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45.最後の追い込み

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 次の日いつものリハビリを終えると体の調子の良さに驚いた。
 さすが風間病院。こんなに早く効果が出るなんて。

 歩くのも杖は使うがかなりスムーズに歩けるようになっていた。少し足を引きずりはするが。

 いい気分でゲームに挑める。

「ふぅ。よしっ。行くぞ!」

 気合を入れてヘッドギアを付けて横になり、現天獄への世界へと没入していく。

――――――
――――
――

「おっ! マセラのお出ましだ! お前がいなきゃ始まらねぇからな!」

 ゲームに入ると早速バカラさんに声をかけられた。もうみんな集まっていたみたいだ。

「はい! いよいよですね!」

「なぁ、皆。今日で決めないか? 明日寝不足になるかもしれない。けどな、攻略組も今第四エリアらしいんだわ。先を越されかねない」

 皆を見渡すようにバカラさんが提案してくれた。それは俺も願ってもないことだった。このゲームは最初にクリアしたい。
 
「構いません! やりましょう!」
「ボクもいいよー」
「ワイもかまへんよ」
「ワレも大丈夫だな」
「ワタクシも構いませんわ」

 みんな賛同するようだ。
 ここで一気に決める。
 その決意が現れていた。

「ギャハハハ! よっしゃ行くぞ!」

 ゾロゾロと地獄エリアに入っていく。
 第三エリアは蛇が出るらしい。
 しかも大蛇が。

 行く手を阻むように襲い来るので地道に倒すしかなかった。
 パッと見ただけでもかなりの数いたのが見えた。
 迫ってきていた大蛇が攻撃してきた。

 シッポの攻撃を避け、噛みつきによる攻撃をかわしつつ切りつけていく。俺が気を引いてバカラさんが殴ってダメージを与える作戦がハマった。

 俺は頭を中心に攻撃して相手の気を引きつける。そうすることで他に目が行かなくなる。体の部分をバカラさんが攻撃するという戦法だ。

 次々と倒していき順調に敵を減らして行った。

 ボスも同じ作戦だ。
 たが、ボスなので毒を吐くくらいはやってきた。それはちょっと誤算だった。
 なんとか避けて毒状態にはならなかったが、服が溶けた。

 俺の攻撃はビクともしなかった。理由は初期武器だったから。調達しないできたのだ。新しい武器があったから。

 初期武器じゃ心許ないので、この前入手した『無斬』を使うことになった。

 最初からこれを使っていればよかった。
 ここからは早かった。俺が毒も切り裂くことができた。刀のおかげ。

 バカラさんが狂戦士のように殴りつけていたので思ったほど苦戦しなかった。

 第四エリアは悲惨だった。
 蝿の大群が襲ってきたのだ。
 ここからはシルフィの出番だった。

 炎の玉を出しまくって殺処分した。
 だが、無数の蝿にダメージをくらい苦戦。
 ここで使うよいじゃなかったが、回復薬を少し消費してしまった。

「マセラ! なんとかしろ!」

 刀をぶん回してなんとか追い払おうとする。
 無斬が蝿を操っていた魔力を切った様でどこかに霧散して行ったのだ。

 大量のハエが来ては俺が刀で切って追い払った。それを1時間繰り返し、ようやくボスに来た。

 だが、このボスもボスだけあって、切っても切ってもダメージがなかったのだ。蝿の塊のような悪魔だったからだろうか。
 ここに来てもやはり、シルフィ頼みだった。

「シルフィ! 頼む!」

「火球! 炎の渦!」

 根気よく少しずつダメージを与えていく。
 これでは物理効果がなかったため、俺もバカラさんも役立たず。
 これは攻略組は苦労しているかもなと思った。やつらは物理攻撃が多いからだ。

 苦労している隙に俺達はこのゲームをクリアするんだ。
 
 ハエの攻撃はシルフィ以外でたたき落とすという地味な作業になった。シルドさんの盾は役に立った。面積が広いから。面で倒せるのだ。現実じゃなくて良かったと思った。

 実際やったら惨状が凄いことになりそうだと想像を巡らせてしまったから。

 時間をかけ何とか倒した時には二時間が経過していた。ここまできてもう引けない。

 俺たちは第五エリアに向かった。

 入った瞬間から黒々とした炎が飛んでくる。
 正確にこちらを把握しているようで的確に俺たちに向かってくる。

「いきなりかよ!」

 刀で切り裂いて落とす。その炎は奥からドンドンやってくる。俺を避けながら進めってことなのか?
 どんな回避ゲーなんだよ!

 シルドさんは盾でガードして歩いて進む。俺は切り裂きながら進み、他のみんなはシルドさんの後ろだ。

 シルドさんの盾が耐久性が無くなったようだ。
 初期の盾に変えた。すると、受ける度にダメージを受けてしまうようなのだ。

 キンドさんとアルトから回復アイテムを貰いながらなんとか耐えている状態。だんだんと炎の威力が上がってきていて、近づいてきていると実感がある。

 炎の元凶が見えてきた。
 あれが、ルシファーだ。
 大きな鬼のような赤黒い体。ボロボロの羽を背中に背負っている。

「ワタシは人間なんぞに負けんぞぉぉぉ!」

 空気を震わせる凄まじい殺気。
 ビリビリと肌が痛い。
 こんな感覚まであるのかこのゲーム。

「ギャハハハハ! やったろうじゃねぇかコノヤロー!」

 実はバカラさんの手に入れたアイテム、暴れん坊は回復アイテムを使うとゾンビアタックが可能なことがわかったのだ。

 攻撃をする。ダメージを受ける。回復。攻撃する。このサイクルを怯まずにできることが判明した。

 それによって、後ろにいる人たちは回復役に徹することになった。これが最後のボスへの必勝法!

「オラオラオラオラァァァ」

 ルシファーをタコ殴りにしながら背中には回復薬を浴び続けていく。この回復薬を購入する為に、今ある資金を全部つぎ込んできたのだ。

 みんながインベントリに持てるだけ持っている。
 俺はときどき放たれる炎を切る係。
 だが、無くなりそうだというので回復薬を慌てて渡す。
 俺も空になった。

 何分たっただろうか。そろそろじゃないか?

「このクソ人間共がァァァァ!」

 発狂モードが来た。暴れ回るルシファー。
 それに怯まずひたすら殴り続けるバカラさん。
 この人すげえや。怯まないってだけで痛さは痛いはずなんだよな。ルシファーにタコ殴りにされてるんだから。

「この悪魔風情が! 俺っちの行く手を阻むんじゃねぇぇぇぇぇぇ!」

 最後の力を振り絞ったラッシュが放たれる。
 拳が複数に見えるくらいのアニメの様な猛攻が繰り広げられている。

 ────ズドドドドドドドドドッッッッ

「ぐわぁぁぁあぁぁぁあ」

 ルシファーは仰け反るようにすると光を放ちボロボロとダメージエフェクトを溢れさせた。

「ハッハッハッハッハッ! 勝った!」

「勝ったぞ!」

 遂に俺達は現天獄をクリアした。

 一同に安堵して膝を着いた。
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