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キャサリン王太子妃殿下は話を続けた。


「ウィルベルト様は、まさかあなたが自分の子供を産んでいたとは思っていなかったのね。
 オリアナを私の兄の子供と結婚させたいと言っても認めてくれなかったわ。
 オリアナがいなくなると、また自分が子供を作らなければならなくなるから。
 だから、あの誕生日パーティーでオリアナが気に入る令息を探そうとしたの。
 将来の王配として婚約させれば、女王になる道筋ができることになるから。」


なるほど。
オリアナ王女を隣国に嫁がせて自分も帰りたいキャサリン妃殿下は側妃を娶って子供を作ってほしいと望み、側妃を必要としないウィルベルトはオリアナを女王にするつもりでこの国で婚約者を探すつもりだった。

あの誕生日パーティーの裏で、そんな戦いがあったのね。


「ウィルベルト様には申し訳ないけれど、オリアナには私が洗脳するかのように隣国の話をしていたの。
 だから、あの子は隣国に嫁ぐ気でいるわ。
 だけど、パーティーでどこかの令息に一目惚れしないか不安だったわ。
 そうなったら、ウィルベルト様の思うつぼだったもの。
 ルドルフのお陰でそれどころではなくなってしまって助かったわ。」


オリアナ王女殿下の、『お兄様』発言には凍りつきましたけどね。


ウィルベルトとキャサリンは、当面は離婚はしないらしい。
形だけでも、ウィルベルトに妻がいることは必要だからという。

国として出席しなければならない場面では、妃として出る。
実は意外と妃として出なければならないことというのは多くはないという。

産前産後や病気療養など、出席が厳しい場面などいくらでもある。

結局はパフォーマンスみたいなものなので、慰問や慈善事業も妃でなくとも歓迎されるのだ。



オリアナ王女は隣国の王太子と婚約を結び、14歳になると隣国の学園に通うそうだ。


「私もね、この国の学園に通うべきだと両親には言われたの。
 嫁ぐ国なんだからって。
 だけど、友人たちと離れたくなかったから、向こうで卒業してからこちらに来たわ。
 でも失敗だった。人見知りの私が王太子妃になってから友人を作るのは難しいわ。
 気安く話せる相手って学生時代に交流を築いておくべきなのね。
 私の失敗をオリアナにはさせないために、留学させるの。」
 

国に帰りたいのは、水が合わないだけではなく人見知りのせいもあるようだった。
嫁いで来て約10年。
他国から嫁ぐというのは、お互いに気遣いも努力も必要だけど、ウィルベルトは無口でキャサリンが人見知りとなると良い方向に進展する気配は見えないままということだ。

歩み寄りのないまま、キャサリンはオリアナを連れて隣国へと逃げようとしていた。
ウィルベルトはそれを留まらせようとしたが、ルドルフの存在が明るみになったことで完全に手を放してしまったことになる。

誰もがそれを歓迎している中で、ディアンヌ一人が異を唱えても仕方がない。

ウィルベルトとキャサリンは夫婦としてうまくやっていけなかったのだ。
ディアンヌのせいでもある気がちょっぴりしなくもないけれど、今更修復可能にはなるまい。


ルドルフの存在が受け入れられ、ディアンヌがウィルベルトの公妾になっていることを正妃であるキャサリンに疎まれていなければそれでいい。


そう思うことにした。

 





 
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