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最高で最悪の予行演習

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 常盤と過ごす時間が増えて、緋々来との距離は少しだけ遠くなった。でも、緋々来とは学校で合えば真っ先に話しかけるし、色んな話をする。一緒にご飯を食べに行くし、分からない授業の内容は聞き合う。

 ただ、帰路に着いたら私は常盤と過ごす。常盤は日課のように私の家に来るし、私も私の家族もそれを当たり前のように受け入れていたから。

 私は本当に常盤と結婚するかもしれないなぁ、なんて思っていた。まだ付き合ってもいないのに。


 そんなある日に、緋々来が言った。
「花菜野と付き合うことになった」
 って。

 大学の授業が始まる前に、隣の席に座りがてら、さらりと緋々来は言う。
「あ、そうなんだ、良かったね」
 と思ったし答えたけれど、正直先を越されたとも思った。

 知らないうちに進行していた緋々来と花菜野の関係性に、少しだけ寂しさを感じてもいたのだ。
 そして、付き合うことを報告したその口で、あり得ないことを提案してくる緋々来に、私は驚きを隠せなかった。

「実は初めてで、色々失敗しそうだからさ。一回予行演習手伝ってくんない?」
「初めてって、それはつまり」

「セックス」
「はぁ」
 ため息とも同意ともつかない声が出た。付き合うことになって、すぐにそういう発想かぁ、とも思ったけれど、付き合い始めたなら、自然な流れだよなぁとも思う。

「えーと、流れを確認するとか?」
「脱いだり、そういう手順まで」
「それは予行演習じゃないじゃん。本番だよ」
「そんなの碧衣にしか頼めねぇし。カッコ悪いじゃん、いざってときに出来ないとかじゃ」

「私だって初めてだけど」
「へぇ、そうなんだ」
 と緋々来は言ったけれど、知っているとも言いたげだった。私に彼氏がいたことがないのは、緋々来は知っている。

「確認くらいならいいよ」
 私もひょっとしたら、常盤とするかもしれない、と思った。
 だから、練習くらいしておいてもいいかな、と軽く思っていたのかもしれない。
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