65 / 69
65.ハイエナ野郎
しおりを挟む
現在それぞれの二回戦の戦いが繰り広げられていた。
タイガは順調に勝っているし、イーグも勝ち残った。ハイエナ野郎はまた毒を使って勝っている。
俺はこんなにもミリアが負けることを願う日があっただろうか。
ミリアが死んだあの日以来、ミリアには危険が迫らないように細心の注意を払ってきた。
なのに何故、俺はこの大会に出るのを止めなかったのだろうか。
またミリアに何かあったら俺は────
『それでは、最後の二回戦を開始いたしましょーー! キリンのリン選手対、注目のぉぉぉミリアァァァせんしゅぅぅぅぅぅ!』
「「「ミ・リ・ア! ミ・リ・ア!」」」
『凄まじい応援ですねぇ。しかし、私は心配です! これに勝ったら……。いえ、止めましょう。どうか。どうかっ! 両者に勝利の女神が微笑みますように!』
実況が言いたい事は観客達にも言わずもがな伝わる所があり、一部のものは涙ぐんでいた。
そんな雰囲気の中、俺達の気持ちを知ってか知らずか。ミリアはニコニコとリンに対峙している。
『それでは、始め!』
開始早々のリンの蹴りの速さは凄まじく、持ち前の長身からの叩きつけるような蹴りがミリアを襲う。
冷静に避けているが、これは一撃でも食らったらまずそうだ。
もう負けて欲しいんだか勝って欲しいんだか分からない心境になっている。
どうしたものか。このモヤモヤは。
ステージ上では激しい攻防が繰り広げられている。リンは蹴りが主体のようで、打ち下ろしの蹴りが次々とミリアを襲う。
少しずつ被弾していく。
だか、ミリアの目は諦めてはいない。
そんな厳しい状況にも関わらず、ミリアは笑顔だ。
あんな可愛い笑顔で攻撃されたら逆に恐ろしいのだが。
避けながらローキックを放っている。
それを一貫している。
また打ち下ろしの蹴りが放たれた時だった。
軸足を蹴り飛ばすとリンの膝がカクンと折れ、地面に膝を着いた。
ミリアは口角を上げると懐に入り込んだ。
────ズドンッ
その重い重低音は会場中に響いた。
────ドサッ
リンがステージに倒れている。
ミリアが正確に胸に突きを放った。
それで、一時的に仮死状態になったようだ。
『この試合! 勝者は、ミリアせんしゅぅぅぅぅぅ!』
会場は盛り上がってる反面、心配な様子が漂ってる。
先程のハイエナの相手選手も担架で運ばれて、医務室で治療中だ。
ミリアの肌も切りつけられて毒にやられるかも思うといても立ってもいられない気持ちになる。
それは、俺だけではなかったようだ。
「俺、解毒薬買ってこようかな。役に立てっかな?」
「僕も毒消し草狩りに行ってこようかな」
「俺っちも薬屋の知り合いに取り置きしておいて貰おうかな?」
周りの観客もソワソワ。
でも席を立ってしまうと見れなくなるし、という葛藤に見舞わられる。
そうこうしている間に三回戦が始まった。
三回戦ともなれば、四試合しかないから直ぐにミリアの試合になる。
隣のブロックのタイガとライオン族のレオ、イーグは準決勝に残った。
続いてが、ハイエナとミリアの戦いだ。
『それでは、三回戦最後の試合です! 正々堂々戦ってください! 始め!』
実況の人がわざと正々堂々と言った際にハイエナは鼻が膨らんでいた。鼻で笑い飛ばしたのだろう。
あの野郎。ミリアに何かあったら許さねぇ。と思いながら睨みつけていると、みんな考えていることは同じようで。
「ハイエナ野郎。ミリアちゃんが怪我したら俺が許さねぇ」
「僕も許さない。どんな手を使っても抹消する」
「俺っちも許すまじ! 同じ目に合わせてやる!」
ファンがみんな同じように殺気を放っていてピリピリとしたなんとも言えない空気になっている。
そんな中、ハイエナが口を開いた。
