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しおりを挟む王太子殿下の側妃となる令嬢の選定。
根も葉もない噂にしては、現実的すぎた。
あと数年で国王陛下は王太子殿下に譲位すると言われている。
王太子殿下には王子と王女が1人ずついるが、王太子妃殿下はもう子供が産めないと囁かれている。
この国では王子が2人いることが望ましいが、王太子殿下は兄弟がいない。
なので、妃殿下に子供が望めないのであれば側妃に王子を産ませる。
そういう案が出ているという噂だ。
国王陛下になる前に、産ませる方がいい。
そして、王太子殿下も王太子妃殿下もそれに同意している、とも言われている。
あくまでも側妃の産む王子はスペア。
王太子妃の産んだ王子が将来の王太子になることは決まっている。
それをわきまえた令嬢が側妃になるべきである、と家柄や婚約者の有無などで既に何名かの名前が挙がっているという話だった。
そして、その中にソレーユの名前もあるという。
ソレーユは一応伯爵令嬢。
今は貧乏だが、領地が復興すれば元々は堅実な伯爵家。
収穫が出来れば、数年後には貧乏から脱出はできるのである。
まだ、収穫できる前段階で止まっているだけで……人手と資金があれば一気に進む。
伯爵位以上で婚約者がいない令嬢の中では、ソレーユが一番の有力候補である。
ソレーユより年上で婚約者のいない令嬢は、訳ありか子爵・男爵令嬢。
ソレーユより年下で婚約者のいない令嬢は、まだ学生である上に、28歳の王太子の側妃という立場に躊躇するから。
まだ正式な打診があったわけではない。
王城でもまだまだ選定中なのだ。
しかし、余計な情報を公爵に教える者はいるのだ。
「ソレーユの名前が王太子殿下の側妃にと上がっていると聞いたよ。」
「え?側妃……ですか?」
嘘でしょ?何ソレ……全く興味ない。
「お父様、なぜソレーユなのです?」
ローザリンデが不愉快そうな顔で公爵に聞いた。
「婚約者がいないからじゃないかな?
それに王子を望まれても、王太子妃殿下の産んだ王子が王太子になると決まっている。
よほど愚かな王子でない限り、側妃が産む王子が王太子になることはない。
欲を出さなければ、いい身分だよ。王妃、王太子妃に継ぐんだからね。不自由だけど。
ソレーユはどう思う?」
「私は……お断りしたいです。
王城勤務も決まりましたし、私が相応しいとは思えませんので。」
王宮で暮らすんでしょ?托卵されないように出れないんでしょ?そんなの御免だわ。
「侍女の仕事だけど、ソレーユはとても有望視されてるみたいだよ。
王城でどの部署でも通用するだろうって。それを聞いて、私も嬉しかったよ。」
「ありがとうございます。」
「ソレーユに側妃も王城勤務も務まるなんて思えないわ。みんなおかしいんじゃない?」
「……ローザリンデ、どうしたんだ?
学園の成績は確かにお前の方が上だが、ソレーユもいい順位だ。
地に足のついた聡明な受け答えをする令嬢だと採用担当者も言っていた。
私は側妃でも王城勤務でもソレーユなら上手くやっていけると思うぞ?」
「でも側妃になんてなったら、私より………何でもないわ。」
私より、『地位が上になるのが許せない』と、そう続けたかったのよね?
大丈夫よ。側妃なんてお断りだから。
ローザリンデに会わなくて済むっていう点だけは心惹かれるけれど。
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