【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜

みやの

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第1章

DAY6(#20)

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 目を覚ましたのは、いつも通り看護師が検温と血圧を測りにきた朝7時だった。
 朧げな記憶を辿り、どうやら自分があのまま意識を失ってしまったことを悟る。

 体を確認すれば、汚れた病院着も汚れた体も全てが綺麗になっていて、看護師さんがきっと綺麗にしてくれたのだろうと、情けなくなった。

 看護師さんは「全部綺麗になってるからね。気持ち悪かったら今日、お風呂入れるよ」と言ってくれた。

 なんとなく気分的にシャワーを浴びたくて、看護師にお願いをして運よく午前中、佐々木先生が来る前にシャワーを済ますことができた。

 佐々木先生はいつもより早めに来て昨日のことを聞いてくれて、「最近頑張りが続いてしまったから疲れちゃったのかもね。今日は無理しなくて大丈夫だからね」と優しく微笑んで、颯爽と病室を去って行った。
 
 朝ごはんは、味噌汁しか飲むことができなくなっていた。
 申し訳程度にヨーグルトを舐めてみるも、手が進まずまた入院初日のような食生活に戻りつつあった。

(たかが肉で……)

 しかも別に人肉を出されたわけではない。
 ただの鶏肉なのだ。

 肉丸ごとでもなく、わざわざ豆腐と混ぜてくれたつくねだったのに。

(……なんで上手く、できなかったんだ……)

 一人で天井を眺めながら、じんわり目頭が熱くなっていくのに気づき、慌てて手で顔を覆う。

(ああ、嫌だ……)

 そう心でつぶやいた時、コンコンコン、と規則正しいノック音が聞こえ、俺はハッと顔を上げる。

(あれ?まだ昼前……)

 俺は不思議に思いながらも「はい」と返事をすれば、案の定部屋に入ってきたのは、白衣を身に纏った文月さんだった。

 「あ、もうカウンセリングの時間……でしたっけ……?」

 時間が違うことはわかっていたが、上手い聞き方が分からなくて、思わず変な聞き方をしてしまった。

 すると文月さんは、丸椅子に座ってシャカシャカと音を立たせて俺の目の間に白いビニール袋を掲げた。

「?」

 何も言わない文月さんの顔と、差し出されたビニール袋を交互に見ていると、文月さんは袋を持っていない方の手で頬をかき、少し視線を逸らしながら言った。

「……今日は、一緒に昼飯……食いませんか?」
「へ?」

 思わぬ提案に俺は拍子抜けして、間抜けな声を出してしまった。

 (い、一緒に昼って言った?)

 相変わらずどこか気まずそうな顔の文月さん。

「ど、どうしたんですか?急に……」
 
 素直に聞いてしまったのがいけなかったのか、文月さんは一層オドオドしてしまう。

(……あ、もしかして、)

 思い当たった俺は口を開く。

「昨晩の……気にしてくださってるんですか?」

 言い方を濁してしまったのは、褒めてくれたことに対する罪悪感だろうか。

 自分でも、よく分からなかった。

 すると文月さんはビニール袋をやっと下ろして、観念したように言った。

「……私が、帰れるかもなんて無責任なこと言っちゃったから、プレッシャーに感じさせてしまったかな、と……」

 すみません、と頭を下げてくる文月さんを見て呆気に取られ、俺は「え、いや……」と、なんて返してあげれば良いか分からず、考えあぐねていた。

「……そ、そのビニール袋ってなんですか?」

 とりあえず、何か別の話題が良いかと思うも何も思いつかず、ずっとシャカシャカさせている袋の中身を問うてみる。

 文月さんは顔を上げて、袋からプラスチック製のパックを取り出した。

「サンドウィッチ……?」

「はい」

(いや、はい、ではなくて)

 なんでサンドウィッチを持ってきたのかと聞いたんだが……。

 と、思いつつ、もうこんな文月さんにも慣れた。

 俺は「これ文月さんのご飯?」と聞く。

 聞きながらパックの中身を覗けば、市販のサンドウィッチではないような気がした。

「……と……美澄さんも、いかがですか?」

 文月さんの言葉に再び「へ」と間抜けに声を出す。

 文月さんはパックの蓋を開ける。
 パンやハムなどの食材の匂いが鼻に届く。


 文月さんは、俺の瞳を見つめた。



 

「……中庭で、一緒に食べませんか」




 俺は呆気に取られながらも、彼の瞳に自然と頷いていた。
 





 
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