56 / 69
56.スケルトン族
しおりを挟む
「おい! 骨の分際で俺様に当たってんじゃねぇよ!?」
えっ? 俺?
声のした方を焦って向くと、ドレスアップしたスケルトンがゴツイ馬に怒鳴られていた。
なんか絵がシュールだな。
『なによ! あんたがぶつかって来たんでしょ!?』
「あぁ!? そのほっそい骨砕いてやろうかぁ!?」
拳を振りかぶっている。
こりゃいかん。
咄嗟に縮地を使い、ドレスアップしたスケルトンの前に出る。
振り下ろされた拳に手を添えて受け流す。
「なんだてめぇ!?」
『通りすがりのものです。往来の場でやめた方がいいのでは?』
馬さんは周りを見ると野次馬に「馬の恥だ」とかヤジられて顔を顰めると振り返って歩いていった。
『大丈夫でしたか?』
『か……』
何したんだ? か?
『カッコイイわね! あなた! 私の婚約者になりなさい!』
どういう事?
『お嬢様! 何をなされているんですか!? 勝手に街に出るなんて危険です!』
やって来たのはカチッとした執事風のスケルトン。
『爺や、この人を婚約者にします!』
爺なのか? このスケルトン?
年齢の概念あるの?
『何を言ってるんですか! お嬢様にはリビングアーマー族の許嫁が居るではありませんか!』
『あんなゴツイ奴嫌よ!』
なんか、他種族国家トイロは色々と複雑なようだ。
『俺はこのミリアと旅の途中でして、この国にずっと居るか分からないので』
『あぁー!? 人族じゃない! そんな弱っちいやつと一緒に居ると不幸になるわよ!?』
いやー。弱いから不幸になるとは限らないんじゃ。
そんな事を思っていると横からずいっと出てきたミリア。目がつり上がって可愛い顔が台無しである。
「聞き捨てならないわね! ナイルは私のパートナーよ!」
『ナイル様っていうのね!? 私と結婚しましょう!?』
俺に詰め寄ってくるお嬢様。
手を握って顔を寄せてくる。
「だぁかぁらぁ! 私のパートナーだって言ってるでしょぉ!?」
無理やり俺とお嬢様の間に身体を入れてお嬢様の進出を阻む。
そんなに俺の事を。
胸が震える。
『あなたは人間でしょ!? ナイル様とは結ばれないじゃない!』
「私のことを守ってくれるって約束したんだから! 守って貰えないと困るのよ! 私は弱いんだから!」
ん? 戦力としていて欲しいってことかな?
うん。あれ? 目から滴が。
「あっ! 違くて! いやっ! 違うこともないんだけど」
『私はナイル様と結ばれることが出来るのよ?』
「その。結ばれるとはなんなんですか!?」
『そんな事もしらないの!? ナイル様と一緒にいながら! 結ばれるとは────』
スケルトンお嬢様が語り出したのはこれまでの種族の生き方だった。
スケルトンやリビングアーマー、ゾンビなど魔力で運用している者たちはみな魔力を交わし一つの大きな魔力を作り上げる。
そうする事で混じりあった魔力からどちらかの種族が生まれるんだそうだ。
それは俺とミリアでも出来るんじゃないか? と思ったが、生まれてきた子供がスケルトンってのはちょっと複雑だな。
獣人達は交尾をして子をなすので人間と近い感じではあるが。人とは違う生き方となっている為に人が支配しているシュアルズ王国とは交流してないらしい。
いや、実際には交流していた事はあるらしいが、モンスターと思われて攻撃されたりしたようだ。それからは交流していないんだとか。それももう数十年も昔の話。
その辺で襲ってくるモンスターとの区別はどうするんだろうか? 実際、俺はモンスターに意思が宿ったんだと思うし。そう思って聞いてみた。
答えは簡単だった。話せるかどうか。それだけらしい。だからその辺の森などで襲われた場合、話しかけて反応がなく襲ってきたら倒すしかないとの事。
んー。単純だけどちょっと恐ろしいな。
同族も喋れなければ殺すということか。
まぁ、襲われなければ殺さないらしいからいいっちゃいいのかもしれない。
「話せなきゃ殺しちゃうの?」
『そうですわ。ただし、襲われたらですわよ?』
「意思があっても話せない子がいるかもしれないでしょ!?」
『それは人族のお話でしょう? 私達の魔族は話せないものは意思がないわ。というかそこまで考えていられないわ』
歯を食いしばってワナワナと手を震わせながらお嬢様スケルトンを睨む。
まぁ、ミリアの気持ちもわかるけどそういう風に割り切らないとやっていけないのかもしれないな。
『ミリア、種族の考え方はそれぞれだ。人族が正しい訳じゃないだろ?』
「そりゃ! ……そうだけどねぇ」
『ナイル様はやっぱり理解が深いのです! 流石ですね! それでこそ、私の婚約者ですわ!』
『それなんだが、俺は肉体を得るために進化したいんだ。だから、レベルを上げる旅をしている。ここで立ち止まれない』
『へぇぇ。進化をですか。たしかに年に何体か進化をするものは居ますね。基本は同種族の上位種ですが。爺もエルダースケルトンです。古の魔法が使えます』
種族を変えたいと思うものはそう多くはないだろう。だからそういう選択になるのかもしれない。
俺の場合は、元が人族だからなのかもしれないな。
『俺は食事をしてみたいんだ。そして、ミリアと一緒に生きていきたい』
『人族とですか?』
『そうだ』
『わかりました! 私と決闘ですわ!』
戦わなければならないか。
『ミリア!』
「えぇ!? あたし!?」
こりゃどうしたもんか。
お嬢様スケルトンとミリアの決闘が始まろうとしていた。
えっ? 俺?
