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14 どうして上手くいかないの?(別視点)
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どこを探してもあの余り物の姿が見えない。
いつもなら教師とか大人達に媚を売る姿が目障りなほど視界に入るのに。
普段見かける場所を見回っても見つからず、知っていそうな教師を捕まえて行方を聞いてみると、とても冷たい目で見下された上に『学園長先生の依頼で外出している』と言われた。
…………あの女に関わる大人はみんなそう。誰も彼も、あの女を贔屓して私達には冷たくする。
悪いのはあの女なのに、私達を悪者にするのよ。
昔は、あの女も私達も同じ孤児だったから。仕方ないのかなと思ったわ。
でも今は私は伯爵家の令嬢で、あの女は変わらず孤児。
なのにどうして何も変わらないのかしら?私の方が上なのに。
本当に気に入らない。どこまでも目障りな女!
「そうか。例の小娘は学園を出ているのか」
「はい、ノルド様」
この人はノルドバード・フランセル様。フランセル公爵家の次男で私、ハンナリーネ・プニカの婚約者。
本音を言うと、私はこの人と結婚したくない。だって見た目が好みじゃないんだもの。
フランセル公爵家の兄弟の中で一番容姿が悪いのよ。それに融通が利かず自分の考えを否定されたり曲げられるのを酷く嫌う質をしている。つまりかなり面倒くさい。
本当に、どうしてこの人が私の婚約者になったのかしら?もっと私に相応しい方が居たのに。
私と同い年で、後ろ盾はないも等しいものの高い能力を持つ四男のバルファルド・フランセル様。
初めて会ったのはノルド様との顔合わせのお茶会でフランセル公爵家を訪れた時。私は一目で彼に心を奪われたわ。母親の血筋が強く出たという美しい容姿に。
すぐにお義父様に婚約者の変更を強請ったわ。お義父様は私に甘いし。
一度は頷いてくれたのよ?だけど。話を聞きつけたお義母様が猛反対したの。既に整い顔合わせも済んでいるのに、伯爵家を潰す気か、と。
お義母様の怒りに、婚約者の変更の話は向こうに申し出る前になかったことにされてしまった。
お義父様は私に甘いけれど、それ以上にお義母様に頭が上がらない。だからいつも肝心なところで役立たず。…………お義母様は私を嫌っているから。義弟も。常日頃から家の恥になるなと冷たいのよ。
だから諦めたの。遠くから眺めるだけにしたの。
――――――それなのに。
またなの。
また私から奪うのね、アマリエ!
孤児院に居た頃に好きになった人も、優しいマザーも、素敵な学園長先生の関心も!
私が手に入れたかったもの、全部全部!
それだけでも腹立たしかったのに!今度はバルファルド様さえ!
折角貶めてやったのに、しぶとい女!どこまでも邪魔で煩わしい!
だから壊して消すことにしたの。
だってあの女、存在する限り私の邪魔をするんだもの。
…………でも全然上手くいかなかった。
バルファルド様が実践実習で居ない隙に傷物にしてから適当に処分しようと計画を立てていたら、どうやってバレたのかノルド様から待ったがかかって。協力する代わりにノルド様の目的も入れると。その所為で、あの女をすぐに処分は出来なくなった。
まああの女が苦しむ分にはいいかと渋々了承し、ノルド様と計画をまとめ、バルファルド様が実践実習へ向かうとともに行動を起こした、のだけど。
あの女、一向に捕まらない。全然一人になる時間がないの。おかしいくらいに。
そうして機を窺ってる間に時間だけが経って、今朝になって実習先で問題が起きたと学園に報告が入ったらしい。バルファルド様が行方不明、とも。
ノルド様は顔色一つ変えなかった。
計画通りだ、と。元からバルファルド様にはここで死んでもらう予定だった、と。
正確にはそういうことにしてフランセル公爵家で飼うのだと言う。そして……、偶になら貸してやってもいい、と嗤った。
ゾッとした。
私の気持ちなんて、とうに気付かれていたんだわ。
私を婚約者にされる程度だとずっと侮っていたけれど、それは間違いだったのよ。
この人は私程度で謀れる人じゃなかった。正しく高位貴族の令息なんだから。
…………今更気付いても、どうしようもない。自分の過去の行動は変わらない。
きっとノルド様は私を好いてはいないわ。でも逃げることはできない。――――だって婚約者だから。
その事実に打ちひしがれる私にノルド様はあの女を探すように命令し、逆らえるはずもなく探しに出て……その不在を知ったのが、今。
「偶然である可能性は低いな。しばらくは動かずに様子見とする」
「はい、分かりました」
「こうなると思っていたより事情は深いかもしれない。例の小娘について更に探る。お前はくれぐれも何もするな。いいな」
「はい」
高圧的に言うノルド様に深く頭を下げながら、考える。
あの女に深い事情なんてあるわけない。赤ん坊の頃から孤児院に居るんだから。ノルド様の考え過ぎよ。
別にノルド様なんてどうでもいいけど……あの女のことを考えていると思うとなんだか腹が立つ。
本当に、さっさと消えてくれればいいのに!
