【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜

みやの

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第1章

DAY2(#10)

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 文月さんの、なんの感情も見せないその語り口が嫌に耳障りだった。

 俺は、口角を上げる。
 掛け布団を握り締め、力が強すぎるのか、自分の手が白くなっているのが見えた。

 だけど今はそんなこと、どうだって良い。


 俺は、目の前で俺を見つめているカウンセラーの仮面をつけた能面野郎を睨みつけ、口を開いた。



 「……『ただの哀しみ』?」



 ははっと乾いた笑いが出る。
 
 相変わらず彼の顔は無表情で、カウンセリングのために開発されたロボットのように思える。
 
 確かによく見れば端正なその顔。

 でも今はその無機質さが、……ただただ、憎たらしいだけだ。

 
 俺は、怒りで体の芯から震えているのが分かった。
 唇を噛み締め、鉄の味がする。

 それがまた、康祐さんの死を……思い出させるんだ。

 
 目の前が真っ赤に染まったような気さえする。


「……っふざけんなよ……『本物の番じゃない』からなんなんだよ……」


 怒りを滲ませた静かな問いに、文月さんは何も言わない。

 ……それがまた、俺の怒りを誘発させるんだ。今の俺には全てが、癪に触る。


「……分かってるに決まってんだろ……。俺と康祐さんが運命の番じゃないことなんて……」


 でもさ、分かっていて……でも好きだったから番になったんだ。

 俺たちは、『本能』なんかに邪魔されない、本物の愛だけで成り立ってたんだ。



 ……だからこそ、「逆に『運命』なんじゃないか」と二人で笑い合えたんだ。


 康祐さんの柔らかでほんの少し嬉しそうな笑顔を思い出し、視界が歪む。


 (ああ……泣いてるんだ、俺)


 瞬きをすれば、ぽろぽろと零れ落ちていく。


「……っ、医学の発展とやらに貢献してる良い症例だろ……?……愛し合ったから番になったんだ……。今は、『恋愛』がちゃんとできる国になっている証拠じゃないか……っ」



 (だから……、だから……っ)



「……俺と康祐さんだって……恋したから一緒にいて、愛したから婚約したんだ……っ」



 ぼたぼたと大きな雫をこぼしながら俺はかけ布団を握りしめ、文月さんを睨みつけた。
 
 人生で、言葉一つ一つにここまで怒りを込めたことなんてなかった。

 両親が亡くなっても、行き場のない怒りと悲しみをただ押し殺すだけだった。

 康祐さんが亡くなっても、胃酸で喉が焼けるだけだった。

 でも今は、……怒りと絶望で喉がビリついていた。

 
 文月さんは相も変わらず、端正な顔を崩すことなく俺を見つめている。


 ……その温度差が、嫌いだと思った。


「……じゃあもう、世に言う『オメガの喪失』とやらじゃないんだったらさ……。……もう……家に、帰してよ……」
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