声のした方を焦って向くと、ドレスアップしたスケルトンがゴツイ馬に怒鳴られていた。
なんか絵がシュールだな。
『なによ! あんたがぶつかって来たんでしょ!?』
「あぁ!? そのほっそい骨砕いてやろうかぁ!?」
拳を振りかぶっている。
こりゃいかん。
咄嗟に縮地を使い、ドレスアップしたスケルトンの前に出る。
振り下ろされた拳に手を添えて受け流す。
「なんだてめぇ!?」
『通りすがりのものです。往来の場でやめた方がいいのでは?』
馬さんは周りを見ると野次馬に「馬の恥だ」とかヤジられて顔を顰めると振り返って歩いていった。
『大丈夫でしたか?』
『か……』
何したんだ? か?
『カッコイイわね! あなた! 私の婚約者になりなさい!』
どういう事?
『お嬢様! 何をなされているんですか!? 勝手に街に出るなんて危険です!』
やって来たのはカチッとした執事風のスケルトン。
『爺や、この人を婚約者にします!』
爺なのか? このスケルトン?
年齢の概念あるの?
『何を言ってるんですか! お嬢様にはリビングアーマー族の許嫁が居るではありませんか!』
『あんなゴツイ奴嫌よ!』
なんか、他種族国家トイロは色々と複雑なようだ。
『俺はこのミリアと旅の途中でして、この国にずっと居るか分からないので』
『あぁー!? 人族じゃない! そんな弱っちいやつと一緒に居ると不幸になるわよ!?』
いやー。弱いから不幸になるとは限らないんじゃ。
そんな事を思っていると横からずいっと出てきたミリア。目がつり上がって可愛い顔が台無しである。
「聞き捨てならないわね! ナイルは私のパートナーよ!」
『ナイル様っていうのね!? 私と結婚しましょう!?』
俺に詰め寄ってくるお嬢様。
手を握って顔を寄せてくる。
「だぁかぁらぁ! 私のパートナーだって言ってるでしょぉ!?」
無理やり俺とお嬢様の間に身体を入れてお嬢様の進出を阻む。
そんなに俺の事を。
胸が震える。
『あなたは人間でしょ!? ナイル様とは結ばれないじゃない!』
「私のことを守ってくれるって約束したんだから! 守って貰えないと困るのよ! 私は弱いんだから!」
ん? 戦力としていて欲しいってことかな?
うん。あれ? 目から滴が。
「あっ! 違くて! いやっ! 違うこともないんだけど」
『私はナイル様と結ばれることが出来るのよ?』
「その。結ばれるとはなんなんですか!?」
『そんな事もしらないの!? ナイル様と一緒にいながら! 結ばれるとは────』
スケルトンお嬢様が語り出したのはこれまでの種族の生き方だった。
スケルトンやリビングアーマー、ゾンビなど魔力で運用している者たちはみな魔力を交わし一つの大きな魔力を作り上げる。
そうする事で混じりあった魔力からどちらかの種族が生まれるんだそうだ。
それは俺とミリアでも出来るんじゃないか? と思ったが、生まれてきた子供がスケルトンってのはちょっと複雑だな。
獣人達は交尾をして子をなすので人間と近い感じではあるが。人とは違う生き方となっている為に人が支配しているシュアルズ王国とは交流してないらしい。
いや、実際には交流していた事はあるらしいが、モンスターと思われて攻撃されたりしたようだ。それからは交流していないんだとか。それももう数十年も昔の話。
その辺で襲ってくるモンスターとの区別はどうするんだろうか? 実際、俺はモンスターに意思が宿ったんだと思うし。そう思って聞いてみた。
答えは簡単だった。話せるかどうか。それだけらしい。だからその辺の森などで襲われた場合、話しかけて反応がなく襲ってきたら倒すしかないとの事。
んー。単純だけどちょっと恐ろしいな。
同族も喋れなければ殺すということか。
まぁ、襲われなければ殺さないらしいからいいっちゃいいのかもしれない。
「話せなきゃ殺しちゃうの?」
『そうですわ。ただし、襲われたらですわよ?』
「意思があっても話せない子がいるかもしれないでしょ!?」
『それは人族のお話でしょう? 私達の魔族は話せないものは意思がないわ。というかそこまで考えていられないわ』
歯を食いしばってワナワナと手を震わせながらお嬢様スケルトンを睨む。
まぁ、ミリアの気持ちもわかるけどそういう風に割り切らないとやっていけないのかもしれないな。
『ミリア、種族の考え方はそれぞれだ。人族が正しい訳じゃないだろ?』
「そりゃ! ……そうだけどねぇ」
『ナイル様はやっぱり理解が深いのです! 流石ですね! それでこそ、私の婚約者ですわ!』
『それなんだが、俺は肉体を得るために進化したいんだ。だから、レベルを上げる旅をしている。ここで立ち止まれない』
『へぇぇ。進化をですか。たしかに年に何体か進化をするものは居ますね。基本は同種族の上位種ですが。爺もエルダースケルトンです。古の魔法が使えます』
種族を変えたいと思うものはそう多くはないだろう。だからそういう選択になるのかもしれない。
俺の場合は、元が人族だからなのかもしれないな。
『俺は食事をしてみたいんだ。そして、ミリアと一緒に生きていきたい』
『人族とですか?』
『そうだ』
『わかりました! 私と決闘ですわ!』
戦わなければならないか。
『ミリア!』
「えぇ!? あたし!?」
こりゃどうしたもんか。
お嬢様スケルトンとミリアの決闘が始まろうとしていた。
0
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。
いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。
そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。
【第二章】
原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。
原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる