファルドが死んだ。それも、学園の実習で。
私は幼い頃から接している保護者である学園長先生を、そして学園の先生達を信じている。
先生達はちゃんと、細心の安全対策をしているんだ。だから実習で死者はいなかった。
なのにバルファルドは死んだ。後衛の、前には絶対に出ないはずのバルファルドが。
そしてマザーの逃げろ、という言葉。
何かが裏で動いている。
恐らく高位の貴族だ。だってフランセル公爵家の追及を躱せる家じゃないとおかしいじゃない。
そうじゃなきゃ――――――、
「っ」
一体何があったというの?
本当に、死んでしまったの?
そもそもなんで私は逃げているの?
誰か教えてよ!!
「…………そうだ、手紙」
駆けて駆けて駆けて。深い森の中まで来ていた。
途中で孤児院の魔馬は野に返し、他の色の魔馬を改めてテイムして更に逃げて。状況が一切分からない以上、あの子から足が付く可能性もあったから。
王都はもうずっと遠く。
流石にもう大丈夫だろうと一息吐いた所で、その存在を思い出したのだ。
マザーは詳しいことはこれに、と言っていた。
封蝋は、学園長先生のもの。
なら何かの仕掛けもないだろうと封を開け、中身を取り出す。
きちんと書かれたものと、走り書きのようなインクがまだきちんと乾いていないもの。
まず、走り書きの方から目を通す。
今の状況を知らせるものはこちらだと思ったから。
『 アマリエへ。信じられないと思うが、バルファルド・フランセル君が亡くなった。
状況は不明。報告も今のところ無し。
なら何故分かったのかというと、彼に頼まれて生命探知の魔道具を貸していたからだ。
生きていれば片割れが光り、亡くなれば光が消える。
恐らく彼はこういったことが起こることを予想していたんだろう。
もし可能なら、生徒が帰還した後現地へ行ってみてほしい。君なら何があったのか調べられる。
辛いかもしれないが頼むよ。
君を逃がした理由は別紙を見てほしい。居ない理由は適当に作っておこう。
幸運を祈る 』
断言、されてしまった。
学園長先生が言うなら、本当なんだろう。
バルファルドは、死んだんだ。
しかも本人はその危険に気付いていた。
気付いていて私には何も言わず、果たせない約束だと分かっていながら帰ると約束したの?
一つ、深呼吸をする。
胸の奥から湧き上がってくる怒りとも悲しみともつかない感情を、一時的にやり過ごすため。
次のを、読まないと。
『 アマリエへ。
これを読んでいるということは、君は今学園を離れていることだろう。
何があったのかを説明すると、君がテイマーのマスターランクであることが何者かに漏れた。
どうやら裏で広く拡散されたらしく、面倒な連中が君に目を付けている。
今のところ私とバルファルド君の力で防いでいるが、どうしようもなくなってしまった場合を考え手を打つ。
君はとにかく連絡が来るまで逃げてほしい。身分はいつもので。
幸いなことに今のところそっちは漏れていないようだ。
一体どこから漏れたのだろうね?
怖いもの知らずの無知もいたものだ。
君の無事を祈って。
学園長こと王弟 ディヴィット・エル・エクスタリアより 』
「これ絶対犯人厄介払いされた連中のどれかじゃん」
貴族とか地位のある家に貰われていったの多いし。
そんでもって、あいつら私の事を目の敵にしてるし。
あいつらなら理由があるし、他の連中よりも私の事を知りやすいはずだ。
学園長先生も、そこには気付いているはず。
っていうかそこもだけどそこじゃない。
あいつ、バルファルド。
一体なんなの。
なんで、私を、勝手に守ってんの。いつからよ。
なんでそんな勝手なことすんの。
ねえ。
私のこと、知ってたの?
もしかしてバルファルドが死んだのは――――私のせい?
