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4 実習先の町で

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 学園関係者と遭わないよう細心注意を払いながら進み、2日後ようやく辿り着いたその町は、どこかピリピリとした空気だった。
 学園の寄宿舎があり、何度も実践実習の場となっている森の中の町、トラッド。
 本来なら狩り場の近さから多くの冒険者が集まる町なんだけど、今は人通りがあまりない。
 どうしたのかと道行く女性に声をかけてみると、

「知らないのかい?ここの森の中で王立学園の生徒が行方不明になったんだよ。そのせいで冒険者達が森に入れなくなっちまって。学園の恨みを買いたくない連中は皆出て行っちまった!どいつもこいつも、この街を見捨てたんだよ!」
 
 怒りで声を荒げさせる女性。
 うんうんと頷いて、お礼を言い少しチップを渡すと、少しすまなそうに、でも怒りを抑えられな様子で去って行った。

 学園の恨みを買いたくない、か。
 分からないでもないけど、冒険者がみんな出ていくって変じゃない?
 それに。

 学園の生徒が行方不明・・・・・・・・・・って、どういうこと?


 
 
「ちょっと。とんでもない話を聞いたんだけど」
「カードを提出ください。はい。…………Bクラスのロッサ・・・・・・・・さんですね。何をお聞きしたいのでしょう?」
「しらばっくれないで。学園とイザコザがあったんでしょ。折角来たのに森に入れないって何よ!」
 
 冒険者ギルド、受付前。
 なんと驚くべきことに、本当に誰一人冒険者が居ないの。
 これって相当おかしいでしょ。
 
「その事なのですが、こちらもよく分からないのです」
「分からない?」
「はい。まず、森で実習をしていた学生の一人が行方不明との通達があった後、捜索が行われました。しかし見つからないうちに一度打ち切りになり、学園の関係者の方がしばらく森を立ち入り禁止にする、と一方的に言ってきたのです。冒険者の方々は反発したのですが……」
「国の決定に逆らうのか、とでも言われた?」
「…………一部、そういった発言があったようです」
「っはー!どこにでもいんのねそういうやつ!いくら学園が関わっても国まで行かないでしょ!ただの脅しよ、お・ど・し!」
「はい、ギルドも、領主様もそう判断しております。しかし……一人のために、面倒事に巻き込まれたくないのでしょう」
「クソかよ。はー……。大損じゃん。出てくわ」
「申し訳ありません。なんでしたら、護衛依頼など如何でしょう?」
「いらないわよ。テキトーに狩りしていくのに邪魔!」
 
 一方的に怒ったような動作演技でギルドを後にする。
 冒険者なんて身勝手なもので、不自然ではない。よくあることだ。

 とりあえず、宿ね。
 情報をまとめないと。

 …………尾行つけてくる奴はいない。か。
 
 一応ギルドは関わってなさそう。同意見だという領主もかな?
 そこはまあ幸いとして……森に入るなって言った学園関係者とやらがめちゃくちゃ怪しい。
 国の決定に逆らうのかって。完璧脅しだし、簡単に口にしていいことじゃあない。学園長先生が王弟殿下だからこそ、尚更に。
 だから絶対に嘘なんだよ。単なる脅し。
 森に何かある。
 それを隠したいんだ。

 行方不明だという生徒。
 つまり――――バルファルドの遺体は、まだ見つかっていない?

 そしてそれが見つかると不味いと思う何者かが居る。
 
 なんとかして森に入らないと。バルファルドの遺体を見つけなきゃ。
 バルファルドを殺した誰か・・・・・・・・・・・・に見つかる前に!
 
 どうしよう、どうしたらいい?
 バレずに森に入るには。入ってからも見つからないようにしないといけない。
 今の私が敵にバレるのは本当に不味い。関わりを言い掛かりだろうと結び付けられてこっちも追われたら動けなくなる。
 早くしなきゃいけないのに、方法が思いつかないよ。
 こういう時はいつも、学園長先生かバルファルドがどうにか考えてくれたから――――、
 

[ し か た な ぃ わ ね ぇ 。 調 べ て ぁ げ る ]

 
「えっ」
 
 部屋の中でふわりふわりと浮いて遊んでいたルージュがそう言うなり、小さな光が集まってきてさぁっと消えた。
 え、何今の。
 全部フェアリーに見えたんだけど。

 え????

 
[ あ ま ぁ ぃ の 、 ほ し ぃ わ ? ]

 
 顔の前に飛んできたルージュがにぃっこりと笑って言う。
 私は、頷くしかできなかった。


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【ロッサ】

 ・アマリエがルージュの幻術で変化した状態で冒険者ギルドに登録した存在しない女性。
 ・Bランクの弓士。魔術も扱える。ことになっている。魔術を使っているのはルージュ。
 ・ルージュと同じ赤い髪に水色の眼で、20代前半くらいの見た目。



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