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包囲網の中の本音
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しおりを挟む「碧衣」
と私の顔をした緋々来が呼んでくる。
「うん?」
「碧衣が好き」
「え?」
「もう言わない」
と緋々来は言う。
けれど、聞こえていた私は視線を逸らせない。見ていたら、私の顔をした緋々来が手で目を覆う。
「見るなよ、恥ずかしい」
「うん。恥ずかしいこと言ったからだよ」
と私は言う。
「簡単に流すなよ」
「私も好きだったよ。一番仲が良かったし」
「だった、か」
と緋々来は呟いた。
緋々来が常盤とどんな時間を過ごしたのかは、分からないけれど、何か感情が高まったらしい、言うことだけは分かる。
場合によっては、私は花菜野としたことを、二人もしたのかもしれない。私といる常盤はいつも、焦っているから。
あまり、想像はしたくないけれど。
「常盤とは、別れる気ない?」
「何度聞くの、別れないよ」
別れられればいいのに、と思うときはあるけれど、そんなことは緋々来に言っても仕方ない。
「オレじゃダメな理由は、ある?」
と緋々来は言う。
「花菜野と付き合ってるでしょ」
「じゃ、オレが花菜野と別れたらどうする?碧衣は、常盤と別れる?」
緋々来の眼差しにはどこか、深刻さが見え隠れする。目の前の顔は、気分が乗っていない時の自分の顔だな、と思うからだ。
「常盤から、別れるって言ったら、別れる」
と言ったら緋々来は眉根を寄せた。
「それは、別れないって言うのと同じだろ。常盤が碧衣を離すわけがない」
「そうかもね」
私はつい気のない返事をしてしまう。
「じゃあ。今、変えられることがあるとするなら。それは一つだけだ」
と緋々来は言うのだ。
「何?」
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