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22. 竜王の初夜、見届け人
夕方、ヴィクトールと二人で宮にて晩餐を食べ終わった頃。
可愛らしい専属女官メイドのユイが入ってきて二人の前に膝をつくと、木箱を差し出す。
そしてヴィクトールに向けてそれを開いた。
「こーてい陛下、こうごー陛下、御前、失礼いたしますっ。本日は、こちらをもってまいりましたっ!」
この時間の女官の持ってくるものと言えば甘味。
ドラファルトの甘味は独特で美味だ。今夜の甘味は何か·····?
とヴィクトールはその開いた木箱を横目で見て、咽こんだ。
「っぐ······っごほ、っ」
「だ、大丈夫ですか、ヴィクトール様」
「······こ、こうてー陛下······気にいらなかったでしょうかっ、申し訳ございま「っ、いや。そうではなく······だな、」
ちら、とリリアーナを見てからヴィクトールは軽く咳払いをする。
この幼女、全く性に対する話題に恥じらいがない。積極的で知識も多いが······まだほんの子供だぞ?と、ヴィクトールは心の中で焦った。
「どうされたのですか?」
心配そうに見つめるリリアーナを見て、ヴィクトールは頭を悩ませる。
これは素直に言うべきか。だが、リリアーナがこんなものを見たらきっと驚愕して······。
そこまで考えた所で、隣から幼女があどけない表情を見せながら、リリアーナにその木箱を向けた。
「リリアーナさまの、今日のおもちゃを······」
リリアーナの目の前に醸された木箱。
そして、その全く悪気の無い幼女と目が合い、ヴィクトールは頭を抱える。
「えぇっ!?甘味ではない、の?······ユイ?!なんてものをっ、あなたまだ子供なのよ?分かっているの?!」
木箱には、獣人の種族毎に、違う大きさと形の男性器を模した張形が一列に並べられていた。まるで、美しい装飾品を並べてあるかのようなそれにリリアーナは赤面し、身体を逸らせる。
「でも、わたしも立派なドラファルトの女官なのですっ!これも大事な仕事!お任せ下さいっ!」
いやいやいやいや······。
そういう意気込みは全く要らないのだけど。とリリアーナはため息をついた。
何故か皇国にいる少し抜けているメイド”イリス”と馬が合いそうな気がするのは······気のせいではないだろう。
そんな事を考えていたリリアーナの隣で、ヴィクトールは仕方がなさそうに口を開いた。
「分かった。まあ、仕事に熱心なのは良い事だ。それは全て私が預かろう。もう下がって良いぞ」
ヴィクトールに褒められて、ユイは嬉しそうに尻尾を揺らしながら部屋を出ていった。
「あの······それは······、どうするのですか?というか何故ユイはこんなものを······」
「これはドラファルトの貴族では一般的な習慣だからだろう?そんな事より、リリィ。俺は昨日娼館に行ったろう?」
「えぇ······、はい。ロンファ様との話し合いのため、ですよね?」
「ああ。そこに、あの兎獣人の女がいたぞ、身売りされたようだった」
リリアーナの脳裏に、即位式の後泣きながら逃げてきた兎獣人の女性の顔が浮かび、そして身売りされたという結果に胸が苦しくなる。
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どちらが良いかなんて、もう分からないのだが。
「······そう、でしたか」
「ああ。それで、急遽ロンファが彼女を竜後宮に迎える事にした」
「え?!そ、そうなのですか?」
「なんだ、不満か?」
不満など、リリアーナにあるはずもない。リリアーナとしては彼女が幸せになってくれればそれでいいのだから。
「いえ、不満など!本当に嬉しいなと思いまして」
「まあ、今回は運が良かったが、あまり他人に感情移入していては救いきれないぞ?」
「······はい、心得ております」
そう、不本意に番わせられたり、結婚させられたりするのがこの世界なのだ。
今回は運よく、彼女はロンファに救われることになったが、それだって偶然にして奇跡だ。
それに、それが本当に良い結果であるとも限らない。
リリアーナの性格上、困っている女性を助けてあげたいと思ってしまうのだが、皆を救える事などありえないのだ。
「それで、今夜が初夜らしい」
「まあ、早いですね」
「ああ。······で、俺達も見届け人として呼ばれている。共に行ってくれるな?」
「未届け人?······はい、勿論ご一緒しますが」
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