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17.邪魔者

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「ねぇ、昨日は二人で仲良く夜を過ごしたんでしょう?」

 ログインしてすぐにシエラに言われた。
 その言い方にラブルも顔が赤くなる。

「ちょっ! 別に、ただ罠の作り方を見せてもらったりとか一緒にランキングみたりとかしてただけだよぉ!」

「ふーん。一緒に見る必要あるの? 寂しかったなぁ。私は一人で」

 わざとらしく寂しそうな表情をする。

「そうだよな。皆で見ればよかったな。すまん」

 俺が素直に謝ると、ラブルが怒り出した。

「いいのよ別にぃー! どうせシエラは面白がってマップを眺めてたんでしょ!?」

「ふふふっ。正解! だってぇ、普段は素っ気ない態度するくせに二人で会うなんて珍しいじゃない?」

「いいじゃない! 別に」

「なんか悪かったな」

 俺の方を向き直ってシエラが言う。

「良いのよ? 私はからかってるだけよぉ。お邪魔はしないわ?」

「じゃ、邪魔ってことはないと思うが?」

「それより、せっかくランキングにのったんだから今日は目指せトップテンよ! クランもトップスリーを目指すわよー!」

 シエラは気合い十分である。

「やるからには、ランキングに入りたいよな」

「うん! 頑張ろー!」

 そろそろ始まる。
 雲がモクモクと集まり、天使が降りてきた。

「やっほー! 調子はどうかな? 昨日アップしたランキングにのった人はもう一息! のってない人は猛チャージだよ! 二日目スタートオォォ!」

ドドドドドドォォォ

 一斉に目的の門に進む。
 今日は強いモンスターの出る北に向かう。

「俺が先頭ででかいのを仕掛るから頼んだぞ!」

「「了解!」」

 少し外れた方に行く。
 罠を設置する。
 今回のはスコップを十個使った落とし穴だ。

 エサのようなものをばら撒いて。
 幾重にも罠を仕掛ける。

 隠れているとドドドドッと色んな種類のモンスターがやってきた。
 ロープを一気に切り裂く。

バシャァ! ドスドスドス! オォォォォォン!

 毒を浴びせて、ナイフを刺してモンスターのブーマーの突進する罠を作動させる。

 数体を光に変える。

「行っていいぞ! 早めに決めるぞ!」

「「了解」」

 二人で残りのモンスターを殲滅する。
 数十体倒しただろうか。
 かなりいいペースであるが、ここで邪魔が入る。

ゴォォォォ

 死角からファイヤーボールが迫る。

「散開!」

 咄嗟に散らばって避ける。
 魔法が来た方向を見るとニヤニヤしている髪の長いチャラいプレイヤーがいる。
 その後ろには四人の男が控えていた。

「ハッハッハッ! 我等が男五組が邪魔させてもらうぜぇ!」

 この手のゲームでは、良くあることだろうがあまり好かれていない。
 PVPである。

「お、おい。モンスターを狩らないと貢献度は上がらないんじゃないか?」

 しゃがみこんで地面に手を付き後ずさる。

「何をそんなにビビる? ただリスポーンして貢献度が減るだけじゃねぇか」

「俺は……死にたくない……」

「おうおう。二人も女を連れてて情けねぇなぁ。コイツからやるぞ」

「「「「おう」」」」

「や、やめてくれ!」

 そのまま後ずさる。
 一直線に五人がこちらに向かってくる。
 最初にソアラがいた位置に来た時。

 男達の足場が急になくなった。
 落ちていく。

「「「ぐわぁぁぁぁぁ」」」

「ふぅ。落ちたか? 発動」

 この落とし穴は地属性だったようだ。
 周りの土からの棘に口刺しにされて一気に全員が光に変わる。

「警戒しないとな? やっぱり邪魔をしようって輩が出てくるんだな」

「ソアラ? あの怖がり方は本当だと思っちゃったんだけど?」

「不覚です。私もホントに怖いんだと思ってしまいました」

 ラブルもシエラもソアラが本当に怖いんだと思っていたようだ。
 怪訝な顔で睨んでいる。

「そうか? ゲームだしな。やられるのは怖くはないさ。まぁ、ゲームであろうと死ぬ気は無いんだけどな」

「もう。心臓に悪いよぉ」

「ホント、やめて欲しいです。私はソアラの後にやられる自分を想像しましたよ?」

「はははっ。そりゃ悪かった。まぁ、罠師は狡猾にいかないとな。罠にかけるためなら何でもする。地面に手を付けないと罠が設置出来なかったからな。あんな感じにしないとバレるだろ?」

「それにしても……」

「演技が上手すぎます……」

「そうか? これからも使えそうだな」

 はぁっと二人はため息を吐く。
 二人はもう見たくなさそうだが、ソアラはまたやる時が来るんだろう。

「さっ、気を取り直してモンスターを狩ろう!」

 ラブルが気合いを入れ直す。

 森の中へ入っていく。
 北側の森の中は昆虫系が多いと攻略ページに載っていたのを思い出した。

 ふっと嫌な予感が頭をよぎる。
 あれ?
 たしか愛琉って……。

「キャァァァァ!」

 後ろを振り返ると横から細長い足が伸びてきているのが見えた。
 気に手を付き咄嗟に罠を張る。

「伏せろ!」

 二人が伏せたことを確認すると罠を発動する。
 今回はジャンピングロックという飛び跳ねる岩のようなモンスターの核で作った罠である。

 上から巨大な岩が落ちてくる。

ズズゥゥウゥゥゥンッッ

 細長い足の持ち主を上から押し潰して光に変える。
 昆虫のドロップは甲殻であった。
 これも罠に使える。
 装備にも使えると書いてあったが……それはちょっとラブルが無理だろう。

 腰を抜かしているラブルに声を掛ける。

「大丈夫か? もう居なくなったぞ?」

 顔を覆ってずっと震えている。

「もういないぞ? 見てみろ?」

 すると、指の隙間から見て少し安心したのだろう。顔から手を離した。

「はぁぁぁぁ。なんでゲームの中にも蜘蛛がいるのよ! しかもなんであんなに馬鹿みたいにデカいの!? この森いやだ! 居たくない!」

「わかった。この森は出よう。俺達は草原で狩ることにしよう。草原ならホーンバッファローとかバトルラビットとかだからいいだろう」

「まさかラブルがこんなに蜘蛛がダメだとは思いませんでした」

 シエラがそう口にする。

「いや、蜘蛛だけじゃないぞ? たしか虫全般がダメだ。前に外でバーベキューしたときに大変な騒ぎを起こしてなぁ……」

 目が遠くを見つめ過去が頭を巡る。

「なんか……大変だったんですね。では、草原に行きましょう」

 それから、草原でしばらく狩りをすることにしたのであった。
 少しして昼になり、一旦ログアウトして昼食を撮ることにしたのであった。
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