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噂
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「それで、昨日のことだけど」
「!」
朝餉を長い時間かけて食べ終わった後に久臣さんがそう言ってきた。昨日のことといえば七宝の選定を行ったときの軽い騒動だろう。思わず背筋を伸ばして居住まいを正す。
「くーちゃんのしーちゃん大好き発言が昨日の今日でいろんなところに広まってるみたい」
「へぁっ!?」
俺が遅れてやってきて色々騒ぎを起こしたことを言われるかと思いきや、違うことを言われてしまい変な声が出る。そして一気に顔を赤くしてしまう。
「あ、う、え、えっと……」
「その様子だと、しーちゃんが俺たちの家族になるのは分かったんだけど~」
「~~~~っ!!」
「不都合なら消そうか?」
「!?」
久臣さんに見透かされている。そう思って何も言えずにただはずかしがっていたが、最後の不穏な言葉にぎょっと驚いてしまう。
き、気のせいかな?最後におかしな事言わなかったか……?
「別に良いよ。身の程知らずに分からせてやるだけだから」
「いや、くーちゃんには聞いてない」
「僕の意見は静紀の意見でーす。ねー?」
久臣さんの言葉にすぐ久遠がそう返した。そして俺ににこっと微笑んでくる。美人の微笑みに見惚れながらも、はっとして俺は頷いた。
「はい、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
「ううん。しーちゃんが良いなら良いんだ! ところで、どこら辺に住みたい? 希望の場所に家建てるよ!」
「……え?」
またしても、変な声が漏れる。今、突拍子もない話が出なかっただろうか。
「だめ! 僕が全部やるから口出ししないで!!」
「ええー!! 俺もしーちゃんの新居建てたい~!」
「嫌だ! 干渉しないで!!」
「なんでー!!!」
「あ、あの、家とかはまだ、大丈夫です!!」
久臣さんと久遠がそう言い合いを始めたので慌ててそういった。すると二人はこちらを見てきょとんと首を傾げる。ああ、親子だ。表情がまるで一緒である。
「え、なんで? 家建てるぐらいすぐだよ?」
「そうだよ静紀! 僕と一緒に住みたくないの!?」
「あ、そ、そうじゃなくて、そういうのは全部終わってからというか……」
「はいはいそこまで。二人とも、しーちゃんが困ってるでしょ」
俺がしどろもどろで答えていると沙織さんがぱんぱんっと手を叩いて止めてくれる。助かったと沙織さんの方を見てお礼を言うと彼女はふわりと柔らかく微笑む。
「気にしないで。しーちゃんにはやるべき事があるみたいだから」
沙織さんには、詳しいことを話していない。聡い人だから、色々察しているのに事情を聞くことはなくただ待っていてくれる。
きっとそういう人だから、久臣さんが好きになったんだろうな。
そんなことを思いながら俺はしっかりと頷いた。
「はい」
「じゃあ、待ってあげないとね」
沙織さんが優しく諭すように久遠と久臣さんに言った。すると二人は、残念そうな顔を浮かべながらもはいっと返事をした。
とはいえ、問題が先送りになっただけで、俺はどうやってこの人たちに新居の話をなかったことに出来るのか考えなければいけない。
ま、まあ、後でも良い、かな。今考えることじゃない。
「お話は終わりましたか? じゃあ今度は私がしーちゃんを借りても?」
「あ、はい! 何か用ですか? 晴臣さん」
今まで静かに見守っていた晴臣さんが、手を上げてそう主張した。俺は彼の方を見て聞くと、晴臣さんはにっこり笑顔を浮かべた。
「!」
朝餉を長い時間かけて食べ終わった後に久臣さんがそう言ってきた。昨日のことといえば七宝の選定を行ったときの軽い騒動だろう。思わず背筋を伸ばして居住まいを正す。
「くーちゃんのしーちゃん大好き発言が昨日の今日でいろんなところに広まってるみたい」
「へぁっ!?」
俺が遅れてやってきて色々騒ぎを起こしたことを言われるかと思いきや、違うことを言われてしまい変な声が出る。そして一気に顔を赤くしてしまう。
「あ、う、え、えっと……」
「その様子だと、しーちゃんが俺たちの家族になるのは分かったんだけど~」
「~~~~っ!!」
「不都合なら消そうか?」
「!?」
久臣さんに見透かされている。そう思って何も言えずにただはずかしがっていたが、最後の不穏な言葉にぎょっと驚いてしまう。
き、気のせいかな?最後におかしな事言わなかったか……?
「別に良いよ。身の程知らずに分からせてやるだけだから」
「いや、くーちゃんには聞いてない」
「僕の意見は静紀の意見でーす。ねー?」
久臣さんの言葉にすぐ久遠がそう返した。そして俺ににこっと微笑んでくる。美人の微笑みに見惚れながらも、はっとして俺は頷いた。
「はい、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
「ううん。しーちゃんが良いなら良いんだ! ところで、どこら辺に住みたい? 希望の場所に家建てるよ!」
「……え?」
またしても、変な声が漏れる。今、突拍子もない話が出なかっただろうか。
「だめ! 僕が全部やるから口出ししないで!!」
「ええー!! 俺もしーちゃんの新居建てたい~!」
「嫌だ! 干渉しないで!!」
「なんでー!!!」
「あ、あの、家とかはまだ、大丈夫です!!」
久臣さんと久遠がそう言い合いを始めたので慌ててそういった。すると二人はこちらを見てきょとんと首を傾げる。ああ、親子だ。表情がまるで一緒である。
「え、なんで? 家建てるぐらいすぐだよ?」
「そうだよ静紀! 僕と一緒に住みたくないの!?」
「あ、そ、そうじゃなくて、そういうのは全部終わってからというか……」
「はいはいそこまで。二人とも、しーちゃんが困ってるでしょ」
俺がしどろもどろで答えていると沙織さんがぱんぱんっと手を叩いて止めてくれる。助かったと沙織さんの方を見てお礼を言うと彼女はふわりと柔らかく微笑む。
「気にしないで。しーちゃんにはやるべき事があるみたいだから」
沙織さんには、詳しいことを話していない。聡い人だから、色々察しているのに事情を聞くことはなくただ待っていてくれる。
きっとそういう人だから、久臣さんが好きになったんだろうな。
そんなことを思いながら俺はしっかりと頷いた。
「はい」
「じゃあ、待ってあげないとね」
沙織さんが優しく諭すように久遠と久臣さんに言った。すると二人は、残念そうな顔を浮かべながらもはいっと返事をした。
とはいえ、問題が先送りになっただけで、俺はどうやってこの人たちに新居の話をなかったことに出来るのか考えなければいけない。
ま、まあ、後でも良い、かな。今考えることじゃない。
「お話は終わりましたか? じゃあ今度は私がしーちゃんを借りても?」
「あ、はい! 何か用ですか? 晴臣さん」
今まで静かに見守っていた晴臣さんが、手を上げてそう主張した。俺は彼の方を見て聞くと、晴臣さんはにっこり笑顔を浮かべた。
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