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38. 夜風の当たる、バルコニーで※

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 リリアーナは夜着の上から薄いガウンを羽織り、ヴィクトールとの寝室と繋がって作られた部屋のバルコニーにいた。


 婚儀の最中であるからか、皇都の街は灯りが灯り遠くからでも賑やかな様子が伺える。
 明日は獣人の国”ドラファルト”から来賓があり、明後日には遂に婚儀となるのだ。


 そしてリリアーナは今日来国した王太子クリストファーから聞いた、父の死を一人追悼していた。


 記憶がなくてあまり父との記憶はないけれど、心の奥から涙が止まらなくなるのはやはりどこかで憶えているからだろうか。

 リリアーナは夜空に浮かぶ星々を眺めた。


「此処にいたのか、」


 不意に、ふわりと風に乗って香るこの優しい匂い、そしてそのがっしりとした腕に包まれてリリアーナは瞳を閉じてその名を呼ぶ。


「ヴィクトール様、」


「こんなところに居ては風邪を引いてしまうぞ、」


 そう言いながら彼は酒をグラスに注ぐとバルコニーに備え付けられたテーブルに置いた。


「父君の事、辛いだろう?」

「いえ、ラナーに色々と聞いて貰い落ち着きました。取り乱して申し訳ございません」

「いや、良い。これは俺から義父へ、だ」

「本当に優しいかた、」


 ヴィクトールは後ろからリリアーナを強く抱きしめ、彼女も頭を彼にあずけるようにもたれ掛かる。
 そんなリリアーナの髪を掻き分けて真っ白な美しい首筋にヴィクトールは顔を埋めた。


「ああ、貴女の匂いだな。甘くて、熟れた果実、」


 そして首筋に舌を這わせ、きつく吸い付く。


「───っひ!ヴィクトールさまっ!?」



 そこに赤い所有印がしっかりとついたのを見てヴィクトールは満悦な様子で口角をあげた。

 ───────だが、此方の方が良いな。

 彼は小さく呟くと、リリアーナの羽織をずらし、彼女の美しい背中を剥き出しにする。そして背骨に沿って舌を這わせた。

 いや、正しくは、背骨に沿って刻まれた ”ルドランテ” の誓紋に、だ。

 ヴィクトールとリリアーナには彼の漆黒の愛剣、アンブレスを紋様とした誓約紋が背骨に沿ってまっすぐ一直線に刻まれているのだ。



「っやぁ! ちょ、っとヴィクトールさ、、ま、っあぁ」


 ヴィクトールは後ろからリリアーナの顎を支えると振り向かせるようにして口を塞いだ。


「ほら、あまり声を出すと向かいの貴賓室にいる貴女の元夫殿に気づかれてしまうぞ?」


「っ、ふむっ、んむぅ!!!」


「大丈夫だ、直ぐに貴女から欲しがるようにしてやる」


 彼はリリアーナの夜着の中に手を入れると、胸をふにふにと揉んでいく。そして直ぐ固くなった二つの突起を指で挟むと、くにくにと指で弄り刺激を与えた。

 『慣らし五夜』以降、ほぼ同じ手順で快感を憶えさせられてきた彼女の身体はもうこの時点で抗えない所まで絆されている。

 蜜口は文字通り入口から蜜を滴らせ御身を受け入れる準備が完全に整っているのだ。


「っ、はぁっ、いやぁッ······、だめ」


 けれど、今日はそれを愉しむようにゆっくりと、執拗に胸だけを責められリリアーナは身をよじる。
 そして、自分の臀部に当たった固い棒状の熱塊に息を呑んだ。


 リリアーナは、それを知っている。
 そしてそれから得られる快感も、然り、だ。


 バルコニー、それにクリストファー殿下の貴賓室に面しているという事も相まってリリアーナは言い表せないような興奮を覚えた。
 じゅわっと蜜口から更に愛液が溢れだすのが分かり夜風の冷気に肌がぞくぞくと粟立つ。

 リリアーナは堪らずバルコニーの手摺に手をかけてぎゅっと力を込めるとそっと尻をそこに押し当てた。


「ふっ、なるほど? 自分から押し付けてくるくらいには欲情してくれるようにはなったの、か?」

「っ、ヴィクトールさま、いじわるです、っ······」


 彼は薄いナイトドレスを捲り、彼女の下着に手をかけるとそれをずらして指を挿しこむ。
 つぷり、と彼の長い指がとろとろになった膣内に侵入し、リリアーナは小さく唸った。 


「······んん、、」


 確かに膣内への、挿入···という行為ではあるけれど、質量の小さいそれに物足りなさを感じている自分がいる。
 まだ、何度も肌を重ねているわけでもないのに、身体はこんなにも快感に貪欲になるなんて、とリリアーナはヴィクトールを振り返りじっと見つめた。


 その視線に気づいているのであろう彼は楽しそうに口角をあげながら膣内で指をくにくにと、もて遊ぶように動かす。刺激はあるけれど、それが絶頂には到底結びつかないような単調で優しい刺激だ。


 そんなヴィクトールに、リリアーナは意を決して自ら腰を揺らした。もっと強い刺激が欲しい、もっと腟内ナカを乱雑に弄ってほしい。
 そう思って取ったその行動は安易な決断だったようで、彼はすっと指を引いた。

 
 そして、ふっと笑みを零して口を開く。


「もの足りないのか? だが、真面目な話をしたい。リリィ、貴女の能力の発動条件がなんとなくわかったんだ、」
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