やる気が出る3つの DADA

Jack Seisex

文字の大きさ
上 下
317 / 1,347

~宣言解除後の日常(13)~

しおりを挟む
 電車内の【後楽園ホール】のポスターの隣は、【AIの未来展】の中吊りである。

 この【AIの未来展】は、六本木にある複合商業ビル内の美術館でやる予定のようだが、いうまでも無く、ウイルス対策で【中止】だった。【AIの未来展】のコンセプトは、芸術分野が、AI(人工知能)の発達により、ボタン一つで、アート作品や、文学作品ができる時代が到来するだろう――というものだった。
 AIが作ったドローイングの写真が、広告の全面に掲載されている。

(本当だろうか?)
 倉橋は思案した。
 例えば、アプリのボタンを押すと、消費者が望んだ通りの【オリジナル】の絵画や、文学や音楽が、ポンと出来上がる。
 そんな【夢のような未来】がやってくるということだ。
 今の時点でも、少し前までなら、【SF小説】の中でしか、見当たらなかったような現象――ロボットたちが、人間の仕事の代わりに働くことなど――が、現実化している。

(それが、芸術の分野でも起こるというのか――)
 倉橋が、首を振る。
 あり得ない。技術的には可能かもしれないし、ある限定されたジャンルでなら可能だ。だが――

 倉橋は、再び【後楽園ホール】のポスターを見上げた。
 少女Gが、女子プロレスラーのことを口にした時の、目の輝きを思い出した。
 つまり、【感情移入】だ。
 選手の人生や、試合中の痛み、ファンはそうした【負】の要素に感情移入する、【負】を【プラス】に変えていく過程に対してである。
 だから、【感情移入】するジャンルにおいては、人間の作ったものに【AI】がとってかわることなど不可能である。

 ――不幸な生い立ちから、スターになった歌手や、障害を克服して成功したアスリート、アーティスト、文化人たちには、【負】を【プラス】に変えていくエネルギーに満ち溢れている。
 そうした感情移入の対象が、AIの作った【作品】群に、取って代わられることなど考えられなかった。
 そこには、【負】の要素など微塵も感じられない。

(そう。たとえ、人類が火星に住み始めたとしてもだ)
 倉橋が立ち上がった。
 
 電車の扉が開いた――目的地の駅に着いたらしい。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,926pt お気に入り:19

女神の箱庭は私が救う【改編版】

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:334pt お気に入り:35

旦那様!単身赴任だけは勘弁して下さい!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,594pt お気に入り:184

おかしくなったのは、彼女が我が家にやってきてからでした。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:12,737pt お気に入り:3,856

殿下、それは私の妹です~間違えたと言われても困ります~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:9,748pt お気に入り:5,289

堅物監察官は、転生聖女に振り回される。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,712pt お気に入り:156

ロリコンな俺の記憶

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:6,730pt お気に入り:16

冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,989pt お気に入り:180

処理中です...