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第3話 別の場所では

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リリーがリュカの家で目を覚ました頃。

「いないーー。
どこに行ってしまったんだ。
リリアンナ。」

地面に膝をつき、悲観する男性。

サラサラとした金髪にアイスブルーの瞳。
甘いルックスの彼は、
この国の第二王子ライベルト

彼の大切な婚約者 聖女リリアンナが突如、姿を消したのだ。

君は…
そんなに僕との婚姻が嫌だったのか?
なかなかプロポーズに頷かなかった彼女。

僕は王子。
彼女は聖女とはいえ、平民出身。

きっと身分差を気にしているのだ…
そう思い、何度も何度も彼女の暮らす神殿へ足を運んだ。

時間はかかったが、彼女は緊張した面持ちで僕のプロポーズに頷いてくれた。

彼女がプロポーズを受けてくれた!
僕は天にも昇る気持ちだった。

彼女の気持ちが揺らいだら大変だ。
急いで、婚約の手続きを済ませた。

なぜ…リリアンナ
何があったんだーーー


「リリアンナさま~。」

「聖女さまー。」

巫女たちが美しい声で呼びかけるも、どこからも反応はない。

神殿に仕える者たちが、神殿の周辺で、聖女リリアンナの捜索にあたっていた。


ライベルトに仕える魔術師、騎士たちは神殿から離れた場所を捜索していた。

「探せ! 何としてでもリリアンナ様をみつけるんだ!」

「いたか?」

「いや、聖女様の魔力がここで途絶えている。」

「聖女様自ら魔力を封じたとは考えにくい。
おそらくどこかへ連れ去られたのだろう。」


ああー、私のかわいいリリアンナ

平民の出ではあるが、裕福な商家の娘。
神殿へ入るまでは、下手な貴族より優雅な生活を送っていたようだ。

美しい容姿。
品のある仕草。
誰にでも、手を伸ばせば届きそうな女性。

彼女が治癒の力を使う瞬間。
キャラメル色の柔らかそうな髪がふわりと舞い上がり、彼女の周りを黄金色の柔らかな光が包む。

治療を受けた患者が、その家族が、あまりの感動に涙を流す。
彼女はそんな者たちに優しく、優しく微笑むのだ。

その何とも言えない幻想的な光景を目の当たりにしてしまったら…

ホロリと恋に落ちるのは仕方がないこと。
彼女に恋い焦がれる男性は…
それは、それは多かった。

その中で、一番身分が高かったのが、ライベルトだ。

通常ならば、いくら裕福とは言えども、平民と王子の婚約など有り得なかっただろう。

彼女が聖女でよかった。
そのおかげで、たまたま訪れた神殿で出会い、彼女が人を助ける姿を、あの幻想的な光景を見てしまった僕はーー恋に落ちた。

初めての恋だ。


僕は、この国の第二王子。
現在 王位継承権第二位。
自分で言うのも何だか、容姿端麗。
兄ほどではないが、能力にも恵まれている。
もちろん努力も怠らない。

何もせずとも、貴族の集まりではチヤホヤされ、縁談話も多く舞い込んでいた。
その中から、父が決めた女性と政略結婚するのだ。

高位の貴族令嬢は、美しく、賢い女性ばかり。
その選ばれた女性とともに、兄を支え、この国を盛りたてていく。

それが僕に課された人生。



彼女との出逢いが、僕の人生を変えた。

彼女は治癒の力が強い聖女だった。
国にとっても必要な存在。

彼女を国内に繋ぎ止めておきたい。
そう考えた国王である父の一存により、僕 ライベルトと聖女 リリアンナの婚約が決まった。

兄である第一王子は能力、人格ともに文句のつけようがない人。
僕は、そんな兄を尊敬している。

兄弟仲は良好。

僕を勢力争いの舞台へあげようと画策する貴族もいる。
だが、僕は兄に子供が生まれたら、臣下へ下るつもりだ。

そんな僕の気持ちを知っているからこそ、父も兄も、彼女との婚約に反対しなかったのだと思う。


彼女が消えた後の調査でわかったことだが、平民出身のリリアンナは、貴族出身の聖女らに虐げられていたらしい。

もともと貴族ばかりであった聖女の中に、ある日突然、平民である彼女がポツンと入れられたのだ。

しかも、リリアンナは強い治癒の力を持っている。

貴族令嬢として育った彼女たちは、プライドも高かった。
嫉妬もあったのだろう。

家族から引き離され、急に生活環境が変わったのは、リリアンナも同じだ。
それなのに…
彼女たちは、自分の不満をリリアンナ個人にぶつけたのだろうか。

そして、僕との婚約話。

僕のせいで彼女が虐げられるなんてーー
予想外の出来事で…


彼女だけ仲間に入れない。
彼女を心ない言葉で傷つける。
彼女の物を隠す、壊す。

幸い、直接的な暴力は行われていなかったようだが、虐めは虐めだ。


リリアンナは、いつも一人でいた。
彼女は一人で過ごすのが好きなんだろう。
僕はそう思っていた。
彼女と一緒にいたい僕には都合がよかった。

何も気づかないまま、結果的に放置していた。

彼女に辛い経験をさせてしまった自分が許せない。

本来なら、リリアンナに心を寄せる僕は、彼女の心を傷つけた聖女らを処分したい。

しかし、王族である僕は、リリアンナ不在の今、貴重な聖女たちを失うわけにはいかない。

なんとしても、リリアンナを僕の元に取り戻す!
だが、手がかりは何もない。

いったい誰の仕業なんだーー

娘を僕の妃にしたい貴族か?
リリアンナの治癒の力を欲する者か?
はたまた彼女を愛する者か?

まさか…
彼女自ら、僕の元から逃げ出したのではないだろうな?

彼女を狙う者たちにみつかっては堪らない。

もう情報が知られているかもしれないと焦りながらも、信頼のおける者たちだけを秘密裏に捜索にあたらせる。

早くみつけてあげないとーー

「リリアンナ、必ず、必ず助けるからね。
もう少しだけ待っていてくれ。」


    
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