いつもなら教師とか大人達に媚を売る姿が目障りなほど視界に入るのに。
普段見かける場所を見回っても見つからず、知っていそうな教師を捕まえて行方を聞いてみると、とても冷たい目で見下された上に『学園長先生の依頼で外出している』と言われた。
…………あの女に関わる大人はみんなそう。誰も彼も、あの女を贔屓して私達には冷たくする。
悪いのはあの女なのに、私達を悪者にするのよ。
昔は、あの女も私達も同じ孤児だったから。仕方ないのかなと思ったわ。
でも今は私は伯爵家の令嬢で、あの女は変わらず孤児。
なのにどうして何も変わらないのかしら?私の方が上なのに。
本当に気に入らない。どこまでも目障りな女!
「そうか。例の小娘は学園を出ているのか」
「はい、ノルド様」
この人はノルドバード・フランセル様。フランセル公爵家の次男で私、ハンナリーネ・プニカの婚約者。
本音を言うと、私はこの人と結婚したくない。だって見た目が好みじゃないんだもの。
フランセル公爵家の兄弟の中で一番容姿が悪いのよ。それに融通が利かず自分の考えを否定されたり曲げられるのを酷く嫌う質をしている。つまりかなり面倒くさい。
本当に、どうしてこの人が私の婚約者になったのかしら?もっと私に相応しい方が居たのに。
私と同い年で、後ろ盾はないも等しいものの高い能力を持つ四男のバルファルド・フランセル様。
初めて会ったのはノルド様との顔合わせのお茶会でフランセル公爵家を訪れた時。私は一目で彼に心を奪われたわ。母親の血筋が強く出たという美しい容姿に。
すぐにお義父様に婚約者の変更を強請ったわ。お義父様は私に甘いし。
一度は頷いてくれたのよ?だけど。話を聞きつけたお義母様が猛反対したの。既に整い顔合わせも済んでいるのに、伯爵家を潰す気か、と。
お義母様の怒りに、婚約者の変更の話は向こうに申し出る前になかったことにされてしまった。
お義父様は私に甘いけれど、それ以上にお義母様に頭が上がらない。だからいつも肝心なところで役立たず。…………お義母様は私を嫌っているから。義弟も。常日頃から家の恥になるなと冷たいのよ。
だから諦めたの。遠くから眺めるだけにしたの。
――――――それなのに。
またなの。
また私から奪うのね、アマリエ!
孤児院に居た頃に好きになった人も、優しいマザーも、素敵な学園長先生の関心も!
私が手に入れたかったもの、全部全部!
それだけでも腹立たしかったのに!今度はバルファルド様さえ!
折角貶めてやったのに、しぶとい女!どこまでも邪魔で煩わしい!
だから壊して消すことにしたの。
だってあの女、存在する限り私の邪魔をするんだもの。
…………でも全然上手くいかなかった。
バルファルド様が実践実習で居ない隙に傷物にしてから適当に処分しようと計画を立てていたら、どうやってバレたのかノルド様から待ったがかかって。協力する代わりにノルド様の目的も入れると。その所為で、あの女をすぐに処分は出来なくなった。
まああの女が苦しむ分にはいいかと渋々了承し、ノルド様と計画をまとめ、バルファルド様が実践実習へ向かうとともに行動を起こした、のだけど。
あの女、一向に捕まらない。全然一人になる時間がないの。おかしいくらいに。
そうして機を窺ってる間に時間だけが経って、今朝になって実習先で問題が起きたと学園に報告が入ったらしい。バルファルド様が行方不明、とも。
ノルド様は顔色一つ変えなかった。
計画通りだ、と。元からバルファルド様にはここで死んでもらう予定だった、と。
正確にはそういうことにしてフランセル公爵家で飼うのだと言う。そして……、偶になら貸してやってもいい、と嗤った。
ゾッとした。
私の気持ちなんて、とうに気付かれていたんだわ。
私を婚約者にされる程度だとずっと侮っていたけれど、それは間違いだったのよ。
この人は私程度で謀れる人じゃなかった。正しく高位貴族の令息なんだから。
…………今更気付いても、どうしようもない。自分の過去の行動は変わらない。
きっとノルド様は私を好いてはいないわ。でも逃げることはできない。――――だって婚約者だから。
その事実に打ちひしがれる私にノルド様はあの女を探すように命令し、逆らえるはずもなく探しに出て……その不在を知ったのが、今。
「偶然である可能性は低いな。しばらくは動かずに様子見とする」
「はい、分かりました」
「こうなると思っていたより事情は深いかもしれない。例の小娘について更に探る。お前はくれぐれも何もするな。いいな」
「はい」
高圧的に言うノルド様に深く頭を下げながら、考える。
あの女に深い事情なんてあるわけない。赤ん坊の頃から孤児院に居るんだから。ノルド様の考え過ぎよ。
別にノルド様なんてどうでもいいけど……あの女のことを考えていると思うとなんだか腹が立つ。
本当に、さっさと消えてくれればいいのに!
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