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56.スケルトン族

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「おい! 骨の分際で俺様に当たってんじゃねぇよ!?」

 えっ? 俺?

 声のした方を焦って向くと、ドレスアップしたスケルトンがゴツイ馬に怒鳴られていた。
 なんか絵がシュールだな。

『なによ! あんたがぶつかって来たんでしょ!?』

「あぁ!? そのほっそい骨砕いてやろうかぁ!?」

 拳を振りかぶっている。
 こりゃいかん。

 咄嗟に縮地を使い、ドレスアップしたスケルトンの前に出る。
 振り下ろされた拳に手を添えて受け流す。

「なんだてめぇ!?」

『通りすがりのものです。往来の場でやめた方がいいのでは?』

 馬さんは周りを見ると野次馬に「馬の恥だ」とかヤジられて顔を顰めると振り返って歩いていった。

『大丈夫でしたか?』

『か……』

 何したんだ? か?

『カッコイイわね! あなた! 私の婚約者になりなさい!』

 どういう事?

『お嬢様! 何をなされているんですか!? 勝手に街に出るなんて危険です!』

 やって来たのはカチッとした執事風のスケルトン。

『爺や、この人を婚約者にします!』

 爺なのか? このスケルトン?
 年齢の概念あるの?

『何を言ってるんですか! お嬢様にはリビングアーマー族の許嫁が居るではありませんか!』

『あんなゴツイ奴嫌よ!』

 なんか、他種族国家トイロは色々と複雑なようだ。

『俺はこのミリアと旅の途中でして、この国にずっと居るか分からないので』

『あぁー!? 人族じゃない! そんな弱っちいやつと一緒に居ると不幸になるわよ!?』

 いやー。弱いから不幸になるとは限らないんじゃ。

 そんな事を思っていると横からずいっと出てきたミリア。目がつり上がって可愛い顔が台無しである。

「聞き捨てならないわね! ナイルは私のパートナーよ!」

『ナイル様っていうのね!? 私と結婚しましょう!?』

 俺に詰め寄ってくるお嬢様。
 手を握って顔を寄せてくる。

「だぁかぁらぁ! 私のパートナーだって言ってるでしょぉ!?」

 無理やり俺とお嬢様の間に身体を入れてお嬢様の進出を阻む。
 そんなに俺の事を。
 胸が震える。

『あなたは人間でしょ!? ナイル様とは結ばれないじゃない!』

「私のことを守ってくれるって約束したんだから! 守って貰えないと困るのよ! 私は弱いんだから!」

 ん? 戦力としていて欲しいってことかな?
 うん。あれ? 目から滴が。

「あっ! 違くて! いやっ! 違うこともないんだけど」

『私はナイル様と結ばれることが出来るのよ?』

「その。結ばれるとはなんなんですか!?」

『そんな事もしらないの!? ナイル様と一緒にいながら! 結ばれるとは────』

 スケルトンお嬢様が語り出したのはこれまでの種族の生き方だった。

 スケルトンやリビングアーマー、ゾンビなど魔力で運用している者たちはみな魔力を交わし一つの大きな魔力を作り上げる。

 そうする事で混じりあった魔力からどちらかの種族が生まれるんだそうだ。

 それは俺とミリアでも出来るんじゃないか? と思ったが、生まれてきた子供がスケルトンってのはちょっと複雑だな。

 獣人達は交尾をして子をなすので人間と近い感じではあるが。人とは違う生き方となっている為に人が支配しているシュアルズ王国とは交流してないらしい。

 いや、実際には交流していた事はあるらしいが、モンスターと思われて攻撃されたりしたようだ。それからは交流していないんだとか。それももう数十年も昔の話。

 その辺で襲ってくるモンスターとの区別はどうするんだろうか? 実際、俺はモンスターに意思が宿ったんだと思うし。そう思って聞いてみた。

 答えは簡単だった。話せるかどうか。それだけらしい。だからその辺の森などで襲われた場合、話しかけて反応がなく襲ってきたら倒すしかないとの事。

 んー。単純だけどちょっと恐ろしいな。
 同族も喋れなければ殺すということか。
 まぁ、襲われなければ殺さないらしいからいいっちゃいいのかもしれない。

「話せなきゃ殺しちゃうの?」

『そうですわ。ただし、襲われたらですわよ?』

「意思があっても話せない子がいるかもしれないでしょ!?」

『それは人族のお話でしょう? 私達の魔族は話せないものは意思がないわ。というかそこまで考えていられないわ』

 歯を食いしばってワナワナと手を震わせながらお嬢様スケルトンを睨む。
 まぁ、ミリアの気持ちもわかるけどそういう風に割り切らないとやっていけないのかもしれないな。

『ミリア、種族の考え方はそれぞれだ。人族が正しい訳じゃないだろ?』

「そりゃ! ……そうだけどねぇ」

『ナイル様はやっぱり理解が深いのです! 流石ですね! それでこそ、私の婚約者ですわ!』

『それなんだが、俺は肉体を得るために進化したいんだ。だから、レベルを上げる旅をしている。ここで立ち止まれない』

『へぇぇ。進化をですか。たしかに年に何体か進化をするものは居ますね。基本は同種族の上位種ですが。爺もエルダースケルトンです。古の魔法が使えます』

 種族を変えたいと思うものはそう多くはないだろう。だからそういう選択になるのかもしれない。

 俺の場合は、元が人族だからなのかもしれないな。

『俺は食事をしてみたいんだ。そして、ミリアと一緒に生きていきたい』

『人族とですか?』

『そうだ』

『わかりました! 私と決闘ですわ!』

 戦わなければならないか。

『ミリア!』

「えぇ!? あたし!?」

 こりゃどうしたもんか。
 お嬢様スケルトンとミリアの決闘が始まろうとしていた。
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