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しおりを挟むギガルドが学園で行動を共にしているのは4人。
伯爵令息が2人に子爵令息が2人。
そのうち、子爵令息の1人は下僕みたいな扱いだった。
早々にこの下僕扱いの子爵令息ザックに協力を求め、彼も逃れられるのなら喜んでと情報を流すことに了承した。
監視している者は詳細な会話までは把握できない。
内通者がいれば、行動の先回りも可能になる。
案の定、ヴィッテを待っていたのに現れなかったことにギガルドは腹を立てていた。
仲間に不満をぶちまけて、会話がどんどん怪しい方向に転がりだす。
「婚約者に従順になるように躾けるべきじゃないか?」
「いや、いっそのこと身代金を取るってのはどうだ?」
「誘拐か?金を貰って帰しても訴えられたら?」
「誘拐犯が俺たちだってわからなきゃいいんじゃないか?」
「仮面でも被るか?」
「なら、ついでに体もいただいたらいいんじゃないの?」
「俺の将来の嫁をみんなでまわすのか?」
「傷物だって婚約破棄して慰謝料も貰えばいいんじゃないか?」
「いいな、それ。身代金と慰謝料、それに泣き叫ぶ女か。最高じゃね?」
「おいザック。身バレしない仮面と女を乗せる馬車を準備しろ。
あとは連れ込む場所か?王都の外れに心当たりがある。
身代金を受け取った後は、女をそこに置き去りにして逃げればいい。」
……殺すという案が出ないだけ、まだそこまで落ちぶれてはいないようだが、いざとなったらわからない。
ザックから流された情報はこうだった。
人に頼んで、ヴィッテにギガルドからの伝言を伝える。
『話したいことがあるから帰りに裏門に必ず来てくれ』
裏門を訪れたヴィッテを薬で眠らせて馬車に乗せる。
馬車は前もって裏門近くに隠しておく。御者はザックの予定。カツラで変装させられる。
ギガルドは怪しまれる恐れがあるので、学園内でしばらく姿を見せておいて後で合流。
王都郊外の家にヴィッテを連れ込み、身代金を持ってくる日時を知らせる。
その間、ヴィッテの体で遊んでおく。
ヴィッテを家に残して、身代金を受け取る時にヴィッテの場所も知らせる。
金を受け取ってから追いかけて来られないように場所を書いた紙は遠く離れた場所に置く。
追いかけて来たら、仲間がその紙を捨てると脅す。
ヴィッテが家に帰った後、誘拐の話を耳にして傷物とは婚約破棄するということで慰謝料を貰う。
……穴だらけのようで、そうでないような、上手くいけば上手くいく計画だった。
まず、ヴィッテが裏門に行くかどうか。
薬で眠らせる人物がヴィッテに顔を見られないかどうか。
隠しておいた馬がおとなしくしているかどうか。
ヴィッテを家に連れ込むところを誰にも気づかれないかどうか。
誘拐捜査で探し回る中、泣き叫ぶ声が外に漏れないかどうか。
追いかけられた時、仲間にどうやって紙を捨てさせるのを知らせるか。
誘拐の話をどこで誰に聞いたのか言えるかどうか。
……これが全部奇跡的に上手くいけば成功したであろう。奇跡的に……アリエナイけど。
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