「正々堂々とか言ってっけど、負けたら意味ねぇからな? しかも、ミリアだっけ? 可愛いじゃねぇか。俺の女にしてやってもいいぜ?」
「ありがとー! でも、私弱い人は好きじゃないんだぁ。ごめんね?」
その声は静まり返っていた会場に鳴り響いた。
そして、何かが切れた音が同時にした。
「きっさまぁぁぁ! 俺が弱いだと!? ここまで来た俺がか!? 俺の速さについてこれるってのか!?」
そう叫ぶと瞬時にミリアの横に移動し、右のナイフを振り回してくる。
ミリアは仰け反ってそのナイフを冷静に見て避ける。
今度は左のナイフを取り出して突き出してくる。
それを上段に払いあげる。
がら空きになった胸。
「はぁっ!」
放たれたガルン流空手の発勁によって内部の細胞が一斉に攻撃される。
「ガフッ!」
ハイエナ野郎は口から血を吐き出した。
もう終わりかと思ったのか少し引いた。
「まだ終わってねぇぞ!?」
ナイフを再び上から振り回してきた。
「弱い」
ナイフを持つ腕をハイキックで打ち付けて持っていたナイフも吹き飛ばす。
ハイエナ野郎の自慢の速さはミリアの前では大したことがなかったようだ。
「バイバーイ」
フラフラのハイエナ野郎は手を挙げた状態のまま立っていた。
肩幅に足を開いて引き絞った拳。
それが今放たれる。
───ズドンッ
ハイエナ野郎は場外に吹き飛ばされて地面に横たわった。
会場は、割れんばかりの歓声に包まれた。
───ワァァァァァァァァ
皆がミリアを心配していて、それを心配ないよとばかりに無傷でぶちのめした。
会場は最高潮の盛り上がりを見せていた。
タイガは順調に勝っているし、イーグも勝ち残った。ハイエナ野郎はまた毒を使って勝っている。
俺はこんなにもミリアが負けることを願う日があっただろうか。
ミリアが死んだあの日以来、ミリアには危険が迫らないように細心の注意を払ってきた。
なのに何故、俺はこの大会に出るのを止めなかったのだろうか。
またミリアに何かあったら俺は────
『それでは、最後の二回戦を開始いたしましょーー! キリンのリン選手対、注目のぉぉぉミリアァァァせんしゅぅぅぅぅぅ!』
「「「ミ・リ・ア! ミ・リ・ア!」」」
『凄まじい応援ですねぇ。しかし、私は心配です! これに勝ったら……。いえ、止めましょう。どうか。どうかっ! 両者に勝利の女神が微笑みますように!』
実況が言いたい事は観客達にも言わずもがな伝わる所があり、一部のものは涙ぐんでいた。
そんな雰囲気の中、俺達の気持ちを知ってか知らずか。ミリアはニコニコとリンに対峙している。
『それでは、始め!』
開始早々のリンの蹴りの速さは凄まじく、持ち前の長身からの叩きつけるような蹴りがミリアを襲う。
冷静に避けているが、これは一撃でも食らったらまずそうだ。
もう負けて欲しいんだか勝って欲しいんだか分からない心境になっている。
どうしたものか。このモヤモヤは。
ステージ上では激しい攻防が繰り広げられている。リンは蹴りが主体のようで、打ち下ろしの蹴りが次々とミリアを襲う。
少しずつ被弾していく。
だか、ミリアの目は諦めてはいない。
そんな厳しい状況にも関わらず、ミリアは笑顔だ。
あんな可愛い笑顔で攻撃されたら逆に恐ろしいのだが。
避けながらローキックを放っている。
それを一貫している。
また打ち下ろしの蹴りが放たれた時だった。
軸足を蹴り飛ばすとリンの膝がカクンと折れ、地面に膝を着いた。
ミリアは口角を上げると懐に入り込んだ。
────ズドンッ
その重い重低音は会場中に響いた。
────ドサッ
リンがステージに倒れている。
ミリアが正確に胸に突きを放った。
それで、一時的に仮死状態になったようだ。
『この試合! 勝者は、ミリアせんしゅぅぅぅぅぅ!』
