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しおりを挟む同級生たちはみんな、アンネットが虐めをしていたとは思っていない。
というのも、入学当初からシューベルとアンネットの仲は政略結婚だとわかりきった淡々としたものだったから。
それでもシューベルは婿として侯爵家に入るのだ。愚かな真似はしないだろうと誰もが思っていた。
それが段々と一方的にシューベルがアンネットに意味不明の暴言を吐き出す機会が増えた。
学年が上がり、一つ下にハナミアが入学してからはナルホド……とみんなが納得した。
前侯爵であるアンネットの母が亡くなってからすぐに、侯爵代理であった父が再婚したという話は貴族社会で噂になっていた。
しかも、娘までいるのだと。
自分の屋敷でもないのに、婿の分際で愛人だった女と娘を堂々と屋敷に入れた非常識な男。
ボロボロになって痩せていくアンネットを見れば、どちらが虐められているのかなんてすぐわかる。
王子であるシューベルに、言動を改めるように助言した友人も遠ざけられた。
明らかに食事の量が足りていないのがわかるため、友人たちが食べ物を持たせて帰らせたこともある。
しかし、次の日からは辛そうに断られ、関わらない方がいいと言われた。
脇腹を押さえていたため、何らかの痛みを与えられたのだとわかった。
虐待を訴えてはどうかと言っても、目の前で暴力行為を見ないと認定されない。
12歳以下の子供の場合は痣で認められるが、それ以上の歳では虐待した本人や使用人の誰も認めなければ虚言となる。
アンネットが爵位を継ぐには、卒業しなければならない。
仕事を押し付けられているため、罪をでっち上げて家から追い出されるようなことはないとわかっていた。
しかし中途半端に父たちからの虐待を訴えてしまうと身が危うくなるかもしれないので時期を待った。
今回の場合、アンネットの体の痣と使用人たちの証言で父たちの虐待は認められた。
使用人たちは、父たちが侯爵家の者ではなくなったと聞いて、正直に証言するしかなくなったのだ。
まぁ、虐待が認められなくても侯爵となったアンネットは父たちを追い出すことは可能だったが、どうせならアンネットが痛い思いをした分、しばらく刑罰によって過酷な仕事を与えてほしいと思ったからだった。
今となっては、二度と顔を見たくないので終身刑を願ってしまうほどに。
アンネットの友人に、父親が国王陛下の側近である者がいた。
その友人を通じて、アンネットは国王陛下に願い出ていたのだ。
シューベルとの婚約解消、虐待の事実による父たちの除籍の正当性を。
そして、アンネットと国王陛下の双方が納得した形で卒業パーティーでの断罪は行われたのだ。
18歳になったばかりで、卒業資格を得ることができて、多くの貴族に誤解されることなく侯爵位を継いだことと父たちを除籍した経緯を伝えられたパーティー。
これほど断罪に相応しい機会はなかっただろう。
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