あなたに最後の贈り物を

しゃーりん

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メルリーは、また、自分が嘲笑されていると感じた。

クスクスクス……

このお茶会に出席するのは、これで五回目。
回を重ねるごとに、ひそひそとメルリーを覗うように見ては笑う夫人が増えていく。

ふふふ……おほほ……プッ……

メルリーは、最初は新参者だから興味を持たれているのかと思っていた。

しかし、そのわりには嘲る笑いで、正直言って気分が悪い。

今日こそ、理由を知りたいと思っていた。




一年近く前、学園を卒業した後、メルリーは結婚した。

メルリーは子爵令嬢、夫のブレイズは男爵令息。

メルリーより一歳歳上のブレイズは次男のため、騎士になった。

騎士団は団長や五人の副団長の下に十の部隊がある。
そのうちの第三部隊にブレイズは属している。

第三部隊の中でもいくつかの小隊に分かれていて、三年目のブレイズはまだ下っ端のようなものだった。

第三部隊の隊長は30歳の伯爵で、伯爵夫人がふた月に一度程度、お茶会を開く。

これに出席できるのは、第三部隊に夫がいる夫人だけであり、ブレイズと結婚したメルリーも資格を得て招待されるようになった。
 
ここに招待される夫人は、似た境遇の方が多い。

自分も夫も貴族ではあるが、継ぐ爵位がなく、夫は騎士爵を得ようとしている。

親に爵位があるうちは、貴族の扱いを受けられるため、兄姉が継ぐまでに安定した暮らしを得ようとする下位貴族は多い。

令嬢で婚約者がいなかった場合は侍女になることが多いが、メルリーはブレイズと婚約していたため騎士の妻になった。


騎士爵は何か功績によって得られる場合と、上官の推薦で得られる場合とがある。

部隊長になるには騎士爵は最低限必要なのだ。

そのため、妻も必死に上官の夫人に取り入ろうとするため、こういったお茶会の席順などで優遇されているかがわかるという。

高価な贈り物をする夫人もいるとか……

メルリーは、夫の腕や人望次第なのだから、妻がそこまでする意味があるのかは疑問に思っていた。

それでも、夫のためになるかもしれないのであれば、と嫌でも出席してきたのだ。

そんなことを口にしたことはないが、態度に出てしまい、嘲笑されているのかとも思ったが、どうにも腑に落ちなくて、今日こそは理由を知りたいと思っていた。 

とはいえ、伯爵夫人やその取り巻きに突撃して聞く勇気はないので、お茶会終了後に年齢の近い夫人に声をかけた。


「ナディア様、少しお時間よろしいでしょうか?」


メルリーが声をかけたのは、夫ブレイズからも名前をよく聞くイーサン様の妻のナディア様だった。

彼女はメルリーよりも一年早く結婚してお茶会に出席している。


「……メルリー様。どうかしたのかしら?」


聞きたいことがあれば、さっき話せばよかったのにというような感じだった。

しかし、大勢の人の前で嘲笑されている理由を聞けるはずもない。


「教えていただきたいことがあるのです。何故、私は笑われているのでしょうか。何か不作法をしたのかと思っても心当たりがないのです。」


メルリーがそう言うと、ナディア様は困った顔になった。


「……あなたに問題があるわけじゃないの。いえ、ないわけでもないのかしら?」


どっちなの?


「あなたの夫がそもそもの話のネタなのだけど。知らない?」


ブレイズが話のネタ?

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