会場は盛り上がってる反面、心配な様子が漂ってる。
先程のハイエナの相手選手も担架で運ばれて、医務室で治療中だ。
ミリアの肌も切りつけられて毒にやられるかも思うといても立ってもいられない気持ちになる。
それは、俺だけではなかったようだ。
「俺、解毒薬買ってこようかな。役に立てっかな?」
「僕も毒消し草狩りに行ってこようかな」
「俺っちも薬屋の知り合いに取り置きしておいて貰おうかな?」
周りの観客もソワソワ。
でも席を立ってしまうと見れなくなるし、という葛藤に見舞わられる。
そうこうしている間に三回戦が始まった。
三回戦ともなれば、四試合しかないから直ぐにミリアの試合になる。
隣のブロックのタイガとライオン族のレオ、イーグは準決勝に残った。
続いてが、ハイエナとミリアの戦いだ。
『それでは、三回戦最後の試合です! 正々堂々戦ってください! 始め!』
実況の人がわざと正々堂々と言った際にハイエナは鼻が膨らんでいた。鼻で笑い飛ばしたのだろう。
あの野郎。ミリアに何かあったら許さねぇ。と思いながら睨みつけていると、みんな考えていることは同じようで。
「ハイエナ野郎。ミリアちゃんが怪我したら俺が許さねぇ」
「僕も許さない。どんな手を使っても抹消する」
「俺っちも許すまじ! 同じ目に合わせてやる!」
ファンがみんな同じように殺気を放っていてピリピリとしたなんとも言えない空気になっている。
そんな中、ハイエナが口を開いた。
「正々堂々とか言ってっけど、負けたら意味ねぇからな? しかも、ミリアだっけ? 可愛いじゃねぇか。俺の女にしてやってもいいぜ?」
「ありがとー! でも、私弱い人は好きじゃないんだぁ。ごめんね?」
その声は静まり返っていた会場に鳴り響いた。
そして、何かが切れた音が同時にした。
「きっさまぁぁぁ! 俺が弱いだと!? ここまで来た俺がか!? 俺の速さについてこれるってのか!?」
そう叫ぶと瞬時にミリアの横に移動し、右のナイフを振り回してくる。
ミリアは仰け反ってそのナイフを冷静に見て避ける。
今度は左のナイフを取り出して突き出してくる。
それを上段に払いあげる。
がら空きになった胸。
「はぁっ!」
放たれたガルン流空手の発勁によって内部の細胞が一斉に攻撃される。
「ガフッ!」
ハイエナ野郎は口から血を吐き出した。
もう終わりかと思ったのか少し引いた。
「まだ終わってねぇぞ!?」
ナイフを再び上から振り回してきた。
「弱い」
ナイフを持つ腕をハイキックで打ち付けて持っていたナイフも吹き飛ばす。
ハイエナ野郎の自慢の速さはミリアの前では大したことがなかったようだ。
「バイバーイ」
フラフラのハイエナ野郎は手を挙げた状態のまま立っていた。
肩幅に足を開いて引き絞った拳。
それが今放たれる。
───ズドンッ
ハイエナ野郎は場外に吹き飛ばされて地面に横たわった。
会場は、割れんばかりの歓声に包まれた。
───ワァァァァァァァァ
皆がミリアを心配していて、それを心配ないよとばかりに無傷でぶちのめした。
会場は最高潮の盛り上がりを見せていた。
0
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。
いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。
そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。
【第二章】
原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。
原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる