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~宣言解除後の日常(13)~
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電車内の【後楽園ホール】のポスターの隣は、【AIの未来展】の中吊りである。
この【AIの未来展】は、六本木にある複合商業ビル内の美術館でやる予定のようだが、いうまでも無く、ウイルス対策で【中止】だった。【AIの未来展】のコンセプトは、芸術分野が、AI(人工知能)の発達により、ボタン一つで、アート作品や、文学作品ができる時代が到来するだろう――というものだった。
AIが作ったドローイングの写真が、広告の全面に掲載されている。
(本当だろうか?)
倉橋は思案した。
例えば、アプリのボタンを押すと、消費者が望んだ通りの【オリジナル】の絵画や、文学や音楽が、ポンと出来上がる。
そんな【夢のような未来】がやってくるということだ。
今の時点でも、少し前までなら、【SF小説】の中でしか、見当たらなかったような現象――ロボットたちが、人間の仕事の代わりに働くことなど――が、現実化している。
(それが、芸術の分野でも起こるというのか――)
倉橋が、首を振る。
あり得ない。技術的には可能かもしれないし、ある限定されたジャンルでなら可能だ。だが――
倉橋は、再び【後楽園ホール】のポスターを見上げた。
少女Gが、女子プロレスラーのことを口にした時の、目の輝きを思い出した。
つまり、【感情移入】だ。
選手の人生や、試合中の痛み、ファンはそうした【負】の要素に感情移入する、【負】を【プラス】に変えていく過程に対してである。
だから、【感情移入】するジャンルにおいては、人間の作ったものに【AI】がとってかわることなど不可能である。
――不幸な生い立ちから、スターになった歌手や、障害を克服して成功したアスリート、アーティスト、文化人たちには、【負】を【プラス】に変えていくエネルギーに満ち溢れている。
そうした感情移入の対象が、AIの作った【作品】群に、取って代わられることなど考えられなかった。
そこには、【負】の要素など微塵も感じられない。
(そう。たとえ、人類が火星に住み始めたとしてもだ)
倉橋が立ち上がった。
電車の扉が開いた――目的地の駅に着いたらしい。
この【AIの未来展】は、六本木にある複合商業ビル内の美術館でやる予定のようだが、いうまでも無く、ウイルス対策で【中止】だった。【AIの未来展】のコンセプトは、芸術分野が、AI(人工知能)の発達により、ボタン一つで、アート作品や、文学作品ができる時代が到来するだろう――というものだった。
AIが作ったドローイングの写真が、広告の全面に掲載されている。
(本当だろうか?)
倉橋は思案した。
例えば、アプリのボタンを押すと、消費者が望んだ通りの【オリジナル】の絵画や、文学や音楽が、ポンと出来上がる。
そんな【夢のような未来】がやってくるということだ。
今の時点でも、少し前までなら、【SF小説】の中でしか、見当たらなかったような現象――ロボットたちが、人間の仕事の代わりに働くことなど――が、現実化している。
(それが、芸術の分野でも起こるというのか――)
倉橋が、首を振る。
あり得ない。技術的には可能かもしれないし、ある限定されたジャンルでなら可能だ。だが――
倉橋は、再び【後楽園ホール】のポスターを見上げた。
少女Gが、女子プロレスラーのことを口にした時の、目の輝きを思い出した。
つまり、【感情移入】だ。
選手の人生や、試合中の痛み、ファンはそうした【負】の要素に感情移入する、【負】を【プラス】に変えていく過程に対してである。
だから、【感情移入】するジャンルにおいては、人間の作ったものに【AI】がとってかわることなど不可能である。
――不幸な生い立ちから、スターになった歌手や、障害を克服して成功したアスリート、アーティスト、文化人たちには、【負】を【プラス】に変えていくエネルギーに満ち溢れている。
そうした感情移入の対象が、AIの作った【作品】群に、取って代わられることなど考えられなかった。
そこには、【負】の要素など微塵も感じられない。
(そう。たとえ、人類が火星に住み始めたとしてもだ)
倉橋が立ち上がった。
電車の扉が開いた――目的地の駅に着いたらしい。
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