逃げろという言葉のまま、人目を避け、道を選んで駆けていく。
ただ、信じられなかった。
無事に帰ると約束したバルファルドが死んだ。それも、学園の実習で。
私は幼い頃から接している保護者である学園長先生を、そして学園の先生達を信じている。
先生達はちゃんと、細心の安全対策をしているんだ。だから実習で死者はいなかった。
なのにバルファルドは死んだ。後衛の、前には絶対に出ないはずのバルファルドが。
そしてマザーの逃げろ、という言葉。
何かが裏で動いている。
恐らく高位の貴族だ。だってフランセル公爵家の追及を躱せる家じゃないとおかしいじゃない。
そうじゃなきゃ――――――、
「っ」
一体何があったというの?
本当に、死んでしまったの?
そもそもなんで私は逃げているの?
誰か教えてよ!!
「…………そうだ、手紙」
駆けて駆けて駆けて。深い森の中まで来ていた。
途中で孤児院の魔馬は野に返し、他の色の魔馬を改めてテイムして更に逃げて。状況が一切分からない以上、あの子から足が付く可能性もあったから。
王都はもうずっと遠く。
流石にもう大丈夫だろうと一息吐いた所で、その存在を思い出したのだ。
マザーは詳しいことはこれに、と言っていた。
封蝋は、学園長先生のもの。
なら何かの仕掛けもないだろうと封を開け、中身を取り出す。
きちんと書かれたものと、走り書きのようなインクがまだきちんと乾いていないもの。
まず、走り書きの方から目を通す。
今の状況を知らせるものはこちらだと思ったから。
『 アマリエへ。信じられないと思うが、バルファルド・フランセル君が亡くなった。
状況は不明。報告も今のところ無し。
なら何故分かったのかというと、彼に頼まれて生命探知の魔道具を貸していたからだ。
生きていれば片割れが光り、亡くなれば光が消える。
恐らく彼はこういったことが起こることを予想していたんだろう。
もし可能なら、生徒が帰還した後現地へ行ってみてほしい。君なら何があったのか調べられる。
辛いかもしれないが頼むよ。
君を逃がした理由は別紙を見てほしい。居ない理由は適当に作っておこう。
幸運を祈る 』
断言、されてしまった。
学園長先生が言うなら、本当なんだろう。
バルファルドは、死んだんだ。
しかも本人はその危険に気付いていた。
気付いていて私には何も言わず、果たせない約束だと分かっていながら帰ると約束したの?
一つ、深呼吸をする。
胸の奥から湧き上がってくる怒りとも悲しみともつかない感情を、一時的にやり過ごすため。
次のを、読まないと。
『 アマリエへ。
これを読んでいるということは、君は今学園を離れていることだろう。
何があったのかを説明すると、君がテイマーのマスターランクであることが何者かに漏れた。
どうやら裏で広く拡散されたらしく、面倒な連中が君に目を付けている。
今のところ私とバルファルド君の力で防いでいるが、どうしようもなくなってしまった場合を考え手を打つ。
君はとにかく連絡が来るまで逃げてほしい。身分はいつもので。
幸いなことに今のところそっちは漏れていないようだ。
一体どこから漏れたのだろうね?
怖いもの知らずの無知もいたものだ。
君の無事を祈って。
学園長こと王弟 ディヴィット・エル・エクスタリアより 』
「これ絶対犯人厄介払いされた連中のどれかじゃん」
貴族とか地位のある家に貰われていったの多いし。
そんでもって、あいつら私の事を目の敵にしてるし。
あいつらなら理由があるし、他の連中よりも私の事を知りやすいはずだ。
学園長先生も、そこには気付いているはず。
っていうかそこもだけどそこじゃない。
あいつ、バルファルド。
一体なんなの。
なんで、私を、勝手に守ってんの。いつからよ。
なんでそんな勝手なことすんの。
ねえ。
私のこと、知ってたの?
もしかしてバルファルドが死んだのは――――私のせい?
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